居心地の悪い男。
- アーティスト: レニー・クラヴィッツ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2011/08/24
- メディア: CD
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レニー・クラヴィッツと言う人はビッグネームでありながら、どこにいても居心地の悪さ、すわりの悪さを感じさせるミュージシャンだ。黒でもなく白でもなく、ロックでもなくソウルでもない。アメリカでは彼の曲をかけないというラジオ局もあるそうだ。日本だとなかなか理解しにくい感覚だが、彼の人生はこういうことがずっとついて回るものだったのではないだろうか。黒人の母親と白人の父親をもつレニーにとって、人種問題は子供の頃から家庭内にすでにあったものであり、彼のアイデンティティに直結している問題と推測する。表題曲はまさに直接的に人種問題を歌った曲で、「マーティン・ルーサー・キングには先見の明があった」というフレーズから始まる。端的に言えばオバマ以降のアメリカについての曲なのだが、黒人が大統領になったからOK、という曲ではもちろんない。人々もアメリカも深い闇を抱えていて、それを乗り越えなければならない、というへヴィーな曲だと思う。アルバムジャケットには自身の幼少の写真を用いていて、正面から自分のアイデンティティに向き合い、自分の持つ幅広い音楽性を存分に発揮した渾身の一作だと思う。つまりは彼にとっての『ボーン・イン・ザ・USA』なのだ。このアルバムは。
ソングライティングに関しては文句のつけようがないくらい、スキのない曲が並んでいる。日本ではいまだに「自由への疾走」のイメージが強いのかもしれないが、レニー・クラヴィッツ最新の決定盤としてお勧めしたい。