無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

理想的なボク達の世界に向けて。

理想的なボクの世界

理想的なボクの世界

 例えば、ロックを2種類に分けられると考えるとする。現実を忘れさせ自分をどこか別の場所に連れて行ってくれるもの。もうひとつは現実の中で自分を変え、それにより目の前の景色をも変えてくれるもの。これらが相反するものとは思わないが、乱暴なのを承知でロックがこの2種類に分類されると仮定すると、plentyは間違いなく後者だと思う。
 前作『拝啓、皆さま』の感想にも書いたのだけど、plentyというバンドは現代というこの時代、あるいはそこで流されて生きている我々にかなり挑戦的な言葉を投げかけているバンドだと思う。正解はもうわかっているのに、何でそこに向かわないんだ?と。何でそうやって本質から目を背けていられるんだ?と。前作ではまだ自己否定メインのシューゲイザー的なバンドと誤解されるような曲もあったが、本作ではより明確にその姿勢を打ち出してきている。特にそれが前面に出ているのは「枠」という曲。これがキーだと思う。この言葉が響かないなら無理して聞いてくれなくてもいい、と本人たちが思っているのかどうかは知らないが、 そのくらいの覚悟でこのアルバムの歌詞は書かれていると思う。個人的には、みんな仲良く傷なめ合って励まし合っていこうぜ的な音楽よりはよっぽど信頼できる。
 見た目は軟弱そうだけど、かなりその芯は強いものを持っているのだろう。ますます次のアルバムが楽しみになってきた。ただ、やはり課題は演奏力か。ライブを見たことがないので何とも言えないけど、的確に言葉を伝えるにはそれに比するだけのサウンドが必要だと思う。それをまだ彼らは模索してる最中だと思う。その荒さが若いロックバンドの特権だとも言えるのだけど、そこで収まっていられるバンドじゃないでしょう。