無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ヒーローズ。

■アベンジャーズ The Avengers
■監督・脚本:ジョス・ウィードン ■出演:ロバート・ダウニーJr、クリス・エヴァンスマーク・ラファロクリス・ヘムズワーススカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、サミュエル・L・ジャクソン
 『アベンジャーズ』見たさに『アイアンマン』からマーベルのヒーロー映画を見直したという人は僕だけではないと思う。勿論、見ていなくてもそれなりに楽しめるものにはなっているとは思うのだけど、予備知識としてあった方がより楽しめるのは間違いない。簡単に説明すると、アメコミのマーベル社が自前の映画会社を設立し、自分とこのヒーロー映画を作り出した。その一発目が『アイアンマン』で、それから『インクレディブル・ハルク』、『アイアンマン2』、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ』と次々に作品を発表してきた。実はそれらの作品群は「マーベル・シネマティック・ユニヴァース」という同じ世界観の中で物語が進行していて、各々の物語や登場人物はそれぞれ別の作品中でも関わってくる。「アベンジャーズ」というのはこのヒーロー軍団の名前だが、それを結成し、統率するのは国際平和維持組織「S.H.I.E.L.D.(シールド)」長官のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)。彼は前述の作品群にも少しずつ登場し、徐々に『アベンジャーズ』の全貌が見えてくる、という仕掛けになっている。「アベンジャーズ」自体は数十年前からマーベル社のコミックで出版されてきたヒーロー総登場シリーズだが、それを実写映画としてやってしまう、しかもその前にそれそれが主役の単体作品を製作し、それらがきちんとリンクしつつ『アベンジャーズ』に向かうという流れを作る。そんな壮大なプロジェクトなのだ。これだけでワクワクしてくる。というわけで、映画の出来そのものよりも本作に至る経緯に思いを馳せただけでお腹一杯になってしまう、そんな映画なのだけど、本編自体ももちろんすごいボリューム。
 こんなアホみたいな映画の監督を任されたのはジョス・ウィードンという人。アメコミオタクとしても知られている人らしく、マーベルコミックの原作などもやっているらしい。見終わってみれば、よくぞここまで一本の映画として成立させたというのが正直な感想。そもそも、それぞれが主役級のヒーローを集めて各々にきちんと見せ場を作り、彼らが集まらなければならない敵を設定し、物語を矛盾なく進行させ2時間半にまとめるというのは至難の技だろう。それが曲がりなりにも成立しているのは監督の手腕によると思う。ぶっちゃけ細かいストーリーを云々する映画ではなく、エゴをぶつけ合い全くまとまらず危機に陥るヒーローたちがいかにして同じ目的を共有し力を合わせるに至るのか、というストーリーである。で、力を合わせて敵を倒すクライマックスのアクションこそが肝であり、敵はその引き立て役でしかない。敵がしょぼいという意見は確かにあると思うが、それはもうしょうがない。敵の強さを描く映画ではなく、ヒーローたちが結束したらマジすげー、を見せる映画だから。シールドの母艦シーンなどの決めのシーンがとにかくいちいちカッコよく描かれていて、ヒーローものかくあるべしという大見栄や外連味に溢れている。これを見て熱くならない男の子はいない。後半、敵が攻めてきてからのアクションのスピード感と同時進行感(ヒーローたちが違う場所で戦いつつ、時折リンクしていく感)がすさまじく、CGの凄さもさることながらやはり構成が良くできていると思った。カッコいい決め台詞もいろいろ出てくるけど、前のシーンで出てきた何気ない台詞や言い回しが後半にきちんと伏線として回収されるあたり、やはり脚本も務めたジョス・ウィードンの上手さが光る。
 見どころをあげるとキリがないけど、クライマックスの戦闘シーンで初めて6人が集まるところはしびれた。鳥肌立った。ただ、このシーンは予告編やCMでも出てしまっているので非常にもったいない。あとはキャプテン・アメリカのメンバーへの指示出しシーン、特にハルクへの一言は最高だし、ハルクの変身シーンでのマーク・ラファロの一言にもゾクッとくる。ホーク・アイ(ジェレミー・レナー)のノールック弓撃ちも超カッコいい。そして何より、クライマックスでロバート・ダウニーJrがある人の名前を叫ぶシーン。ここは「これはクリリンの分!」に匹敵すると言っていいでしょう。燃える。とまあ、細かいこと言わずに楽しめ!という映画です。矛盾をついても何も出て来やしない。そういう映画じゃない。ヒーローたちが思う存分NYで暴れまくって町を破壊し敵を倒しまくる。ヒュー!最高じゃないですか。あと、ネタバレは避けますが、とりあえずエンドロール終わっても席を立っちゃダメです。最後の最後に最高のシーンがあるので。これだけでも見る価値あると思うなあ。全員の表情が素晴らしいのですよ。しかもこのシリーズ、これで終わりではなくてこの先も『アイアンマン3』、『ソー2』、『キャプテン・アメリカ2』などが予定されていて、再び『アベンジャーズ2』に向かっていくとのこと。最高じゃないですか。
 「これが映画だ」とは言いすぎた感があるけど、「これがアメコミヒーロー映画だ」とは大声で言っていいのじゃないでしょうか。あとパンフレットが超分厚く、シリーズの過去作も含め基本情報が満載なのでお得。これで700円は安い。珍しく買う価値のあるパンフレットでした。

アベンジャーズ:プレリュード (ShoPro Books)

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