無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

永遠の恋愛小説。

本日は晴天なり

本日は晴天なり

 サニーデイ・サービス、10年ぶりの新作。2008年、ライジングサン・ロック・フェスティバルで再結成したときは、1回きりの再結成なのか活動が続くのかわかっていなかった。ましてやアルバムが出るなどとは考えもしていなかった。こうして新作が出たと言うのはうれしい驚きである。
 再結成するバンドの場合、かつてのバンドと同じ音楽をそのままやるか、年を取ったなりの表現になるか、そのどちらかだと思うのだけど、サニーデイは間違いなく前者だ。もともと、3人のメンバーのある一時期(青春時代、思春期と言ってもいい)を真空パックで切り取ったようなバンドなわけで、年を取ったなりのサニーデイというのは、ある意味語義矛盾なのだ。一昨年のサニーデイ再結成にあたり、曽我部はサニーデイを「書生の音楽」 という秀逸な表現で定義した。再結成し、各メンバーそれぞれに経験をつんだと言ってもサニーデイは昔のままの青臭く、儚い音楽なのだ。そうでなくてはいけないのである。おそらくは曽我部もその部分では意識的にこのアルバムを製作したのだと思う。ソカバンやソロではもっと成熟した表現を使うのでは、というところをあえて青臭いまま残しているように思う。演奏についても、不思議なものでかつてのサニーデイの下手さがそのまま蘇っている。それでもその危うさこそがサニーデイの本質だとすら思えてしまう。
 こうした感想はリアルタイマーのノスタルジーだと言う人もいるかもしれないが、僕は必ずしもそうだとは思わない。ここにある若者のささやかな恋愛風景は、今の10代や20代の若者にも響くものだと思うからだ。