無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

FUJI ROCK FESTIVAL '11感想(3)〜最後の「音楽」。

FUJI ROCK FESTIVAL '11
■2011/07/31@新潟県苗場スキー場
 ちょっとでもレッドマーキーでアタリを、と思ったけど、すでにテントから溢れそうなほどパンパンに人が入っていてどうしようもなかった。横からチラッと覗き見たけど、アレック・エンパイアもニック・エンドウも元気そうで、というかイケイケで変わりなかった。音はバッキバキ、MCとアクションはキレッキレ。あー、やっぱカッコいいなあ。YMOともうちょっと出番が離れてれば・・・。

 グリーンに戻ってケミカルブラザーズ待ち。この後スペシャルゲストのザ・ミュージックがあるとは言え、メインステージの大トリ。フジとケミカルの蜜月は見る側も承知ということもあり、ものすごい人が集まってくる。こういう状況でのケミカルなら「絶対楽しませてくれる」という期待感がハンパない。そして実際、その期待に全力で応えるようなライヴだった。ステージ両脇、そして後方のスクリーンをふんだんに使った音と映像のスペクタクル。ステージ上部の円形イルミネーションがカーテンのように下に動いてきて、二人のいるDJブースを囲んでいく。「Another World」のシンセのリフがファンファーレのように鳴り響き、そこから「Do It Again」の低音ビートがグリーンステージを狂乱のフロアに変貌させる。セットリストは分かる範囲でやった曲を書いたけど、実際はつなぎも含めてもっとたくさんあったはず。それでも、下のリストを見るだけでどれだけ出し惜しみのない、ヒット曲連発のものだったかわかると思う。フジのグリーンステージ、そして大トリ。このシチュエーションで自分達に期待されている役割を真正面から受け止めてきっちりとこなす。この安心感・安定感こそが、ケミカルの日本での人気の理由なんだと改めて思う。「Swoon」から「Star Guitar」への展開が自分的には最初のピーク。野外で踊る開放感と合わせ、この音の高揚感は何物にも代えがたい。キラキラとした音の粒が目の前ではじけるような素晴らしい瞬間だった。途中、大きな色とりどりのバルーンが観客の頭の上を弾んでいったのだけど、風で流されて僕のいる位置にはほとんど飛んでこなかったのはご愛嬌。ラスト、スクリーンには大きく日の丸が映し出された。今回の出血大サービスなステージも含め、ケミカルの二人から今の日本に対する無言のエールだと思って受け取った。

THE CHEMICAL BROTHERS Set List
・Another World
・Do It Again
・Horse Power
・Chemical Beats
・Swoon
・Star Guitar
・Hey Boy, Hey Girl
・Don't Think
・Out of Control
・Setting Sun
・Doesn't Matter
・Believe
・Escape Velocity
・Galvanize
・Block Rockin' Beats


 とにかく楽しい!としか言いようのないケミカルの横綱相撲のような圧倒的なステージで満足し、会場を後にする人も多数いたと思う。けれど、自分的にはザ・ミュージックのLast Standを見届けなくてはならない。2008年の『ストレングス・イン・ナンバーズ』で復活したとは言え、状況を考えると解散という決断はいたしかたないのかなという気もする。けれど、彼らが出てきた2002年に鳴り響いた可能性の塊のようなリフとグルーヴはあの時点でのUKロックの希望そのものだったのであり、札幌のライブで直に触れたあの熱狂はいまだに鮮明に記憶の中にある。恐いもの知らずだった20歳の若者たちは挫折と経験を経て大人になり、どこか達観したような面持ちでステージに現れた。ロブはパーカーのフードを目深にかぶり、トレーニング中のボクサーのようなストイックな雰囲気を体中に纏っている。「The Dance」の静かに、そして激しく湧き上がるグルーヴが渦になってグリーンステージを飲み込んでいく。久しぶりに見る生のザ・ミュージックは演奏力もかつての青さとはうって変わり、自信に満ちていた。観客の熱も異常なまでに高く、1曲終わるごとに地鳴りのような歓声が苗場の夜にこだまする。ロブも日本語で「マジヤバイ」を連発。「Fire」「The Spike」、そして「Welcome To The North」、「Strength In Numbers」と続く中盤はまさに磐石の貫禄。本当にこれが最後なのかと疑いたくなるような素晴らしいライヴ。ラストは当然、彼らの代名詞とも言えるリフから「The People」の大合唱。最後の瞬間を惜しむように、観客もバンドも、最後の一音までその声を、音を絞り出すような演奏だった。2002年のレッドマーキーからそのまま直結したかのような熱気あふれるステージ。とにかくバンドに対する客の愛とテンションがハンパなかった。フジを最後の地に選んだのは正解だし、幸せな散り際だったと思う。最後の「The People」の大合唱は鳥肌モノだった。またひとつ、忘れられない瞬間になった。

■THE MUSIC Set List
1.The Dance
2.Take The Long Road And Walk It
3.The Truth Is No Words
4.Freedom Fighters
5.Fire
6.The Spike
7.Welcome To The North
8.Strength In Numbers
9.Getaway
10.Bleed From Within
11.The People

 アンコールを求める声は絶えなかったが、スマッシュの日高社長が出てきて「ザ・ミュージックはこのフジですっぱりと終わりたいと思っている。彼らの意思を汲んでやってくれ。」ということを言って、もう一度バンドに大きな拍手が送られた。寂しいし悲しいけれど、やはり幸せなバンドだったんだろうと思う。お疲れ様でした。これで自分のフジロック2011は終了。翌日の帰りまでまたいろいろとあったけど、そこは省略。10年ぶりのフジはやっぱり雨で、でも全く関係なくて、底抜けに楽しく音楽に浸りまくれる場所だった。また来年、と今のところは言っておく。どうもありがとうございました。