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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RSR'12感想(1)〜夏の子供たち

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO
■2012/08/10-11@石狩湾新港
 14回目のライジングサン。今年はレイアウトも大きく変更となり、ステージも新しくなった。昨年の観客数に危機感を覚えたのか、ブッキングも当初発表からビッグネームが続く気合の入ったものだった。個人的には誰が出ようと行くことはデフォルトなのだけど、やはりこれだけ見たいものがあると気分が高揚せずにはいられない。その分、タイムテーブルを見た時の落胆も激しかったわけだけど。
 朝起きると雨。あめー。天気予報が芳しくないことはわかっていたが、いきなりこれだとテンションが下がる。それでも気分を奮い起し、大阪から来た友人をホテルに迎えに出発。ホテルはすすきのだったのだけど、大通りのあたりで一層雨が激しくなってきた。ゲリラ豪雨かと思うほどの強い雨。念のため車には長靴も積んでいたとはいえ、テンション下がる。会場が近づくにつれ、雨は上がり時には日差しすら出るようになった。奇跡。曇ってても雨さえ降らなければ勝ち、と思っていたのでこれはテンション上がる。駐車場の位置が変わり、当然、入り口までの誘導も変わる。細かいことは省くが、道を選ばないと非常に長い渋滞に巻き込まれる可能性がある。来年も同じ場所ならば、気を付けたい。小樽側から行けばよし。駐車場は広く、すでに開場した後に入ったのだけど場所は全然余裕。駐車場から入場ゲートまでが今までよりも近くなった分、荷物が多い人には楽かも。いつもは全く動かない列にイライラさせられる入場だが、今回は事前にリストバンドを送付、あるいは入場前にチケットとリストバンドを交換という形式に変更。入場ゲート自体はリストバンドを見せるだけの通過なので動きはスムーズ。開場後は人が多いので列が長かったが、止まらずに絶えず進むのでさほどストレスは無し。新しいことをやると改悪が多かったライジングサンの歴史だが、今回ここまではなかなかいいじゃない、という感じ。

 ゲートを通るとすぐ左には新ステージのテント、デフガレージ。遠くにサンステージが見える。テント引き換えはエリアによっては非常に混雑していた。今回、僕は友人たちと違うエリアしか確保できず一人でテントを張る予定だったのだけど、友人たちのテントに荷物だけ間借りさせて置かせてもらい、夜は自宅に戻って入浴・就寝することにした。その代わりテント張るのは手伝います、というギブアンドテイク。来年以降もこれだな(本当かよ)。前日、前夜祭で初対面の友人の友人たちとも再会し、みんなで乾杯と昼メシ。やはりこれでしょう。あとは、思い思いに見たいアクトに散らばっていく。とりあえず僕はサンステージに向かうことにした。

 フジファブリック。実は志村存命時のライブを何度か映像で見たことがあるだけで、ライブを生で見るのは初めて。なので昔と今の彼らのライブを比べることは自分には出来ない。ただ、金澤ダイスケにしろ山内総一郎にしろ、他のバンドのサポートで演奏を聞いたことはあったので、プレイヤーとしてはすごく優秀な人たちだというのはわかっていた。そんなライトなリスナーでも知っている「虹」「夜明けのBEAT」という2連発で今年のライジングサン、サンステージの演奏はスタートした。山内のボーカルはやや線が細いものの、不安定な感じはなく、前ボーカルとの比較を云々するのでなければ全く問題ない。個人的にはよくある「メインボーカルでない人が歌った時のいたたまれなさ」を若干想像していたのだけど、全然歌えるじゃん、と思った。もちろん、ヘビーなファンの中には志村じゃなければ、という思いを持つ人もいるだろう。でも、今のフジファブリックは新たなファンをつかむくらいのパワーを持ってると思った。そのうち何年もすればフジファブリックって昔はボーカル違ったんだよね、なんていう人が出てくるかもしれない。僕が彼らのステージから強く感じたのはフジファブリックは強いバンドだ、と言うこと。メインソングライターでありボーカリストであり、フロントマンだった男が急逝し、それでも残されたメンバーでバンドを続けるという決断にはどれほどの覚悟があっただろう。その過程でどれだけの葛藤と悲しみを乗り越えてきたのだろう。そう思うと、とてつもなく感動してしまった。最新作をちゃんと聞いていないので半分くらいは知らない曲だったのだけど、ラストの「ECHO」って曲は完全に志村正彦に向けて歌ったものだと思った。本人たちも志村がいなくなってからは初めてのライジングサン、ということをしきりに言っていた。思うところはいろいろあったのだろう。バンドっていいなあ、と思わせてくれるステージでした。よかった。

フジファブリック SET LIST
1.虹
2.夜明けのBEAT
3.スワン
4.徒然モノクローム
5.パレード
6.流線型
7.Sufer King
8.銀河
9.STAR
10.ECHO

 そのままサンステージに残ってPerfume。今年のサンステージは縦横にサイズが小さくなった気がする。そして、ステージの位置も低くなった気がする。つまり、見てる側からするとアーティストの位置が近くなったのでスタンディング前方にいればモニターを見る必要は全くなかった。その恩恵を最初に受けたのがPerfumeだった。ロックフェスに出ることはもはや珍しくないPerfumeだが、ライジングサンは初登場。あ〜ちゃんは「ライジングはホントに音楽好きな、ここに来るために仕事がんばったり、そういう人が来るフェスっていうイメージがあって、なので出られて本当にうれしい」というようなことを言っていた。ライブでしかやらないという新曲「Spending all my time」を含むセットは限られた時間の中でのベストヒット感を存分に出したものだったし、途中のコールアンドレスポンスタイムも、彼女らのライブでは定番のノリを一見さんに体験させるには十分なものだった。ステージに向かって写真を撮る客に対し毒を吐く(でもちゃんと笑いに変えて)あたりも、彼女らが踏んできた場数を思わせる。ラスト「My Color」はコール&レスポンスで練習した成果が存分に発揮され、スタンディングエリアの振り付けの揃いっぷりにあ〜ちゃんが「こんなの初めて!」と興奮する一幕も。MC、踊り、キュートな佇まいとPerfumeの魅力を余すところなく伝えるステージは堂々たるフェスアクトと言っていいものだった。

