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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

キャリア30年の新人。

佐野元春&THE HOBO KING BAND 【佐野元春30周年Anniversary Tour FINAL】『ALL FLOWERS IN TIME OSAKA』
■2011/03/06@大阪城ホール
 この、30周年記念のアニバーサリーツアーが質・量共に素晴らしいものであることは初日福岡の感想ですでに書いた通り。あとは大阪と東京のツアーファイナルを残すのみ。大阪は早い段階から多くのゲスト出演がアナウンスされており、ファイナル、そしてアニバーサリーに相応しい、ある種お祭り的な空間になると予想していた。
 THE HOBO KING BANDの「CHANGES」からスタートし、序盤はセットも含めほぼ変わらない展開。「99ブルース」の後、「インディビジュアリスト」のイントロが流れる中本日最初のゲスト、スカパラホーンズ(NARGO北原雅彦GAMO谷中敦)が登場。ホーンをフィーチャーしたスカ・ナンバーであるこの曲にはうってつけのゲスト。キレのある動きとプレイで盛り上げる。やっぱりカッコいい。今回のツアーでも序盤のハイライトとして置かれている「欲望」は、ハイになった空気を重厚なブルースで落ち着かせる。次にゲストで登場したのはTHE GROOVERSの藤井一彦。「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」でソリッドなギターと味のあるボーカルを聞かせてくれた。セルフカバーアルバム『月と専制君主』のパートでは、アルバムにも参加したラブ・サイケデリコの二人が登場。アルバムでも共演した「彼女が自由に踊るとき」と「レインガール」を演奏した。正直、クミと元春のボーカルはあまり親和性が高くないと思うのだけど、ラヴ・サイケデリコのような60〜70年代のロックをルーツに持つ音楽自体はTHE HOBO KING BANDの演奏とはかなりハマる。NAOKIのギタープレイはそのままTHE HOBO KING BANDに入ってもおかしくないくらいだった。ここで、約15分間の休憩が入る。福岡では休憩なしだったので、やはりこの日はゲストも多く時間もかなり長尺のコンサートとなるということだ。
 休憩後はやはりTHE HOBO KING BANDのみのセッションからスタート。後半から、ギタリストに佐橋佳幸a.k.a.松たか子の旦那)が加わった。つまり、オリジナルのTHE HOBO KING BANDとTHE HEARTLANDという、佐野元春の音楽を支えたバンドのギタリストが共演するわけだ。佐橋氏は「お久しぶりです」と挨拶。MC的な役割をそのまま担当し、元春を迎え入れ曲紹介を行う。後半最初のゲストは杉真理伊藤銀次という両ベテラン。杉氏はデビュー前、元春と同じオーディションに参加しデビューのきっかけを作った同世代。伊藤銀次氏は初期佐野元春のプロデューサーであり、THE HEARTLANDの初代ギタリストでもあった人だ。それぞれに当事の思い出話などを披露し、演奏した曲は「Bye Bye C-Boy」!杉真理佐野元春が参加した「ナイアガラ・トライアングルvol.2」に元春が提供した曲だ。そして伊藤銀次は「ナイアガラ・トライアングルvol.1」に参加している。本人たちの弁を借りれば「ナイアガラ・トライアングル衆参ねじれ国会」状態のプレミア・ライブ。オールド・ファンはこれが見れただけでもこの日来た甲斐はあっただろう。
 続いて登場は「本日のゲスト最年少(でも35歳)」の堂島孝平片寄明人(GREAT3)。ポップな音楽性を持つ二人は「佐野さんってメロディーメイカーとしても最高だと思いませんか?」(堂島)という紹介から、「週末の恋人たち」を演奏。ヨーロッパ的な色合いを持つ洒脱なポップ・バラード。元春は最初指揮者としてバンドの演奏を指揮していたのだが、後半はマイクを取り3人でコーラスしていた。この日は、普段のコンサートでは聞けないこういう曲もたくさん聞けたので、そういう意味でも特別な一夜だったと思う。ゲストはまだまだ続く。続いてはHEATWAVE山口洋。元春にお祝いの言葉をかけた後、「喋るのが苦手なので、演奏行っていいですか」と「君を連れてゆく」を演奏。『THE CIRCLE』収録の渋いR&B・ブルースだが、山口洋は「佐野さん、この曲を書いてくれてありがとうございます」と言っていた。それこそ、山口洋が自分で歌っても何の違和感もない曲であり、渋いギタープレイとボーカルは素晴らしくマッチしていた。地味ではあるが、この日のゲストの中でも特筆すべき演奏だったと思う。続いてはスガシカオが正反対の(笑)軽い感じで登場。恐らくはリアルタイムでバッチリ聞いていたであろう「ヤングブラッズ」を歌い上げる。続いて登場は山下久美子佐野元春とはライブハウス「ウィード」の同期であり、デビュー当時からの付き合い。「ソー・ヤング」を実に軽やかに演奏。この日登場した多彩なゲスト陣は年齢も音楽性もバラバラだが、それぞれが先輩としての、あるいは同胞としての佐野元春に最大限のリスペクトを示していた。そして誰もが実に楽しそうに演奏していた。佐野元春の30周年を心から祝い、彼が成し遂げてきた功績を心から尊敬し、この場で歌えることに感謝していた。見ている側もそれがよくわかるので本当に楽しかった。ひとつのコンサートとしてみれば単独でのものに比べ流れが途切れて散漫になるというきらいはあるものの、こういうお祭りのイベントでそんなことを言うのは野暮というものだ。しかもこれだけのメンバーが揃っているのだから。「約束の橋」ではCOYOTE BANDとして一緒に活動していた深沼元昭(プレイグス)も参加し、大所帯での演奏となった。元春も入れればギターが6人!というぶっとい演奏。ゲストパートの最後を華々しく飾った。
 「ロックンロール・ナイト」からは、THE HOBO KING BANDと共に通常のコンサートと同様のクライマックスをじっくりと作り上げていく。福岡の時も思ったけど、こういう流れで聞く「ロックンロール・ナイト」は本当にヤバい。号泣である。改めて考えるとデビューして2,3年の若者がすでに「年をとって得るものと失うもの、その中でロックンロールを鳴らす意義」というものを歌ってしまっているというのはすごいことだと思う。その後の佐野元春のキャリアを考えても、「サムデイ」と並び大きな意味を持った曲であることは間違いない。その「サムデイ」では広い大阪城ホール全体に大合唱が響き渡り、「悲しきレイディオ」の観客ソロ(?)もバッチリ決まり(元春は親指を立てて心底満足な表情!)、アンコールの「アンジェリーナ」まで一瞬も緩むことなく走り抜けた。実に3時間半の特別な一夜だった。
 30周年記念ツアーで、キャリアを振り返るという趣旨のコンサートであるので、アンコールがデビュー曲であるというのは何もおかしいことではない。しかし佐野元春はそれでなくとも「アンジェリーナ」をアンコールで歌うことが多い。そしてそれはファンサービスという意味を超え、いまだにこの曲が彼にとって最高のロックンロールのひとつとして現役であるからなのである。20周年のツアーのときだったか、佐野元春はこんなことを言っていた。「今でもこの曲を歌う時は20歳の頃の気分に戻ってしまう。」と。会場では、ツアーブックレットが観客一人一人に配布された。30年間の元春氏の歩みが当時の記事や彼の言葉とともに1年ごとにまとめられていて、フリーのものとしては非常に良くできている。FINALの大阪と東京で配布されるのだろうが、裏表紙にはシリアルナンバーが入っている。このブックレットの冒頭で、渋谷陽一氏が書いていた文章が全てを言い表していると思うので少し引用させていただく。「デビューしてから30周年目のライヴで、あのようにみずみずしくエッジの立ったパフォーマンスが出来るというのは奇跡だ。まるで新人バンドのようだ、と思った。そして佐野元春はいつも新人なのだとも思った。」30周年を経て、また佐野元春は新人のような気持ちで音楽を作るのだろう。自らがかつて創造したものを守ろうとはせず、前だけを向いて。真の開拓者であり、革新者なのだと思う。彼のそういうところに惹かれて、僕も25年以上追いかけてきたのだ、と思う。30周年おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。

