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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2011 in EZO感想(3)〜希望という名の光

■2011/08/13@石狩湾新港
 20:00〜21:00までは全ステージ空白の時間となる。この空白についてはいろいろと憶測が飛んだが、結局恒例の花火を例年よりも長く行うという感じで落ち着いたようだ。テントに戻り、同行者たちと花火を楽しむ。いい時間だ。花火を写真で撮るのは専門の道具がないとなかなか難しいので、最近は諦めて見ることに専念している。
 ムーンサーカスに移動して砂原良徳。前回出演時は見ることができなかったので今回はマストと思って臨んだ。10年ぶりのオリジナル新作が発表された後ということもあって期待感も増大。ステージ上にはまりんと、もう一人オペレーターが登場。DJスタイルではなく、ラップトップを操作する形で音が紡がれていく。ステージは暗く、結構前の方で見ていたのだけどステージは暗く彼の表情は見てとれない。ステージ奥のスクリーンには曲に合わせて様々な映像が映し出される。「Beat It」の時には明確に反戦、あるいは反原発のメッセージが映像で表わされていた。もの言わずとも、彼のメッセージが音と映像から伝わってくる。『liminal』の、音と音の隙間を恐れないオリジナルなサウンドはムーンサーカスのような音のいいステージでこそその本領を発揮する。全身が音の粒子で包まれるような体験。「Lovebeat」のような昔の曲も、この方向でリアレンジされていた。手を伸ばせば触れられるんじゃないかと思うくらい質感豊かな音。気持ちいい。終盤にはレイ・ハラカミの「Joy」をほぼ完コピでカバー。これはもう涙なくしては聞けなかった。あまり自分の言葉をメディアに乗せる人ではないけれど、音で全てを物語っていた。個人的には今年のRSRのハイライトのひとつと言える、素晴らしいステージだった。

砂原良徳SetList
1.The First Step
2.Beat It
3.Subliminal
4.Boiling Point
5.Spiral Never Before
6.Lovebeat
7.Capacity Version luminal
8.Joy -Dear Rei Harakami-
9.The Center of Gravity

 まりんの最後を諦めて、ダッシュでサンステージへ。とうとうRSRのメインステージにまで登り詰めたサカナクション。さんざん語りつくされていることだが、サカナクションのデビューのきっかけは2006年のRSRでの「RISING STAR」オーディションに合格したことである。そこからトントン拍子でライブ会場の規模も大きくなり、ライジングサンに来るたびにステージも大きくなり、いよいよメインステージに凱旋である。バンドのファンとして、またRSRのファンとして、この瞬間には何としても立ち会わなくてはならない。セットリストは夏フェス前に行ったZeppツアーを基本としたもの。来るべき新作を前に、これが現時点でのベストと自信を持っているものなのだろう。「montage」での、全員がステージ前方横一列に並んでのパフォーマンスも先のツアーと同じ。スクリーンで見ないと後ろの方からはステージ上で何が行われているのかよくわからなかったと思うのだけど、このメインステージの大きさに怯むことなく、いい意味で自分たちのライブをやり切ったところに清々しさすら覚えた。サンステージがライブハウスのようだったのだ。「ルーキー」ではスモークの中にレーザー光線が飛び交い、ムーンサーカスのようだった。自分たちにとって特別な場所であるこのRSRにおいて、これだけのパフォーマンスを堂々と行ったことに満足感もあったのだと思う。スクリーンに映る一郎の表情は凛々しいものだった。「ルーキー」「アルクアラウンド」「アイデンティティ」のクライマックスは間違いなく今年のサンステージ最大の盛り上がりを記録しただろう。ラストは、これもまた彼らにとって特別な曲「ナイトフィッシングイズグッド」。そして、大勢の観客をサンステージから送り出したのは、レイ・ハラカミMixのネイティブ・ダンサーだった。ここにもまた、失われた才能に対する最大限のリスペクトがあった。

サカナクション SetList
1.インナーワールド
2.ライトダンス
3.セントレイ
4.アドベンチャー
5.Klee
6.三日月サンセット
7.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』
8.ホーリーダンス
9.montage
10.マレーシア32
11.ルーキー
12.アルクアラウンド
13.アイデンティティ
14.ナイトフィッシングイズグッド
SE ネイティブダンサー(rei harakami へっぽこre-arrange)

