無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ゴールド・エクスペリエンス。

■BATTLES
■2011/11/09@umeda AKASO
 台風の影響で、フジロックでは見逃す結果となってしまったバトルス。フジでのステージの話を聞くたびに逃した魚の大きさを実感していたのだけれど、ついにリベンジの機会がやってきた。単独での来日ツアー。わずか3ヶ月強の間隔で再び日本に戻ってきてくれるとは嬉しい。
 会場のAKASOというライブハウスは初めてだったのだけど、大阪駅の東側、ガールズバーやキャバクラが立ち並ぶ繁華街の真ん中にあるので、道すがら客引きの女の子の誘惑がものすごい。サイズとしては大きくはなく、キャパは700という話だが、フロアは実際500も入ればギュウギュウになってしまうだろう。当然といえば当然だが、外国人のお客さんも多い。定刻を15分ほど過ぎたところで客電が落ちる。
 最新作『グロス・ドロップ』から「Africastle」でライブはスタート。中央にジョンのドラムセットが鎮座し、向かって左側にイアン、右側にデイブという立ち位置。ジョンのドラムセットはシンプルではあるが、シンバルが異常な高さ(2m近くある?)に設置されていて、そこだけ見ると飛びぬけてヘン。元くるりクリストファー・マグワイアも高かったけどそれ以上。デイブはギターをサンプリングし、ベースに持ち替えてそれに合わせていく。イアンもギターとキーボードをめまぐるしく変えながら様々なフレーズを編み出していく。イアンは片手でギター、片手でキーボードを弾くという離れ業もやっていた。ジョンのドラムは全ての音符が決めなんじゃないかというくらいに一打一打が強い。本当に3人で出してるのかと思うほど、複雑で変幻自在の音楽が目の前に展開していく。耳を傾けて体を揺らすだけでどんどん気持ち良くなっていく。
 ステージ後方には小さめの2枚のスクリーンパネル(大き目の姿見のような感じ)が設置されていて、バンドロゴや映像が映し出される。『グロス・ドロップ』でゲストボーカルが参加した曲ではボーカリストの顔が映し出され、曲とシンクロして実際に歌っているような錯覚を引き起こす。フロアのテンションがマックスになったのはやはり「Atlas」のイントロが聞こえた時だろうか。『ミラード』からは結局この曲しか演奏されなかったが、タイヨンダイ・ブラクストンの不在を感じることなく、3人のバトルスのレパートリーとして再構築されていたと思う。そこから「Wall Street」「Ice Cream」と続く中盤はものすごい熱気だった。このパネルも含め、セットリストもフジロックのときとは大きく変わっていなかったようだ。
 アンコールは「Sundome」。ジョンがMCで「何かリクエストはあるかい?歌うよ」みたいなことを言って、「俺の声聞きたい?なかなかいけるんだぜ」とマイクで歌おうとすると山塚EYEの声が聞こえてくる、てな趣向。客とのやり取りもフレンドリーで、気難しい音楽オタク的なイメージを勝手に持っていたのだけど、そうではなかった。『ミラード』の時は理路整然とした、全て数学的に分析できるような緻密な音楽を構築しているという印象だったのだけど、実際の彼らのキャラクターやライブを見るとむしろもっと天然でオープンな感じだった。楽器を触っていろいろ面白いことやってたらこんな曲が出来てしまったよ、というような。実際、3人で制作した『グロス・ドロップ』はそういうアルバムだったと思う。ということは前作に僕が感じていたイメージはタイヨンダイに拠るところが大きかったと言うことだろう。自由でフリーキーでありながら、前衛音楽にはならず、きちんと踊れる一定のポップラインにギリギリ踏みとどまるセンスはこれも勝手なイメージなのだけど、NY的だなという気がする。とにかくステージ上で何が行われているのか、どこからこの音が出てきているのか、目と耳が惹き付けられっぱなしの90分だった。こういう体験ができるから、音楽を聴くのはやめられない。

■SET LIST(自信なし)
1.Africastle
2.Sweetie & Shag
3.Dominican Fade
4.Atlas
5.Wall Street
6.Ice Cream
7.Inchworm
8.My Machines
9.Futura

10.Sundome

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)

GLOSS DROP [解説付・ボーナストラック収録 / 国内盤] (BRC288)