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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

スピッツは吠えるがキャラバンは進む。

とげまる

とげまる

 スピッツ、3年ぶりの13作目。プロデュースはおなじみ亀田誠治だが、『惑星のかけら』以来18年ぶりという完全セルフプロデュース曲も2曲収録されている。スピッツあたりのバンドになると、聞く側からするともう「スピッツであればそれでいい」という境地に達してしまっていると思うのだけど、本人たちがそう思うかどうかはまた別の話。前作『さざなみCD』ほど躁状態(?)の瑞々しさはないかもしれないが、安心のスピッツ印の音はきちんと鳴っている。その中で、セルフプロデュースの2曲に関してはかなりやんちゃな事もやっているという印象。音作りに関してはフラットな状態で作られたアルバムなのかな、という気がする。
 スピッツが「ロックバンドである」という命題には、本人たちも周囲も、もう十分答えを手にしているとは思うのだけど、 かつて「ロックでありたい」と苦悩した時期は確かにあったし、それを匂わせるような言葉が真っ直ぐ出てきているのに少し驚いた。引用しようとすると全部書き出すことになってしまうので避けるが、「恋する凡人」の冒頭はまさに、「ロックンロールに恋する凡人」である草野正宗のかつての逡巡に他ならない。それを乗り越えて確固とした決意で走っていくラストが「これ以上は歌詞にできない」である。最高だ。ここまでストレートに力強い言葉で自分たちの意思を明確にした曲はスピッツにはかつて無かったんじゃないだろうか。本作でもうひとつ重要なクライマックスは「新月」という曲。曲を通してピアノのリフが印象的だが、サビでは「変わってみせよう 孤独を食べて 開拓者に 開拓者に」という、これもまたギラついた野心が見え隠れする曲だ。メロディーもアレンジも雄大な曲だが、この歌詞が耳に入ってきた瞬間に背筋がゾクッとする戦慄を感じた。スピッツがいかにえげつないロックバンドであるか、改めて背筋を正される思いがする。
 スピッツは今年で結成24年。20年以上も同じメンバーでひとつのことをやり続けるってだけで僕はとてつもなく感動する。調べたことはないけど、彼らくらいのキャリアで全くメンバーチェンジなしに今も第一線で活躍しているバンドは他にはエレカシくらいではないだろうか。本作は自分たちの来し方をキチンと理解した上で、逃げたり誤魔化したり全くしていない。その上で自分たちの進む道をしっかりと示している。素晴らしいアルバムだと思う。