無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

とむらいのあとは。

SOUL FLOWER UNION  「闇鍋音楽祭2011」 【guest】THE NEAT BEATS
■2011/03/21@Shangri-La
 大阪と東京でゲストを向かえ複数公演を行う「闇鍋音楽祭」。直前に震災が発生してしまったため、演る側にも見る側にも当初とは別の意味を持つことになってしまった。阪神淡路の大震災時の活動からしても、ソウルフラワーユニオンが公演自体を自粛するということはまったく考えていなかったが、こういう状況の中で彼らが何を鳴らし、何を話すのか、独特の期待感と緊張が会場を包んでいた。シャングリラというライブハウスは初めてだったのだけど、古いキャバレーハウスのような趣で、雰囲気がいい。キャパは300も入れば一杯だろうか。ステージ正面真ん中という、結構いい位置にドリンクカウンターがあるのはちょっと珍しいかも。
 この日のゲストはニートビーツ。60sの香り漂うマージービートやロカビリー色の強いロックンロール。リーゼントに揃いのスーツで決めた佇まいもまさにUKロックンロール。MC(自虐ネタも多かったが、とにかく笑えた)も含めてめちゃくちゃ楽しいステージ。こういうバンド好きだなあ。どこ行っても絶対にすべらない気がする。ひとつの道を突き詰めるのか、いろいろな要素をミックスするのかという意味ではソウルフラワーとは真逆のバンドだけど、精神的にはどっか繋がる部分もあるんじゃないか。これまでソウルフラワーとは直接共演する機会はなかったそうだけど、そうとは思えないほどいい対バンだった。お互いにMCでいじってたりしたし。
 セットチェンジの後、ソウルフラワーユニオン。「ラヴィエベル」からスタート。昨年末に『キャンプ・パンゲア』(傑作!)をリリースしたが、特に新作にはこだわらず、新旧の代表曲とカバーも織り交ぜてのセット。聞く側(というか僕)がどうしても震災のことを意識せざるを得ないからか、やる曲やる曲がすべて被災地に向けて歌われているんじゃないかと思ってしまった。「寝顔を見せて」にしても、「平和に生きる権利」にしても、そういう風に感じてしまう。この日に限っては仕方がないことだったかもしれない。中川のMCも特にシリアスにならないよう意識していたとは思うし、実際普段通りに冗談言って笑いを取っていた。しかし、やはり震災に関してのコメントは避けられず、今回のライブ開催に対しての思い、実際に被災地で何が起きているのか、Twitterに集まってくる情報、伊丹英子が中心になり被災地に物資を届ける運動をしている話、そしてやはり、阪神淡路の大震災の時に自分たちが何を考え、どういう経緯でアコースティックライブをやっていたのか。そういうことについて、かなり饒舌に話していた。「中川、とっとと被災地行って歌って来いよ」的な意見もやはりあるらしい。しかし、中川は今はその時ではないと言う。「阪神淡路の時だって、オレらから行って歌いますなんてことは一度もなかったんやで。全部、向こうから来てください言われてやったんや。」と中川。今必要なのは物資とお金。ということで、会場では募金活動も行っていた。必要な情報はTwitterで発信するのでフォローしてくれと。そして、被災地に対して心を痛め、やれることはやるというのは当然のこととして、自粛だ何だというのは意味がない、くだらないと言い放つ。それでこそ、である。
 「アイノウタ」では、オリジナルの作者、リクオがゲストとして登場。そしてやはり、こういうときに聞く「満月の夕」には特別な音霊(おとだま)が宿る。しかし、この曲だけにスポットが当たるような演奏にしていなかったところに彼らの絶妙なバランス感覚が見えた。そして「がんばろう」「秋田音頭」はまさに、これから復興に対しての彼の地への応援歌であった。本編は「海行かば〜」で大盛り上がりのうちに終わる。アンコールでもやはり、震災の話。「阪神大震災の時も、この曲やるとみんな歌えんのね」と演奏したのは「安里屋ユンタ」。そして「ピープル・ゲット・レディ」のカバーも、力強く背中を押してくれるように感じられた。ラストは「神頼みより安上がり」。本編とアンコールの最後は、きっちりといつものソウルフラワーのライブで締めくくった。
 こういう時に、音楽には何ができるのか。ミュージシャンとしてどうするべきか。その前に、人間として何をどう考えるべきか。彼らはすでにそれを経験している。身を以って知っている。音楽にできることも、できないことも知っている。そういう人間が今鳴らす音楽には、説得力がある。 その上できちんとエンターテインメントとして心底楽しませてくれる。自由を目指すうたが、鳴っている。ソウルフラワーの音楽は基本的に「お祭り」である。そして、祭りというのは本来、五穀豊穣にしろ健康祈願にしろ、祈りのために行われるものだ。単なるバカ騒ぎじゃないのだ。今年は、いろんな場所でソウルフラワーユニオンの音楽が聞かれることを期待する。夏フェス開催するイベンターは今年呼ばないでどうする!と、思った。マジで。

1.ラヴィエベル〜人生は素晴らしい!
2.松葉杖の男
3.死ぬまで生きろ
4.そら(この空はあの空につながっている)
5.寝顔を見せて
6.平和に生きる権利
7.荒れ地にて
8.風の市
9.ひぐらし
10.Crazy Love
11.アイノウタ(guest vocal:リクオ
12.アンチェインのテーマ
13.満月の夕
14.がんばろう
15.秋田音頭
16.ホライズン・マーチ
17.海行かば山行かば踊るかばね
<アンコール>
18.安里屋ユンタ
20.People Get Ready
21.神頼みより安上がり