とむらいのあとは。
DocumentaLy(初回限定盤A)CD+DVD+豪華ブックレット
- アーティスト: サカナクション
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2011/09/28
- メディア: CD
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「エンドレス」
震災から1年半以上が過ぎた今になっても、僕が震災後に感じていた感情をここまで的確に表した曲はない。単純な怒りや悲しみというわけではなく、諦念とも違う、広い場所にぽつんと置き去りにされたような寂寞とした感情。どうしてこうなってしまったのか、という疑問。悔しさ。と同時に不安だけではなく、どうにかしなければ、という思い。直接被害を受けたわけではない多数の日本人の一人として感じるそんな思いを、「エンドレス」は形にしてくれた。感謝している。
このアルバムは震災によって少なからず当初の目論見とは違う形で完成したはずだ。ただ、「ドキュメンタリー」というキーワードの下、今のサカナクションを裏表なく開けっぴろげにするというコンセプトは貫かれたと思う。「エンドレス」もそうだし、「ドキュメント」もそうだ。そして前作から今作に至るまでのシングル曲の羅列によりサカナクションがどういう道を辿ってきたかをわかりやすく示している。それと同時に、2011年という年がどういうものであったのか、この年に起きた忘れられない出来事に対してひとりの都市生活者である山口一郎という人は何を考え、どう感じたのか。それを克明に記した作品となった。
バンドとしてのキャリアと、時代・世相というものがリンクする瞬間。優れたロックバンドというのはそれを優れた作品として昇華する。このアルバムは素晴らしい。でも、例えば10年後にこのアルバムに出会った人が本作に込められた同時代性を今の僕たちと同じレベルで理解し共感できるかというと、決してそうではないのだ。そういう意味で、ロックは時代を映す鏡であるということを改めて思い出させてくれた。サカナクションが今後どういうキャリアを歩もうとも、2011年にこのアルバムが世に出たということを僕は絶対に忘れないと思う。