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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

札幌からまんまで宇宙。

エレファントカシマシ CONCERT TOUR 2012
■2012/06/17@Zepp Sapporo
 新作『MASTERPIECE』を引っさげての全国ツアー。直前になり、ドラムの冨永が急性胆嚢炎となってしまい胆嚢摘出手術を行うというニュースが飛び込んできた。それによりツアー序盤の公演を延期することになり、実質この札幌が初日となった。定刻から約10分遅れでライブはスタート。新作から最も新しいシングルである「大地のシンフォニー」。壮大なメロディーを持つ曲を宮本は堂々と歌い上げる。相当気合が入っているのだろう。ボーカルの状態も序盤は非常にキレているように見えた。「悲しみの果て」はいつ聞いても、懐メロになることがない。というかエレカシの昔の曲はみんなそうだ。必然があって演奏されている。義務や義理ではないからだと思う。今回のツアーは蔦谷好位置氏が参加しておらず、ギターもミッキー(ヒラマミキオ)ではない。サポートギタリストは現The Birthdayのフジイケンジだ。この5人編成でのライヴの真価は、3曲目「地元のダンナ」でいきなり発揮された。宮本のギターがザクザクとリフを鳴らし、トリプルギターでガンと音が鳴った瞬間、とてつもないエネルギーがそこに発生する。ユニヴァーサル移籍前の『町を見下ろす丘』という傑作でありながら地味な印象のアルバムの曲ではあるが、これが1曲目でもよかったんじゃないかと思うくらい、この編成での魅力を感じさせ、会場を熱狂させていた。フジイケンジのプレイは非常にそつがなく、目立ちすぎもしないしかと言って存在感が失われることもない。石君のバックになることもあれば前に出る時もある。アンサンブルの中でポイントになるプレイをしていたと思う。まだ少し固い印象もあるので、こなれてくるともっとアンサンブルは安定すると思う。
 新作『MASTERPIECE』からの曲が続く。アルバムで聞くとサラッとした印象の曲でも、ライヴでは生のバンドのエネルギーと宮本の狂気がそこに上乗せされる。蔦谷氏がいないということは、アンサンブルの指揮は全て宮本が行うという事であり、ともすればそれは空回ったり、崩壊寸前まで行ってしまうような危うい展開になってしまう可能性を孕んでいる。事実、かつてのエレカシはそうだった時期もある。しかし、今のエレカシはそうはならない。空回ったとしても客を置き去りにすることはない。そのエネルギーと狂気で否応なく客を巻き込んでいく。「約束」のような心に染み入る珠玉のバラードから「世界伝統のマスター馬鹿」のような、エレカシダークサイドのヘヴィーな曲まで、今のエレカシの楽曲は非常に幅広い。ユニヴァーサル移籍以降、ストレートなラブソングを歌うようになってからは特にそうだ。時にはこのバンドは分裂症じゃないのか、と思ってしまうほど曲ごとにその表情が変わる。しかしそれこそが宮本という人の人間性そのものであり、エレカシというバンドの魅力なのだ。蔦谷好位置という、バンドを客観的に見る指揮者がいないことで、端的に言えばステージ上でのヤンチャぶりが増している。そんな獰猛な野性がこの編成の大きな見どころなのじゃないだろうか。特にそれが爆発したのが中盤の「ゴクロウサン」と「珍奇男」。「ゴクロウサン」は3.11以降の日本に対しての怒りのロックンロールとして聞こえた。「珍奇男」は、後半のインストルメントパートでメンバーのソロを交えつつどんどんうねっていくアンサンブルが非常にスリリングだった。トミのプレイもここに至っては全く心配ないようで、安心して見ていられた。元気になってよかった。
 蔦谷氏がいないのだけど、ステージの左端にはずっとキーボードが置かれていた。何だろう、と思っていると宮本が何とエレピの前に。「ピアノで作った曲があるんで、弾けないんですけどオレ。ちょっとまあ、あの、やってみます。」と新作から「飛べない俺」。イントロで失敗するのもご愛嬌。これは宮本先生新機軸でしょう。いいものが見れました。すこしたどたどしかったけど、思ったよりも弾けていた。本編ラストは新作の冒頭を飾るハードロックナンバー「我が祈り」。今回のアルバムは、この激しい音で始まることに意味があると思う。このリフを、このリズムを、このボーカルを聞かせたいのだと思う。ラストはこの曲しかなかった。
 アンコールはちょっと季節外れな「桜の花」でさわやかに始まり、「so many people」「ガストロンジャー」で一気に盛り上げる。「so many people」は音源よりもBPM早い高速バージョン。ライブではこの方が全然いい。「ガストロンジャー」での拳の上がり方はこの日一番だったんじゃないだろうか。発表当時はここまで客とステージの一体感を象徴する曲になるとは思いもよらなかったが、「だから胸を張ってさ、そう」という言葉が「さあ、がんばろうぜ」に聞こえると思えば、全てがつながるような気もする。「ガストロンジャー」のあともう1曲、となるとこれしかない「ファイティングマン」。素晴らしい盛り上がり。デビュー25年のバンドが、デビューアルバムの1曲目をこれだけ鮮烈に演奏できるのは本当にすごいと思う。ステージから降りる際、まだまだという客の歓声に対し宮本は言った。「次はライジングで会おうぜ。」翌日の公式発表を待たずのフライング。今日のこの素晴らしいライヴのダブルアンコールは夏の石狩まで取っておくとしよう。

■SET LIST
1.大地のシンフォニー
2.悲しみの果て
3.地元のダンナ
4.東京からまんまで宇宙
5.約束
6.ココロをノックしてくれ
7.Darling
8.穴があったら入いりたい
9.眠れない夜
10.ゴクロウサン
11.珍奇男
12.ワインディングロード
13.七色の虹の橋
14.世界伝統のマスター馬鹿
15.飛べない俺
16.我が祈り
<アンコール>
17.桜の花、舞い上がる道を
18.So many people
19.ガストロンジャー
20.ファイティングマン