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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

我起立唯我一人。

向井秀徳アコースティック&エレクトリック
■2010/05 /19@札幌ベッシーホール
 向井秀徳の弾き語りツアー札幌公演。実は向井単独でのステージを見るのはこれが初めて。フロアの前半分には椅子が並べられ、後ろ半分はいくつかのテーブルがある立見席。いずれにしろ、ドリンクでも飲みながら気楽に見てくださいという雰囲気。普段のバンドでのライヴとは雰囲気が違う。
 ステージに現れた向井は、1曲終わるごとにビールをちびちび飲みながら話をしたりチューニングしたりと、こちらもかなりリラックスした感じ。しかし、曲が始まるとその空気が一変する。フェンダーテレキャスターを持ったときにはもちろんのこと、アコギでも、金属的なギターの音が会場を冷たく斬りつけるように響いていく。NUMBER GIRLの曲が聞けるのも向井ソロの醍醐味。当時は歪みまくった轟音ギターアンサンブルの中に埋もれてしまった感もあるが、こうして弾き語りで改めて聞くと実にいいメロディーを持っている曲が多い。ナンバガの独特なセンチメンタリズムや寂寞感というものは曲そのものが持っていたものであると気づかされる。
 向井のギターは決してテクニカルというわけではないが、乱雑に弾き倒すというものでもなく、曲の持つ情景を丁寧になぞっていくような印象。時には歌い、時にはシャウトし、時にはラップするように言葉を紡ぎ、独特の詞世界をギター一本で具現化していく。ZAZEN BOYSではサウンドの構築にかなりの意識が行っていると思われるが、ソロの弾き語りでは向井はシンガーソングライターであり、生身の表現者としてそこにいる。その無防備な感覚が聞き手の目線と一致していて、緊張感がありつつも非常に心地よい。バンドのステージではなかなか分からない、人間・向井秀徳がそこにいるのだ。冷たくも、温かい。
 休憩を挟んだ2部構成のステージは、ZAZENからナンバガ、新曲も交えての非常にバラエティ豊かなもの。新曲「SAKANA」や、「THE DAYS OF NEKOMACHI」などでは、ギターのリフをその場でサンプリングし、ループを作成し、それにまたリフを重ねていくというかなり実験的な演奏もしていた。これが、ギターが重なっていくにつれどんどんエスカレートしていき、最後には妙なトリップ感すら出てくるのだ。面白い。第2部では童謡コーナーを設け、「赤とんぼ」から「七つの子」、ビートルズの「Blackbird」のメドレーというニクイ流れ。しかも「Blackbird」はほぼ完コピ。こういうところからも、普段なかなか見えない向井の素顔が垣間見えるようで興味深い。アンコールではユーミンの「守ってあげたい」、そして同郷のミュージシャンの曲ということでYUIの「Cherry」という全くもって意外な選曲で会場を沸かす。だって向井がギターを弾きながら顔をゆがめて「恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう?」なんて歌うのだ。ほほえましい事この上ない。ラストはナンバガの「IGGY POP FAN CLUB」を弾き倒して終了。最高である。ZAZEN BOYSはもちろん向井の頭の中にあるサウンドを具現化するための装置として中心にあるものであるが、こういうソロのステージもコインの裏表のようなもので、彼の表現として絶対に必要なものなのだろう。ちょっと余興でやってみましたというものでは全くなかった。

■SET LIST
≪第1部≫
1.NEKO ODORI
2.DELAYED BRAIN
3.KU-KI
4.YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING
5.CRAZY DAYS CRAZY FEELING
6.CITY
7.SAKANA(新曲)
8.TUESDAY GIRL
9.鉄風、鋭くなって
10.WATER FRONT
≪第2部≫
11.SENTIMENTAL GIRL'S VIOLENT JOKE
12.TATTOOあり
13.THE DAYS OF NEKOMACHI
14.赤とんぼ
15.七つの子
16.BLACKBIRD
17.SUZUME(新曲)
18.THE GIRL IN THE KIMONO DRESS
19.KIMOCHIト
20.性的少女
21.自問自答
<アンコール>
22.守ってあげたい
23.Cherry
24.IGGY POP FAN CLUB