無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

これでいいのだ。

宇宙戦艦ラブ(初回生産限定盤)(DVD付)

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 オリジナルとしては『DEAD ROCK』以来、3年10ヶ月ぶりの新作。UGが加入してから2作目のスタジオアルバムになる。セイジさんの股関節メンテナンスによる度々の休止期間があったので、ある程度のインターバルは仕方なかったとは言える。とは言え、完成したアルバムはギターウルフ印満載の痛快なロッケンロールが詰まっている。どブルースな「フーチークーチースペースマン」や、ロカビリー色を前面に出した「ブラックホールママ」など、ギターウルフとしては珍しい曲調もあるが、基本的には気合一発!勢い上等!タイトルで曲はほぼ完成だぜ!のギターウルフのアルバムである。
 僕は「こいつらアホだな」という褒め言葉と共に大笑いできるものはすべからく最高のロックンロールである、と思っている。ギターウルフはその意味でいつだって最高のロックンロールだ。本作でも突き抜けている。「ドーベルマンナイト」の「ガウー」3連発や、「ファイヤーエイティーン」(しかしホント最高の曲タイトルだ)の「ア゙ーーーー!」絶叫シャウト、「コンクリートパンク」の「皮手!」など、聞き手を爆笑させるキラーフレーズには事欠かない。ゲラゲラ笑いながらライヴで熱狂するオーディエンスが、音の向こうから見えてくる。
 ギターウルフの音楽は誰でもできそうなガレージパンクでありながら、そう簡単に同じことはできないだろう。様々な推敲と試行錯誤を経て、こういう形になっているに違いないのだ。インタビューやブログでのセイジさんの言葉は、何も考えずに突っ走るロックンローラーのそれでは決してない。これだけアホで笑えるロッケンロールを作れる人間は、まず例外なく頭がいい。僕にとってのギターウルフは、頭空っぽにして楽しむべき高度に知的なロックである。