ファンクと湿度。
- アーティスト: スガシカオ
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN Inc.
- 発売日: 2010/05/12
- メディア: CD
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それは彼のソングライティングに起因するものだ。リズムを強調しても決してメロディーを軽視することは無い。しかもそのメロディーは日本的な、歌謡曲と言っていいような湿度を持っている。歌詞にしても、おなじみのドキュメントシリーズやコミカルなものもあるが、「兆し」とか「サヨナラホームラン」のように叙情的なものはお手の物だし、ここでもやはり日本的な季節感のある風景など、ファンクとはかけ離れた世界観をその中に織り込んでいる。ファンクというサウンドと完全に分離されたソングライティングの妙こそが、スガシカオを特殊なアーティストにしているひとつの要因だと僕は思う。ただ、前作のときにも指摘した、人間の裏を暴くようなどぎつさのようなものがもっと見られるといいのは確か。そういう表現が減ってきたのは年齢的なものもあるのかな。
ある意味、彼の音楽はデビュー以来ワンパターンと言っても差し支えないようなものなのだが、未だに飽きられることなく第一線で安定しているのはすごい。こういう音楽をやっている商売敵が少ないということもあるのだろう。ただ、今作ではライムスターのMummy-Dをフィーチャーするなどマンネリ対策もきちんと施している。抜け目が無い。僕がスガシカオに期待するのは、やはりいやしき魂がヒットチャートをかけぬけていく快感であるのだ。