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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

愛だろ、愛。

サンボマスター  蕎麦屋の親父に聞きました!「サンボマスターの新曲まだですか?」「さっき出た所です!」ツアー2012!
■2012/04/06@札幌ペニーレーン24
 ただでさえサンボマスターはロックファンに信頼されるバンドとして確固とした地位を築いてきたわけだが、震災後は特に、「福島」というキーワードと切っても切り離せない中、サンボマスターとして次に発表される新曲がいろいろな意味で興味深く待たれることになった。そうした状況を当然わかった上で今回のツアータイトルになっているのだろう。今回のツアーで聞ける新曲がどういうものになっているのか、非常に楽しみだった。それとは別に、単純にサンボの名曲群で盛り上がりたい、という衝動もあるわけで、序盤はそうした期待に十分応えてくれるものだった。
 ゴダイゴの「モンキーマジック」のイントロをバックに3人がステージ上に現れると一気にフロアから歓声が上がる。その声を受けたかのように、「歌声よおこれ」でスタート。「青春狂騒曲」「美しき人間の日々」とたたみかけ、序盤でいきなり「世界をかえさせておくれよ」。すでに前方の客は汗だく、中には気分を悪くして後方に下がる人もいるほど、怒涛の展開だった。「きみのキレイに気づいておくれ」でいったん落ち着いた後、最初に披露された新曲は、ミドルテンポで力強いエモーションを感じさせるものだった。
 「タンバリン」の後、アコースティックコーナーに移行する。山口は震災の後、曲を作ろうと思ったところ、「ラブソングしか出てこなかった」という。「I love you」に続き、アコースティックで歌われた新曲は帰らぬ人となったあの子を思う、美しいバラードだった。ここで震災の事をことさらに語るつもりはないが、あの未曾有の天災において、原発問題も含め我々に去来する感情は単純な悲しみや怒りというだけのものではない。もっと様々な感情が入り混じった、複雑で解決不能なものであるはずだ。それをこのバラード一発で歌いきってしまうところが、山口という人のすごさだ。サンボの次のアルバムは、震災・福島というキーワードを抜きには語れないものになるとは思うが、それ以上に、今までよりもものすごいレベルで「愛」を歌うものになるのではないかと思う。
 「希望の道」で圧倒的に深く潜り込んだ中盤を終え、後半のクライマックスへと向かう。「I love you & I need you ふくしま」の前に、山口はこんな感じのことを言っていた。「オレは自分の故郷の事を思う。それを歌う。でも君たちは君たちで、自分を蔑んで、自分を愛した自分の故郷の事を思ってくれ。」サンボの曲にある「愛」は、決して世界がどうとかの大風呂敷を広げない。目の前にいるこの子や、隣にいるあの子や、家族や、自分の手の届く範囲を歌う。というか、ロックなんてものはそもそもそれしか歌えないのだ。立って半畳寝て一畳。その範囲の事を歌ってナンボなのだ。見知らぬ土地の平和を願うチャリティーよりも、目の前の相手に対する「I Love You」の方が世界平和に近いことを山口はよく知っている。だから僕はサンボマスターのラブソングを信じることができる。本編最後に演奏された新曲は、激しいアンサンブルと怒涛のシャウトで「ロックンロール・イズ・ノット・デッド」と繰り返される、すさまじいエネルギーを放つ曲だった。それもまた、当然ながら単なる怒りではないのだ。来たるサンボの新作は非常に重い意味を内包することにならざるを得ないだろうが、本人たちは何とかフラットにそうした周囲の期待や状況と折り合いをつけようとしているような気がした。時折、意図的に無邪気に音楽と戯れているような、そんな演奏を聞かせるときがあった。大抵の場合、それは近藤洋一がキーになって引っ張っていたように思う。今のサンボはそういうバランスで成り立っているのだろう。

■SET LIST
1.歌声よおこれ
2.青春狂騒曲
3.美しき人間の日々
4.世界をかえさせておくれよ
5.きみのキレイに気づいておくれ
6.静かに光り続けるもの(新曲)
7.君を守って 君を愛して
8.全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
9.I love you
10.新曲
11.希望の道
12.そのぬくもりに用がある
13.光のロック
14.ラブソング
15.I love you & I need you ふくしま
16.あの鐘を鳴らすのはあなた
17.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
18.できっこないをやらなくちゃ
19.新曲
<アンコール>
20.あなたといきたい