無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

廻る、巡る。

ACIDMAN  LIVE TOUR "ALMA"
■2011/03/05@Zepp Osaka
 新作『ALMA』を引っさげ、武道館公演でファイナルを迎えるこのツアー。本人たちの気合も相当のようで、ソリッドな演奏はもとより、スクリーンに映し出される映像もいつもより更にコンセプチュアルに創られているようだった。彼らの場合、映像は音楽を補完するものというよりはそれだけで独立した表現と言ってもいいくらい力を入れているが、ライブという場において音楽と映像ががっちりと噛み合った場合、これだけダイナミックな空間を作れるのだ、ということを改めて感じた。
 『ALMA』の曲を中心に定番から懐かしい曲、重要な曲とバランスよく散りばめたセット。「式日」〜「赤橙」〜「FREE STAR」という流れは素晴らしく幸福感に満たされた。中盤、インストの「真っ白な夜に」から「OVER」はひとつのクライマックスというべき感情の盛り上がりを見せた。映画の1シーンのような映像とアコースティックな調べが静かに、しかし徐々に感情を刺激する。アンサンブルではかっちりとしたサウンドを作りつつも、MCでは相変わらずイチゴをサトマとオオキの2人がいじるという構図。この辺のギャップもまたACIDMANのライヴならでは。
 『ALMA』というアルバムは、南米チリにある同名の電波望遠鏡を見に行った体験がひとつの大きなきっかけになっている。最近の彼らは宇宙というマクロな視点と自分自身の内なる心象のミクロな視点の双方から世界を解き明かすというテーマで作品を作っていたが、あまりにも壮大な宇宙を目の前にして、いかに人間がちっぽけな存在であるかということを改めて感じたと言う。と同時に、それでも、だからこそ、人間の輝きというものを信じていなければならない、それを音にしたい、というようなことをオオキは言っていた。「どんどん行くんで、着いて来てください」という彼の目に迷いはなかった。本編後半ではアルバムにも使われた、オオキ自身が地理で撮影してきた写真が映し出されていた。
 アンコールでは「懐かしい曲やります」「大丈夫かな、知ってっかな」と『創』から「シンプル・ストーリー」。ラストでは、どうしてもこの曲をやりたい、そして映像を見てもらいたいということで、『equal』から「廻る、巡る、その核へ」を演奏した。映像も、恐らく当時のものをそのまま使っていたと思う。ACIDMANはデビューしてから『equal』までのアルバム3枚で、時には哲学的に、時には理詰めで人間という存在を因数分解していった。その究極がこの「廻る〜」であり、突き詰めた結果、ミクロに分解した人間の肉体と感情はひとつの宇宙になる。それ以降、『ALMA』に至るテーマの根幹としても彼らの中で重要な曲として位置づけられているのだろう。全ての音が消えた後、大きな拍手と歓声があがるまで少しの空白があった。観客全員が息を呑み、壮大なストーリーに引き込まれていた。 深く、どっしりとした余韻に包まれたライヴだった。

SE.最後の国
1.風が吹く時
2.ONE DAY
3.飛光
4.DEAR FREEDOM
5.波、白く
6.式日
7.赤橙
8.FREE STAR
9.真っ白な夜に
10.ノエル
11.OVER
12.レガートの森
13.Final Dance Scene
14.Under the rain
15.ある証明
16.2145年
17.ワンダーランド
18.ALMA
<アンコール>
19.シンプルストーリー
20.CARVE WITH THE SENSE
21.廻る、巡る、その核へ