■SET LIST
1.CHANGES
2.君をさがしている
3.ハッピーマン
4.ガラスのジェネレーション
5.トゥナイト
6.コンプリケイション・シェイクダウン
7.99ブルース
8.インディビジュアリスト Feat. スカパラホーンズ
9.欲望
10.ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 Feat. 藤井一彦(THE GROOVERS
11.ジュジュ
12.月と専制君主
13.彼女が自由に踊るとき Feat. LOVE PSYCHEDELICO
14.レインガール Feat. LOVE PSYCHEDELICO
〜休憩〜
15.SPIDER CODE
16.Bye Bye C-Boy Feat. 杉真理伊藤銀次
17.週末の恋人たち Feat. 片寄明人堂島孝平
18.君を連れてゆく Feat. 山口洋
19.ヤングブラッズ(オリジナルVer.) Feat. スガシカオ
20.ソー・ヤング Feat. 山下久美子
21.約束の橋 with 藤井一彦・伊藤銀次山口洋・深沼元昭・スカパラホーンズ
22.ロックンロール・ナイト
23.レインボー・イン・マイ・ソウル
24.ヤング・フォーエバー
25.ニュー・エイジ
26.新しい航海
27.サムデイ
28.悲しきレイディオ
<アンコール>
29.アンジェリーナ