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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

グラウンド・ゼロ番地より。

叙景ゼロ番地

叙景ゼロ番地

eastern youth  極東最前線/巡業2012「ゼロ番地から彼方の空まで」
■2012/11/02@札幌cube garden
 最新作『叙景ゼロ番地』は、明らかに震災を受けての彼らの心象や現実認識が感じられるアルバムだった。ただ、だからと言ってこれまでのイースタンユースと変わった印象はほとんどない。それは、彼らにとっての日常や現実が震災後もほとんど変わっていなかったからだろう。勿論、感じたことや考えていることはいろいろあるだろう。それはアルバムの中にも反映されていると思う。だからと言って、毎日やらなければならない目の前のTO DOは結局変わらない。そういう、諦観に近い乾いた叙情が通奏低音として流れているように感じる。世の中がどうであろうと、結局生きていく自分は「個」であり、そこからしか何も始まらない。安易な共感や連帯に流されず、徹底して個を見つめるストイシズムは僕がイースタンユースを好きな理由でもある。ただ、今作で勿体ないのは曲自体に若干魅力が欠けていると感じたところだ。リフにしてもメロディーにしても、サビの爆発力も、全体として引っ掛かりが弱い気がする。一度二度聞いてもなかなか曲が頭に入らないのは僕の記憶力が低下したからだけではないと思う。
 という状態で赴いた、久々のワンマン。結論から言えば、素晴らしいライヴだった。前半はノーMCで新作の曲を中心に演奏するのだけど、アルバムで聞いた時と印象が全く違った。目の前で叫びギターをかき鳴らす吉野の姿が、そして彼の頭に浮かぶ血管の太さが、曲そのものの力を超えて観客に届くのだ。迫力と言ってしまえばそれまでだが、ライヴでなければ体験できない彼らの武器であり魅力。それをより感じることができた。中盤からは「男子畢生」「青すぎる空」など、代表曲を織り交ぜての堂々たる内容。cube gardenはかつて自分が住んでいた場所に近いということで、MCで昔話をしつつ、場を和ませる。そうして一転、ステージから強烈な「個」が放たれるのだ。それを受け取る観客もまた「個」の集合体である。「個」の叫びが「個」に響く。シンプルで、最も強いコミュニケーション。イースタンユースのライヴはいつだってそうだ。ライヴで聞くと「青すぎる空」や「矯正視力」は毎回号泣なのだけど、今回もそうだった。もはや自分でもどうして泣いてるのかわからない。条件反射みたいなものかもしれない。パブロフの犬のよだれと僕の涙は同類である。
 「ゼロから全てが始まる」で終わった本編の後、アンコールは「全部一から始まる!」(「ズッコケ問答」)で再開した。自分がゼロであり、一歩踏み出せば「一」なのだ。だから荒野に進路を取れ。言うのは簡単だが、どん底を見て、尚且つ死にかけた男が言うと説得力が違う。客電が灯っても拍手が鳴りやまない。2度目のアンコールに応えてくれた彼らが最後に演奏したのは「夜明けの歌」。嗚呼。逃げても逃げても朝が来る。それでも生きて行かざるを得ない。裸足で行かざるを得ない。また明日、ゼロから始めよう。そう思った、雨の夜だった。

■SET LIST
1.グッドバイ
2.目眩の街
3.空に三日月帰り道
4.ひなげしが咲いている
5.呼んでいるのは誰なんだ?
6.男子畢生危機一髪
7.青すぎる空
8.静寂が燃える
9.残像都市と私
10.踵鳴る
11.地図のない旅
12.矯正視力〇.六
13.荒野に進路を取れ
14.ゼロから全てが始まる
<アンコール1>
15.ズッコケ問答
16.素晴らしい世界
<アンコール2>
17.夜明けの歌