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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

大人讃頌。

オトナマイト・ダンディー

オトナマイト・ダンディー

 僕は中学生のとき塾に通っていて、そこは北大生がバイトで講師をしているところだった。中学生から見ると大学生というのはかなり大人に見えるもんで、しかも学校の先生よりも話が分かるし面白いので自分もこういう風になりたいと素直に思ったものだった。ところが自分がいざ大学生になってみると大して中学生の頃から中身は変わってなく、周りも似たようなものだったので「ああ、じゃあ当時の塾の先生も実際はこんなものだったのかもしれないな」と思ったのだった。現実が幻想を駆逐する瞬間。年を取るということはとどのつまり、そういうことの積み重ねである。そう考えてしまうと大人になると言うことはなんとお先真っ暗なことなのだろう。
 怒髪天の新作は、そんな思想に根本から唾を吐くテーマを持っている。昨年のシングル「オトナノススメ」もそうだったが、「大人ってサイコー!」ということである。ネガティブな現実はそれとして、どうがんばったって年は取るのだから楽しまなくては損である。しかも、子供にはできなくて大人にはできる遊びは山ほどある。最高じゃないか。その分いろいろな責任や重荷は増えていくが、本当に辛くなったらちょっと逃げちまえばいい。大人っていいだろう?というポジティブな大人賛歌がアルバム通して貫かれている。
 前作は不況にあえぐ労働者をテーマにした作品だったが、今回は大人。しかしこれは両方とも怒髪天が昔から書いてきたものでもある。年を取るのも悪くないだろう?と、増子兄ィは一貫して説いてきた。ライブを見ていてもそれはよく分かる。怒髪天を聞きながら、僕も若いやつらから「楽しそうな人だな」と思われるような毎日を過ごしたいと思っているのだ。
 音楽的にはあまり芸のないバンドと思われているかもしれないが、「俺ときどき・・・」のようなちょっと凝ったお洒落なコード進行とアンニュイなムードは彼らにしては新しい。メジャー移籍当事に比べ、アルバムにバラエティさが出てくるようになったのは非常にいいと思う。