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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

二人ごっつ。

矢野顕子×上原ひろみ 今年は2人でさとがえるツアー〜Get Together〜
■2011/12/17@森ノ宮ピロティホール
 矢野顕子、年末恒例の「さとがえる」コンサートツアー。今年は上原ひろみとのコラボでのツアーとなる。9月にも彼女らは昭和女子大学人見記念講堂でコンサートを行っていて、その模様はアルバム『Get Together〜LIVE IN TOKYO〜』に収録されている。このアルバムの素晴らしさから、否が応にもこのツアーへの期待は高くなる。
 ステージには2台のピアノとマイク、そして鍵盤が見えるよう設置されたミラーのみという非常にシンプルなセット。開演前のアナウンスも二人の声で行うという、非常にほんわかとしたアットホームな雰囲気。しかし、二人が登場し、最初の一音が鳴った瞬間からものすごい勢いで音楽が溢れ出して来る。上原ひろみは圧倒的なスピードで鍵盤を叩き、小さい体全身を使ってリズムを刻む。実際彼女のプレイをきちんと見るのは初めてで、ジャズの人なのでおとなしいわけはないと思っていたけれど、想像以上の激しさだった。立ち上がり、飛び跳ね、足でバンバンとリズムを取り、テンションが上がると激しい息使いや奇声すら聞こえてくる。曲によっては弦を直接はじく内部奏法を見せたりする。その圧倒的なプレイに負けじと、矢野顕子も普段の数倍のテンションでピアノを弾きまくる。彼女オンリーの弾き語りの場合、テンポも自由で音符の隙間を楽しむような浮遊感が楽しめるが、このコラボレーションでは息つく暇もない。ジェットコースターのような速度で音の洪水に飲み込まれてしまう。1曲目から一気にそのテンションに引き込まれてしまった。矢野顕子スキャット上原ひろみのピアノのアドリブ応酬などもあり、序盤だけで今自分はものすごいものを見てる、と確信していた。
 すさまじいプレイで会場を沸かせる一方、MCになると途端にほんわかした、親子のような親友のようなトークで雰囲気を和らげる。「ずいずいずっころばし」と「MY FAVORITE THINGS」をマッシュアップした「ずいずいTHINGS」は、上原ひろみが「私は『MY FAVORITEずっころばし』の方がいいと思ったんですけど・・・」と笑いを誘う。矢野顕子も「ピロティホールのピロティって何?」「このホールすごいのよ、パンフレットにね、『縁起の良い劇場』って書いてあるの(笑)」など、どこから聞いてもアッコちゃんなMCで和ませる。中盤はやや落ち着いた曲が続き、二人の息の合ったプレイが違う角度から楽しめる。「Lean on me」のカバーは矢野顕子の歌唱も含め、いいアレンジだと思う。「学べよ」で再び怒濤のテンションで会場を巻き込んだところで、前半終了。休憩が入り、ピアノの再調律が行われる(内部奏法やってたし)。
 後半は矢野顕子のソロ、映画『監督失格』の主題歌「しあわせなバカタレ」からスタート。震災の話や糸井重里との話を絡め、未音源化の「こんなところにいてはいけない」を演奏。あと、矢野顕子は「今年はいろんなことがあった」という話と絡め、yanokamiの新作についても話していた。「ハラカミ君が突然行方をくらましてしまったものだから、私一人でyanokamiのプロモーションをしなくてはいけない」と愚痴をこぼしていた。アッコちゃん・・・。上原ひろみのソロや、矢野顕子が歌い上原ひろみが伴奏するなど、二人で弾きまくった前半に比べて後半は様々なバリエーションで聞かせる構成になっていた。そしてクライマックスは本編ラスト2曲。「CHILDREN IN THE SUMMER」は前述のライブアルバムでもオープニングを飾っているが、個人的にはこの日のコンサートのベストトラックと言っていいと思う。終わった瞬間に凄まじい拍手と歓声、そしてスタンディングオベーションが起こるほどだった。この日は上原ひろみの祖父母も会場に来ていて、紹介され手を振っていた。「おばあちゃんが大好きな曲をアレンジして演奏します」と、「りんご祭り(リンゴの木陰で〜リンゴの唄)」で本編終了。
 「ラーメンたべたい」を含め、ダブルアンコールにも応え、会場全体のスタンディングオベーションの中、コンサートは終了した。終演後も暫くの間拍手と歓声が鳴り止まなかったことが、観客の満足度を物語っている。二人の天才のミュージシャンシップが激しくぶつかり合う高いテンションのコンサートであると同時に、二人のキャラクターが存分に発揮された暖かいアットホームな空間でもあった。まさに全身音楽というにふさわしいアーティスト二人の共演。ピアノと声だけでこれだけ観衆を熱狂させ、魅了することができる。音楽の素晴らしさと可能性を新たに感じさせてくれる素晴らしい体験だった。個人的に、これで今年のライブ収めとなったが、今年見た中でも間違いなくベストだった。ありがとうございました。

■SET LIST
1.そこのアイロンに告ぐ
2.Evacuation Plan
3.ずいずいThings
4.Capecod Chips
5.Lean on me
6.Deja vu
7.学べよ
8.しあわせなバカタレ
9.こんなところにいてはいけない
10.Haze
11.月と太陽
12.CHILDREN IN THE SUMMER
13.りんご祭り
<アンコール1>
14.ラーメンたべたい
<アンコール2>
15.Green Tea Farm

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