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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

復活の地で。

吉井和哉  Flowers & Powerlight Tour 2011
■2011/04/22@神戸国際会館こくさいホール
 新作『THE APPLES』を引っさげてのツアーは、4月2日の市原市民会館からスタートする予定だったが、震災の影響で序盤の東北・東日本の公演が中止となってしまった。初日は15日のZepp Fukuokaからおなり、この神戸がツアー5公演目となる。全ての楽器を自分で演奏したアルバム『THE APPLES』を引っさげてのツアーとなるが、バンドのメンバーはトライセラトップス吉田佳史を中心にこれまでも彼のステージを支えてきたミュージシャンたち。阿吽の呼吸で、演奏には不安はなかった。唯一残念だったのはギターのジュリアン・コリエルが震災の影響もありツアーへの参加ができなくなってしまったこと。ギターが減る分は日下部正則氏の献身的なプレイと、恐らく吉井自身のプレイの比重も増したのだろう。それはそれでパフォーマンスとしていいアクセントをもたらしていたかもしれない。
 「THE APPLES」のSEと共にメンバーが登場し、「ACIDWOMAN」からアルバムと同じ曲順でスタート。バンドの演奏は非常にタイトで、あまり余計な装飾はなく、シンプル。でもこれが今の吉井和哉にはちょうどいい感じ。曲自体も、贅肉を削いで本質だけをストレートに射抜くようなものになっているからだ。今回、最初に登場したイエモン曲は「Chelsea Girl」。そのあと、「球根」が来た時にはちょっと震えた。吉井がイエモン曲の封印を解いてから随分たつが、単純に、こういう曲がセットリストに入ることでライブの幅は格段に広くなるよなあ、ずるいよなあ、とちょっと思う。見る方も嬉しいからいいんだけど。過去作の曲もちりばめつつ、新作からの曲は殆ど演奏した。イエモン曲では「バラ色の日々」もやったが、ここから「ビルマニア」への展開がこの日のクライマックス。今の吉井のオープンな表現を象徴する「LOVE & PEACE」で本編は終了。とにかく吉井和哉のステージアクション、声、歌、客いじりからオッサン丸出しの下ネタまで、全てがオーラに包まれセクシーでカッコいい。ここまで来れば何やってもOKだろうとさえ思えるような無敵感が漂っている。
 MCでは、やはり震災について触れないわけには行かなかった。神戸でライブをやるのはイエモンの「PUNCH DRUNKARDツアー」以来で、あの時はまだ阪神淡路大震災の傷跡も残っており、仮ホールのようなところで演奏したことを良く覚えているという。それが、今回来てみれば神戸の街は完全に復興し、ホールも建て替わり素晴らしいと。あれだけの被害を受けたのにここまで来れるのだと。この風景を見て、この街で演奏すること自体が、何がしかのメッセージになるんじゃないかというようなことを彼は言っていた。アンコールのラストは新作のラストを飾る「FLOWER」。「自分の血を愛せないと人は愛せないとわかった」と歌うこの曲は、吉井自身にとって自らのルーツを初めて許容した曲であり、それによってようやく彼は屈折しない、ストレートな愛を表現できるようになった。今の彼のこうした楽曲が間接的にでも、今の日本にポジティブなメッセージを与えてくれるのは間違いない。偶然ではあるのだけど、神戸という街で見ることができてよかったと思う。

SE.THE APPLES
1.ACIDWOMAN
2.VS
3.Chelsea Girl
4.ロンサムジョージ
5.イースター
6.CHAO CHAO
7.おじぎ草
8.球根
9.MUSIC
10.クランベリー
11.シュレッダー
12.ONE DAY
13.GOODBYE LONELY
14.バラ色の日々
15.ビルマニア
16.LOVE & PEACE
<アンコール>
17.HIGH & LOW
18.TALI
19.WEEKENDER
20.FLOWER