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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RSR'12感想(2)〜どんなものでも君にかないやしない

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO
■2012/08/10-11@石狩湾新港

 腹ごしらえをしてテントに戻る。しばし休んだ後、岡村ちゃんを見にサンステージへ。実は最後の最後まで、岡村ちゃんに行くか、アーステントにチャットモンチーを見に行くか迷っていた。2人になってからのチャットの凄まじさを聞くにつけ、絶対に見届けたいという思いがあった。フジロックでも入場が間に合わず見逃したこともあって、見たいと思っていたのだが・・・。この時間帯は他にも怒髪天SP、LAMAなどキラーアクトが目白押しで、ここのブッキング考えたやつはマジで泣かす。最終的には自分の青春時代に嘘はつけなかったということで岡村ちゃんへ。
 21時過ぎにはスタンディングエリアに着いたのだけど、最前3〜4列目くらいにあっさり立てるほど人がスカスカだった。おいおいマジかよ岡村ちゃんだぜ?と若干不安になってくる。もしかして岡村ちゃんを待っているのは自分のようにリアルタイムのおっさんおばさんだけなのか。若い人にはもうクスリで何度も捕まっている過去の人でしかないのか。清水健太郎と同等の扱いなのか。そんなことを考えていたら、10〜15分前にはスタンディングはほぼ埋まってきた。他のステージのアクトが終わったタイミングで人が流れてきたようだ。ほっ。
 昨年もツアーで見ているので、セルフリブートアルバム『エチケット』のアレンジを主とした現在の岡村ちゃんのモードは大体わかっている。問題はフェスという場でそれがどう響くのかということ。大歓声の中、バンドメンバーが現れる。「どうなっちゃってんだよ」のイントロが鳴り響く中、この日最もまばゆいライティングでステージが照らされる。ぶっちゃけ、音と照明については岡村ちゃんの時が最も良かったのじゃないか。イントロがクライマックスを迎えたところで岡村ちゃんがステージに現れる。や否や、ものすごい怒号と嬌声。老若男女問わず、彼の一挙手一投足に注目が集まる。ステージ上の岡村靖幸という動物から一瞬たりとも目を離すことができない。スーツと黒メガネの岡村ちゃんはじっとスタンディングエリアを見つめ、何かを確認するかのように左右を見渡し、何かに納得したようにうなずくと一気にテンションアップ。キレキレのダンスとボーカルで一気に世界を岡村ちゃん色に染める。声は昨年のツアーよりも出ているような気がした。1曲目からまさに「どうなっちゃってんだよ」というくらいの盛り上がり。そして「カルアミルク」で一気に男子の胸をキュンとつかみ、女子の股間を濡らすのだ。ああもうどうにでもしてくれ。8年前とは比べものにならないくらいシェイプされた体のラインはダンスのキレを取り戻させているし、20年前と変わらず、聞く者見る者を魅了する唯一無二の天才がここにいる。一字一句脳裏にこびりついて離れない数々のキラーフレーズが目の前で歌われていく。彼の曲の中で悶々とした十代を過ごしている内気な童貞男子は、今も確実に僕の心の中にいる。リアルタイマーの贔屓目抜きにしても、これはノスタルジーではなく、2012年現在のティーンエイジャーにも有効な青春のかさぶただと思うのだ。「震災とかあってさ、でも何もできないし、それよりもさ、僕はさ、君にね、言いたいことがあるんだけど、それはつまりその、あの、…イチャイチャしたーーーーい!」これが、これこそが岡村ちゃんだ。童貞男子の内なる欲望を自分の代わりに大声で叫んでくれる。そこにシビレる!憧れるウ!という十代男子のヒーローだったのだ、岡村ちゃんは。「ロングシュート」のイントロのギターが鳴り響いた瞬間、サンステージに集まった大観衆が「へぽたいや」と歌った瞬間、そのどれもがこの夜が忘れられないものになることを示していた。昨年のツアーと同じく、MCはバンマスの白石氏が担当し、その間岡村ちゃんは借りてきた子猫のようにドラムセットのところに腰を下ろしている。その小動物ぶりが岡村ちゃんすぎる。「だいすき」で大団円を迎えてもアンコールの拍手は鳴りやまない。さらに3曲もキラーチューンを投下し、サンステージをピンクに染めて岡村ちゃんは去って行った。本当のDance,Chance,Romanceは自分次第だぜ、と言い残して。この日岡村ちゃんを見て良かった。岡村ちゃんが自分の人生にいてくれて良かった。貴方に会えて良かった。心からそう思える至福の時間だった。願わくば、そろそろ新曲が聞きたい。秋のツアーで聞けるだろうか。初めて彼のパフォーマンスを目にしたと思しき若い人たちが「すごいね。超カッコいい」と言っているのを聞いて「だろ?」と思った。もう二度と過ちを犯さないよう、みんな岡村ちゃんにやさしくしてあげよう。