Perfume SET LIST
1.GLITTER
2.Spending all my time
3.ポリリズム
4.Baby Cruising Love
5.Fake it
6.チョコレイト・ディスコ
7.My Color


 ここで初めて橋を渡り、位置の変わったレッドスター方面へ移動。GREAT3見たかったけど体力温存のために諦めました。矢野顕子×上原ひろみ。サウンドチェックで矢野顕子本人が登場し、マイクとピアノのチェックを行う。いちいち佇まいに気品があってかつチャーミング。見ているだけで笑顔になる。昨年のツアーを大阪で見ているので素晴らしいステージになることはわかっていたのだけど、本当にすごかった。彼女らは年齢は離れていても非常に公私ともに仲の良い関係であるが、単に仲良しこよしのコラボという枠を超え、ミュージシャン・ピアニストとしてのエゴとプライドのぶつかり合い、二人の天才によるピアノバトルという様相を呈す。16ビートで鳴らされる鍵盤の激しさはどこからがアドリブなのかわからないほどのめまぐるしい展開を見せる。上原ひろみは野外のステージでその野性を思う存分解き放つような凄まじい演奏を聞かせる。足でバンバン床を打ち鳴らし、立ち上がって鍵盤を叩き、ついにはピアノの中に手を入れて直接弦を弾く。その圧倒的なテンションに、矢野顕子という天才が必死になって付いていくという印象ですらある。あんなに必死に、そして楽しそうにピアノを弾く矢野顕子を僕は見たことがない。スカパラと共演した時も思ったのだけど、上原ひろみというのは共演者の本気を引き出すミュージシャンなのだと思う。生半可なテンションや手癖の演奏では彼女の野性に歯が立たないのだ。油断すると飲みこまれる。そんな危機感が百戦錬磨の天才にあれだけの形相をさせるのだと思う。上原ひろみのピアノは、ピアノというのがそもそも獰猛な打楽器であることを思い出させてくれる。それでいて同時にしなやかで華麗。「月と太陽」では矢野顕子がスタンディングマイクで歌い、上原ひろみが流麗なピアノで伴奏する。暮れかけた空に溶けていくような美しい歌声とピアノは、聞いたものの涙を誘うには十分すぎた。彼女らのステージを初めて見た人は、圧倒的な音楽体験に打ち震えたことだと思う。余りの凄まじさに、僕はM-1テツandトモが出たときの談志師匠の言葉を思い出した。「お前らはここに出てくる奴じゃないよ。」正直、こんなもの見ちゃったらもう後は荷物まとめて帰るしかないっていうようなとてつもないステージ。クラシックなホールで聞く時と全く違う、(特に上原ひろみの)野性が野外で解き放たれるようなパフォーマンスだった。レッドスターというステージの雰囲気にもばっちりハマっていたと思う。もう一点、曲間で他のステージの音が聞こえる時に矢野顕子が若干の苦言を呈していた。「ロックの皆さんってねえ、もうほら、マイクで音が増幅されてるわけじゃない?それなのにさらに叫ぶ必要があるのかしら?」この発言もまた、前述の感想につながるのであります。彼女にしか言えないよ、こんな台詞。

矢野顕子×上原ひろみ SET LIST
1.そこのアイロンに告ぐ
2.あんたがたアフロ
3.Cape Cod Chips
4.Children In The Summer
5.月と太陽
6.りんご祭り
7.ラーメンたべたい


 と、素晴らしいステージの余韻に浸っていると、隣のレッドスターカフェから歌声と歓声が聞こえてくる。民生の声にそっくりだなあと思って行ってみると、なんと奥田民生本人だった。ひとり股旅状態の弾き語り。しかも歌っているのは今さっき聞いたばかりの「ラーメンたべたい」。と、後ろから現れたのはなんと、出番を終えたばかりの矢野顕子ご本人。旧友の民生との即興デュエットとなった。なんというゴージャスなサプライズ矢野顕子を見送った後の民生「コロッケの気持ちがわかりました。」爆笑。昨年の厳島神社でのひとり股旅で披露したPerfume「レーザービーム」もやってくれた。「ここはさすがに来ないと思います(笑)」。ちょうど裏のサンステージでは斎藤和義が出ていたが、「歌うたいのバラッド」を演奏し、「本物がやってますのでそちらへどうぞ」など、MCもいちいち冴えていた。弾き語りの「働く男」なんて初めて聞いたし。民生は今回のライジングではゲストも含めて名前がなかったので完全なサプライズだったのだけど、本人いわく「楽屋がありましたので(笑)、楽屋分は頑張ってやろうと思います」とのこと。ラッキーにも貴重なステージを見ることができました。

奥田民生 SET LIST
1.ラーメンたべたい
2.レーザービーム
3.ドカドカうるさいR&Rバンド
4.歌うたいのバラッド
5.働く男
6.さすらい

1日目後半へ続く。