無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ウソのない音楽。

 トータス松本、1年2ヶ月ぶりのソロ2作目。タイトルやアルバムジャケット、一部の曲のアレンジにも40〜50年代の古き良きアメリカンポップスやショービジネスのエッセンスをちりばめ、前作よりも自らのルーツに向き合った内容になっている。
 ウルフルズでもトータス松本はほとんどの曲を書いて歌っていたわけで、その人がソロになっても結局はウルフルズと同じではないのかと思うかもしれないが、全く違う。それは2枚のソロアルバムを聞けば明らかだろう。ソロになってからのトータスは、真っ直ぐに自分の中から出てくる言葉を歌っている。そんなのウルフルズ時代からそうではないのかと思うかもしれないが、今思えばあれは「ウルフルズトータス松本」としての真っ直ぐな言葉だったのだと思う。それは必ずしも一個人としてのトータス松本とは一致するものではなかった。音楽に対して真摯な人間であるからこそ、ウルフルズは活動を止めざるを得なかったし、トータス松本は自らの心の底からの言葉を歌うしかなかったのだ。
 このアルバムには、そんな不器用で真摯な男の偽らざる言葉とメロディーが並んでいる。どれもストレートに響く気持ちのよいものばかりだ。弱くても迷っても、信じる道を行くしかないという決意だけが目の前を照らしている。「No Way」あたりの曲は、ソロにならなければ絶対に歌われることのなかったものだろう。前作でも思ったが、とにかく曲がいい。今のトータスはソングライターとして最も充実した時期を迎えているのではないか、とすら思う。