岡村靖幸 SET LIST
1.どうなっちゃってんだよ
2.カルアミルク
3.アチチチ
4.Vegetable
5.聖書
6.Punch↑
7.いじわる
8.あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう
9.だいすき
<アンコール>
10.モンシロ
11.ハレンチ
12.Super Girl

(↓写真は岡村ちゃんのサウンドチェック時のもの)

 ぶっちゃけ、もうこの時点で燃え尽きかけていたのだけど、アーステントにスカパラを見に行く。序盤から圧倒的な盛り上がりで、ライジングサンにおけるスカパラのホーム感とでもいうものが炸裂している。真ん中あたりで見ていても辛くなってきたので「めくれたオレンジ」あたりで端に移動。途中、北原氏のトロンボーンが壊れてしまうハプニングもあったが、それもステージ上のテンションが高かったがゆえの結果。さすがスカパラという堂々のアクト。

東京スカパラダイスオーケストラ SET LIST
1.Return of Supercharger
2.ルパン三世 '78
3.DOWN BEAT STOMP
4.めくれたオレンジ(vo.茂木欣一)

5.STORM RIDER
6.ペドラーズ
7.天国と地獄
8.SKA ME CRAZY
9.5 days of TEQUILA
10.White Light
11.All Good Ska Is One


 電気グルーヴはフジで見たし、おそらくフェス仕様のセットリストは大きく変わらないはずだろう、と予想してレインボーシャングリラにてTHA BLUE HERBを待つ。この新しいステージは昨年までのムーンサーカスの役割を果たすことになるのかと思うのだけど、テントステージだった。ステージからフロア後方までの奥行きが小さく、こじんまりとした印象。個人的には野外で開放的な中クラブサウンドの低音を鳴らしレーザーバリバリで盛り上げるムーンサーカスの雰囲気が好きだったのでこれはちょっとどうかなという感じ。というか、ステージが6つある中半分がテントステージって、野外フェスとしてどうなのよということ。ライジングサンは遮蔽物のない野っ原での開催なので各ステージの音混ざりが課題なのはわかる。これまでもそれを解消すべくステージの位置や向きを試行錯誤してきた歴史も知っている。今年のステージ改変もその一環であることは理解しているが、サンステージのPAの劣化(単純に音が小さい)やテントステージの増加は野外フェスとしての魅力をスポイルする方向なのじゃないだろうか。例えば、隣り合ってるステージの時間を互い違いにするとか、運営面で工夫できることももっとあると思うんだが。
 兎に角、レインボーシャングリラにてTHA BLUE HERB。フジでも見たのだけど、こちらは60分のロングセット、そしてやはりライジング、北海道でのホーム感というものがパフォーマンスには如実に現れる。新作『TOTAL』からの「WE CAN...」でスタートしたライブは、「俺達はまだまだ高く飛べる」というフレーズとともに、フロアとの共闘体制を強調したものになっていく。『TOTAL』で描かれた彼らの第四章は震災と向き合った結果の「闘い」というものがひとつのテーマになっていると思う。もちろん彼らはデビュー以来常に戦ってきたわけだが、その対象が日本のヒップホップシーンや音楽業界、そういうものから明確にポリティカルなものになっている、というのが僕の印象だ。断片的に様々な曲のフレーズを織り込みつつ、BOSSのラップは怒りを帯び、観客をアジテートしていく。その熱量はすさまじい。そして、ピンク・フロイドの「虚空のスキャット」を用いたトラックの中、中盤は静かなトーンで精神世界を漂うようなサイケデリックなトリップへとフロアを誘う。このパートでは自分たちの「生」を確かめるような内省と力強さが同居している。BOSSのトーンも語りかけるようなものになり、まるで教会で説教する牧師のような荘厳さを感じさせる。「さあ、帰ろう。ここに居すぎてはいけない。」というBOSSの言葉とともに現実へと戻ったライブは、希望と決意に満ちた後半へとなだれ込む。「Brighter」はあまりにも感動的な瞬間だった。「未来は俺等の手の中」は原曲の意味を超え、彼らとフロアとの共闘を示すテーマとして鳴り響いていた。
 アンコールが終了しても、この日このステージに出られたことと集まってくれた観客に向けての感謝を即興でラップし続け、深々と頭を下げ、拳を上げて帰っていった。北の王者、堂々の凱旋。

THA BLUE HERB SET LIST(うろ覚え)
・WE CAN...
・Everyday New Dawn
・Ame Ni Mo Makez
・THA NORTH FACE
・Ill Beatnik
・GET READY
・Brother
・Motivation
・Brighter
・未来は俺らの手の中
・この夜だけは

 テントに戻り、皆と談笑してるうちに時間は2時半。荷物を取って一旦車で帰宅。やっぱり家の布団で寝ると疲労回復が違う。というわけで2日目に続く。