無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ダンコたる決意。

Revolutionary

Revolutionary

 9mm、約1年半ぶりの3rdアルバム。「Black Market Blues e.p.」以降、いしわたり淳二の元を離れて音源製作してきた彼らにとって、初のセルフ・プロデュースアルバムになる。全10曲33分というコンパクトな収録時間だが、かなりの密度を感じさせるアルバムになっている。
 タイトなスケジュールの中相当根詰めて製作されたようだ。セルフ・プロデュースということはつまり、アレンジにしろ歌詞にしろ収められている全てにおいて自分たちが責任を持ち、自分たちの判断で取捨選択するということである。結果どうなったかと言うと、要するにやりたい放題ということだった。ブレーキ壊れたオレの心臓的に、これまで彼らの音楽の中にあった要素が全方位的にやたらとパワーアップしている。フレーズの選び方も、「ここでこれ使うか?」という意外性もあるが、かと言って無軌道に暴れているだけではなく、あくまでも「カッコいい」という一点のみはピンポイントで押さえている。逆にいえばそれだけでアルバムとして成立しているような力技なので、非常にきわどいバランスのアルバムだとも言える。
 初のかみじょうちひろ作曲によるナンバー「3031」など新機軸もあるし、白眉なのは「命ノゼンマイ」以降の後半の流れ。「光の雨が降る夜に」の疾走感からラストのタイトル曲まで全く息をつかせぬ展開。雑多な音楽の要素はさらに煮込まれ、歌謡曲的なフレーズも今まで以上に散見される。「Finder」は、ぶっちゃけピンクレディーの「サウスポー」でしょう。これを最先端のロックにしてしまうのは、もう一回言うがとんでもない力技だと思う。
 そしてやはりラストのタイトル曲があまりにも素晴らしい。9mmの持つロマンティシズムが音の隙間から溢れ、ほとばしっているような曲だ。印象的なギターソロ、美しいメロディー、サビのカタルシス、どれをとっても一級品。そこで歌われるのは「世界を変えるのさ/俺たちの思い通りに」という、あまりにも明確な「決意」と「覚悟」と「宣言」である。これを言っちゃったらもう後には戻れないぞ、という一言を彼らは言ってしまった。シーンを背負って目の前を開いていく、そんな覚悟。2010年代の日本のロックシーンを占う意味でも、9mmがこの言葉を今歌った意味はあまりにも大きいと思う。