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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ウェブ=クモの巣、で選んだんじゃないよね。

アメイジングスパイダーマン  THE AMAZING SPIDER-MAN
■監督:マーク・ウェブ
■出演:アンドリュー・ガーフィールドエマ・ストーン、リース・イヴァンズ他
http://www.amazing-spiderman.jp/

 『スパイダーマン4』の制作が決定していたにもかかわらず、監督のサム・ライミが降板してしまったためにシリーズそのものが頓挫することになった前シリーズ。ソニー・ピクチャーズがこの事態を受け、新たな監督・キャストでシリーズをリブートしようというのがこのプロジェクト。なので、当初より続編の制作が前提であり、本作で回収されない伏線もたくさんある。ラストも謎を多く含んだものになっているので、単体の作品としての評価はそのあたりを考慮する必要があると思う。
 新たなスパイダーマン=ピーター・パーカーは『ソーシャル・ネットワーク』で注目を浴びたアンドリュー・ガーフィールドが演じている。今シリーズのヒロインはMJではなくグウェン・ステーシーであり、エマ・ストーンが演じている。個人的にはここは大ポイント。前シリーズで残念だったのはMJ役のキルスティン・ダンストが全くヒロインに相応しいと感じられず、アメリカと日本で美人の基準が違うのかと本気で悩んだものだったが、今回のエマ・ストーンは非常にキュートで魅力的。大きな目と小顔は日本人の好みにもマッチすると思うし、ブロンドのポニーテールの破壊力は抜群だ。彼女ならばピーターが命を賭して守りたくなるのも頷ける。
 他にも彼らの年齢設定やスパイダーマンになる経緯など、サム・ライミ版と異なる部分は多い。シリーズの肝となるであろう大きな謎にピーターの本当の両親が絡んでいるのもその一つ。ただ、そうした違いを列挙して云々しても意味がない。違うシリーズなのだから、違うのは当たり前だ。問題なのは本作が、そして新シリーズがヒーロー映画のスパイダーマンとしてどうなのか、ということだろう。本作のピーターは高校生という設定であり、幼い時に両親が消え、叔父叔母に育てられたことで若干捻じれた青春時代を送っている。そういう不安定な自我を抱えた若者が突然超能力を持ちヒーローになってしまうとどうなるか?というのが物語の前半部分である。ピーターは己の欲望を満足させるためにその力を使い、その力に驕り、勘違いをする。サム・ライミ版もそうだったがこの部分のクソッぷりをどう描くかが、キモだと思う。犯罪者を弄ぶようにいたぶり、「世のためにやってやってるんだ」という間違った驕りを増長させるピーターのクズっぷりはなかなかよく描けている。そこから、叔父さんが殺されることと、一つの事件をきっかけに彼はヒーローとしての自分に目覚めていく。のだけど、それも完全に真っ白になったわけではないことが作中で端々に示唆される。この辺りは後のシリーズ展開にも関係してくるのかもしれないが、若きピーターは正義のためにその力を使いながらも、私怨を晴らすことも忘れていない。この危うさが新しいスパイダーマンの魅力になればいいと思う。
 アンドリュー・ガーフィールドは基本シュッとしたイケメンであるので、学校で目立たずあまり他人と関わらないように過ごすピーターというキャラクターにしてはカッコよすぎる気もする。序盤から普通に女生徒に話しかけられてたりもするし、ナードでモテないオタクという感じの描き方を最初からしていないようにも思う。なのでグウェンと付き合うことになる時も「まあ、そうだよね」という風にしか見えなかった。もっと「ダメダメなやつが超能力を得てカッコいいヒーローに変身」的な大逆転があった方が物語のカタルシスは得られたような気がする。
 スパイダーマンと言えば「親愛なる隣人(friendly neighborhood)」という別名が示す通り、市民に愛されるヒーローである。ここが描かれるかどうかというのもスパイダーマン映画としての重要な部分だと思う。(サム・ライミ版で言えば『2』で電車を止めるあのシーン!)ここに関しては後半のクライマックスに超燃える展開があるので、個人的には合格。ご都合主義的な展開ではあるが、ヒーローのためにみんなが協力する→その思いを受けて力を得る、というヒーローものなら燃えなきゃウソなシーン。ここは熱かった。悪役のコナーズ博士=リザードの演技はいいとして、敵が何を目的としてどうしたいのか、と言うことが余りきちんと描かれていないのはマイナス。悪役のモチベーションが薄いとヒーロー側の活躍も空回りに見えてしまうことがあるので、ここはもう少しきちっと書いてほしかった。オズコープ社のセキュリティは甘すぎだろう、とか高校生がそこで働いてるのって、実際どうよ?とかこの辺の書き方がヌルいのは今後に対して不安でもある。科学的な考察にしても、もう少しきちんとしておかないと後々ピーターの両親の謎が出てきたときに困るんじゃないかと言う気もする。
 全体としては及第点だと思うし、新シリーズの幕開けとして期待を持たせるものにはなってると思う。ただ、監督のマーク・ウェブがどれだけスパイダーマン、あるいはアメコミヒーローものに思い入れがあるかというのは疑問だ。それが映画の良し悪しに直接関係することはあまりないかもしれないけど、後々原作ファンに愛されるものになるかどうかはかなり違ってくる。バットマン・ファンはたぶん、クリストファー・ノーランよりもティム・バートンの方が好きなんだと思うのですよ。調べたことはないけど。その意味でサム・ライミは原作に対してクレイジーなくらいのこだわりと強い想いを持った監督だったわけで、その人のシリーズを超えるには例えばクリストファー・ノーランが『ダークナイト』でやって見せたように、ヒーローものを超えた社会的な視点を孕ませるとか、違う視点での作劇が必要になると思う。今作を見る限り、今回のスパイダーマンはかなりシリアスな展開になる要素を持っているし、そういう方向にしたいのだと思う。それが奏功するかは今作だけでは判断できない。次作を待ちたいと思う。エマ・ストーンの笑顔を見ていれば2年なんてすぐだろう。