 テントに戻ってひと休みした後、グリーンオアシスにモーモールルギャバンを見に行く。ライブは初体験。ボクサーパンツ?一丁のゲイリー・ビッチェがドラムを叩きまくり、歌いまくる。MCで「モーモールルギャバンです!ジャンルはJ-POPです!」というのがツボで、何度も爆笑させてもらった。でも、それもあながち外れてはいないと思わせる楽曲のポップさがまた彼らの魅力だったりもすると思うのだけど。髪振り乱してプレイするキーボードのユコ・カティ含め、想像以上に激しいライブだった。ドラムセットに上ったビッチェが転倒するというアクシデントもあったけど、なんとか完走。(後でニュースを見たらけっこう重傷だったらしい)面白いバンドだとは思ってたけど、やっぱり実際にライブ見ないとダメだね。
 ムーンサーカスに移動してLOOPA NIGHT改めTONE PARK。この改名の意図ははっきりとは知らないのだけど、RSRで10年やったという区切りの意味と、あと恐らくは昨年急逝したKAGAMIの不在、というのもあるのかなという気がする。LOOPAのレギュラーだっただけでなく、電気のライブではサポートDJとしてプレイしていたし、卓球にとっては右腕というか盟友だったものね。卓球のプレイが近くなってくるとにわかに人が増えてくる。卓球のプレイ、最初に流れたのは山下達郎だった。発表されたばかりの新作『Ray Of Hope』に収録された、「希望という名の光(Prelude)」。このコーラスをサンプリングし、ビートとマッシュアップしつつ、本編に入っていった。踊るより先に、僕は驚きと衝撃と感動で胸が一杯になってしまった。卓球は、ラストでも同じく、山下達郎の「希望という名の光」ゴスペルヴァージョンを流していた。このプレイは、震災に対しての卓球のメッセージに他ならない。今この世に生き残っている者たちへの卓球からのメッセージが含まれているのだと思う他ない。楽しかったのは勿論、感動的だった。彼がこういう形でメッセージを表に出すのはとても珍しいと思う。ふざけたりおちゃらけたり下ネタ言ったりもするが、卓球は音楽には非常に真摯な人だ。自分の本当の思いは音楽で伝える。そんな卓球のミュージシャンシップがこのプレイには現れていたのじゃないだろうか。今回のフェスで、最も感動的な瞬間のひとつだった。

 一旦ムーンを離れ、テントに戻って休む。寝てしまうと朝まで行ってしまうと思ったので適当なところで戻る。人の少なかった曽我部恵一レッドスターでの達也セッションなどをつまみ見しつつ、TONE PARKで朝を迎える。だんだん東の空が明るくなってくる。ふと後ろを見たら、PAテントの前でいい感じに酔っ払ったサカナクション山口一郎がふらふらと踊っていた。最後の方にはキーボードの岡崎英美も来ていたようだ。やっぱ好きなのね、こういうの。個人的にはここ数年の恒例となっている、LOOPAでの朝日。今年も、TONE PARKと同時に自分にとってのRSRは終了した。
 すっかり明るくなったサンステージでは大トリのハナレグミが癒しの歌声を響かせていた。この時間に聞くハナレグミもいいものだ。大トリは正解だったと思う。テント組のみんなもそれぞれ戻ってきて、アレが良かっただのコレがこうだったの感想を言い合ったりしながら、祭の最後を名残惜しむ。テントをたたんで、みんなで記念写真。朝の飛行機で戻る人もいるので、ここでお別れ。パーティーは楽しい。パーティーの帰り途はいつもさびしい。今年はたくさんの人と一緒にいて、たくさん交流したので一層その思いが強かった。みんなありがとう。また来年あの場所で会いましょう。
 RSRそのものはと言うと、過ごす分には非常に快適だった。その快適さというのは例年よりも人が少ないから?という気がしていたのだけど、実際、観客数は2003年以降では最少だったらしい。うーん。MOUNT ALIVEができて、そちらにアーティストを持っていかれてる状況もあってWESSの経営は決して楽ではないらしい。今年のタイムテーブルが発表された時も、そのスカスカ具合から「まだ大物隠してるんじゃないか?」と言われていたが、結局なかった。JOIN ALIVEという北海道の新しい夏フェスが確立した今、RSRはもう一度その存在意義や立ち位置、やり方を問い直される時期に来ているのは間違いないだろう。僕自身はRSRとJAはアーティストが被ることはあってもフェスの性格自体は違うものだと思っている(各々の魅力そのものが違う)ので、すみ分けは可能だと思っている。事実、RSRでしか味わえない解放感や楽しみがあるし、毎年出演アーティストに関わらず石狩に来るフェスの固定ファンは確実にたくさんいるはずなのだ。ぶっちゃけ言えば、ステージ数減らしたっていいので、RSRRSRとして、北の大地のフェス第一人者として存在し続けていてほしい。そのためにいち参加者としてできることがあるなら、喜んでやりますよ。また来年。素晴らしい朝日を。