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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

そしてまた、茨の道へ。

Recovery

Recovery

 エミネム、昨年の『リラプス』に続く復活第2作。前作『リラプス』発表時から、「次はすぐに『リラプス2』が出る」と噂されていたが、結局『リラプス2』となるべき音源は昨年末に出た『リラプス:リフィル』に数曲収録されたのみで、アルバムとしてはお蔵入りとなったようだ。それはつまり、製作していく過程でエミネム自身が「これは違う」と感じたということだろう。それは今『リラプス』を聞いたときに感じる違和感とつながるものでもあると思う。前作『リラプス』で大半を占めていたのは、彼自身の現実というよりは、身の毛もよだつような猟奇的なクライム・ストーリーであり、仮に主人公がエミネム(あるいはマーシャル・マザーズ)として書かれていたとしても、それは彼の人生とは直接関係のないものだったりもした。しかし内容があまりにも刺激的であり、そのリリック中にエミネムの心情が垣間見えるため、これこそが今のエミネムのリアルだと思っていた。しかし実際はそうではなかったのだろう。
 『リカバリー』 と題されたことからも分かるように、本作こそが本当の復活なのだ、というエミネムの強い意志がアルバムには漲っている。「『アンコール』ではドラッグ漬けの日々」「正直なところ、前の『リラプス』はそこそこだった」と言い切る今作のエミネムは、過去の自分としっかりと向き合い、盟友プルーフの死や愛娘ヘイリーへの想いなど、包み隠さず吐露している。特にプルーフへ真摯に捧げられた「ゴーイング・スルー・チェンジズ」は感動的な名曲だ。自分の身を切って、そこから出るもの全てをラップするエミネムが真の意味で戻ってきたと言えるアルバムだと思う。どん底だった時期のことが多く語られているので、決して聞きやすいアルバムではない。ボリュームも多いので、一気に聞くと疲れてしまうが、今作に賭けるエミネムの熱量がそれだけ詰まっているということだと思う。「復活」と言っても華々しいものではなく、先の見えない道を一人歩くエミネムの後姿という秀逸なジャケットが全てを物語っている。エミネムはここからもう一度はい上がるつもりなのだ。
 トラックは、様々なプロデューサーが参加し刺激的でバラエティに富んだものになっている。リル・ウェインやKOBE、P!NKなどのゲスト陣も豪華である。ただ、個人的にはもっとドレーのトラックがメインになっていた方が好きだ。ドレーの黒く重いビートに拮抗するエミネムのラップが聞きたいのだ。それは次作へのお楽しみにしておこう。