無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

今、鳴らされるべき音。

サカナクション  SAKANAQUARIUM 2011 DocumentaLy
■2011/10/19@なんばHatch
 先のZeppツアーで、現状のMAX値を更新するような素晴らしいパフォーマンスを見せ、その勢いのまま夏フェスを蹂躙。そして最高傑作と言ってもいい『DocumentLy』を引っさげたこのツアー。見るたびに充実振りが増して行く今のサカナクションである。なんばHatchは当然のソールドアウト。
 アルバムのイントロと同じ「RL」をバックにメンバーが登場。そのままセッションが始まる。実質の1曲目は新作から「モノクロトウキョー」。やや抑え目の導入?と思いきや、「セントレイ」「アドベンチャー」で一気に会場の温度を上げる。新作の曲と以前の曲をバランスよく配置していく前半。そして「years」「流線」では静謐なトーンで真摯に歌い上げる。バックのスクリーンに映し出されるオイルアートも雰囲気に合っている。そして、『DocumentaLy』のリード曲でもあり、アルバム中珠玉の、というかサカナクション史上でも最高峰の名曲であり超重要曲「エンドレス」が中盤に演奏される。後半に踊りまくりのクライマックスが来ることは容易に予想できる分、この中盤の濃密さにこそ今のサカナクションの充実と自信が表れていると思う。
 『バッハ〜』、「ホーリーダンス」と続き、「DocumentaRy」では例の、メンバー全員が前列に並んでのシークエンス。それぞれがカオシレイター的なものでノイズとビートを鳴らしつつ、ステージはスモークとレーザービームでどんどんカオス度を増していく。「サンプル」のフレーズがビートの中にサンプリングされつつ、沸騰寸前のテンションまで来たところで「ルーキー」のイントロがそれを一気に解放する。先のツアーや夏フェスでも見られた光景だが、そのダイナミズムはさらに強固なものになっていると思った。「アルクアラウンド」「アイデンティティ」とアンセムを投下し、フロア全体がひとつになっての大合唱。このクライマックスにおいてはピークタイムの針は振り切れっぱなしだ。本編ラストは「ドキュメント」で終了。きちんと、本編で本のページを閉じるようなこの展開は見事だと思う。
 アンコールでは、MCでアルバムを作るにあたっての葛藤や苦悩、そして出来上がった作品に対しての自信を誠実に語っていた。サカナクションとして今作らなければならなかったアルバムであると同時に、3.11を経て、今の日本で鳴らされなければならなかった音としてこのアルバムは非常に重要な意味を持っている。山口一郎は常に音楽シーンの中で、アンダーグラウンドとメジャーを繋ぐ存在でありたいと語ってきた。しかし、今やもう音楽シーンとか言うレベルではなく、サカナクションはこの国における重要なポップミュージックとしての意味を持ちつつあると思う。それを引き受ける覚悟こそが「エンドレス」だと思うのだけど、どうか。山口一郎の目はギラついていた。まだまだ大きなものを先に見据えている。それがあるうちは、サカナクションの音が途切れることは無いだろう。

■SET LIST
1.RL〜Session
2.モノクロトウキョー
3.セントレイ
4.アドベンチャー
5.仮面の街
6.Klee
7.アンタレスと針
8.years
9.流線
10.エンドレス
11.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』
12.ホーリーダンス
13.DocumentaRy〜サンプル
14.ルーキー
15.アルクアラウンド
16.アイデンティティ
17.ドキュメント
<アンコール1>
18.ネイティブダンサー
19.三日月サンセット
<アンコール2>
20.目が明く藍色