無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

全身音楽家×2。

チャットモンチー TOUR 2013
■2013/02/10@Zepp Sapporo
 フェスなどで何度かチャンスがあったものの、他とのかぶりで泣く泣くあきらめた結果この日が初体験となった二人チャットモンチー。アルバム『変身』からもわかるが、二人になったことによりバンドの音楽に抜本的な変化があったことがビビッドに伝わるライブになっていた。
 ステージ奥から二人並んで登場からえっちゃんドラム、あっこベースの「変身」からスタート。まさにバンドの転換点を自ら宣言した曲であり、アルバムのテーマ曲。当然、新作からの曲がメインになるわけだけど、以前の曲も二人で演奏する以上アレンジから編成から全てを見直さねばならず、二人の試行錯誤と苦労が伺える。音数が減らざるを得ない状況で、それでもチャットモンチーの曲の本質を失わない絶妙の削ぎ落とし方で再生した楽曲たち。あっこのピアノとえっちゃんのドラム&ボーカルで演奏される「染まるよ」は、元々このスタイルがこの曲の姿なんじゃないかと思うくらい説得力があった。途中のMCコーナー?では、開演前に会場付近を散歩しながら録音した会話が延々と流される(ファンの子との会話もあった)。この辺の遊び心はまさにチャットモンチーのやりたい放題っぷりが全開だった。その後にえっちゃんの弾き語りで披露された新曲はこれまでの紆余曲折を振り返りつつ、この先もまっすぐに突き抜ける、と言うような曲だった。
 ドラムを叩きながら鍵盤を弾き、その場でギターをサンプリングし、フレーズを重ねていく。一人何役もこなしながら、音楽を奏でていく二人。サポートメンバーを入れればいくらでも音を厚くし整えることはできる。それをしないのは、チャットモンチーのライヴはチャットモンチーでなければならないというこだわりだろうか。音がスカスカでも関係なく、悲壮感も言い訳もなく、ただ音楽に真摯に向き合い、自分達の音楽と戯れる彼女らの姿があまりにもキラキラと眩しかった。できるかどうかではなく、やる。やってみる。「きらきらひかれ」はまさにそういう彼女らの姿勢が具現化したような曲であり、間違いなくライヴのクライマックスだった。
 アンコール、二人が「2ピースの極み」という「ふたり、人生、自由ヶ丘」は曲中で楽器を何度も交換し、ドラムも交代するという曲芸のような演奏。それも奇抜なことをやろうというのではなく、結果そうなったという風情なのが素晴らしい。今の彼女らには何の制限も制約もない。バンド存続の危機的な状況を音楽への意志の力で乗り切った彼女らは無敵だ。もしかしたら、この先彼女らが「こいつもチャットモンチーだ」と認める人間が出てくれば、メンバーが増えることもあるのかもしれない。でもその時はギターウルフのように全く楽器持ったことないような人間が入るんじゃないかという気がする。なんとなくだけど。理屈じゃなく、本能。チャットモンチーの野性はますます加速している。それでいてキュートさも失っていない。そんな彼女らももう今年で30(!)。早いなー。

■SET LIST
1.変身
2.初日の出
3.コンビニエンスハネムーン
4.東京ハチミツオーケストラ
5.テルマエ・ロマン
6.少女E
7.Yes or No or Love
8.染まるよ
9.歩くオブジェ
10.(新曲)
11.恋愛スピリッツ
12.余談
13.ハテナ
14.きらきらひかれ
15.満月に吠えろ
<アンコール>
16.ふたり、人生、自由ヶ丘