無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

キチガイおじさんたちのカラオケ大会。

電気グルーヴ “ツアーパンダ2013”
■2013/03/09@Zepp Sapporo
 前回のツアーから4年あまり。20周年を記念したイベントが一通り終わり、沈黙した電気グルーヴだったが、ちょこちょこと単発のライヴはあったし、シングルも出たし、卓球も瀧もソロ仕事が途切れることは無かったしであまり久々という感じはしない。でもやはりアルバムが出てツアーとなるとそれは事件となる。卓球のツイッター上でも言及されていたように、電気グルーヴの今回のツアーは福岡6人大阪が8人岡山4人名古屋が3人という集客であったようだ。この日の札幌に集まった観客は3人。しかし、Zepp Sapporoを埋め尽くしたその3人により、大盛況となったことだけはお伝えしておきたい。観客が3人だったおかげで、僕はほぼ最前エリアで見ることができました。
 サポートDJとして参加している牛尾憲輔(agraph)が登場し、「The Big Shirts」のイントロが鳴った瞬間、大歓声が沸きあがる(3人の)。卓球と瀧が登場してテンションMAX、だが、なぜか卓球は瀧の押す台車に座り込み、点滴を打ちながらの登場。悲鳴と歓声と爆笑が交差する、いきなりの先制パンチ。途中、立ち上がろうとする卓球だが、再び座り込んでしまう。曲の最後で何とか立ち上がり、大歓声。よく意味の分からない小芝居だったが、最高のオープニング。新作『人間と動物』が歌モノ中心のアルバムで、BPMも全体にさほど早くなく、サウンドの質感は80年代エレポップ的。ということで、ライヴ全体としてはDJ的にシームレスに曲が連続していくというよりは、単体でカチッと演奏するスタイルだった。また、歌モノ中心ということで必然、卓球がマイクを持ち前に出る時間も多い。瀧のパフォーマンスこそが電気、というのはもちろんなのだけど、卓球のソロDJと電気が最も違うのはやはりこの点だと思う。
 途中のMC(休憩時間)は完全にオールナイトニッポン時代のノリ。とにかく卓球がくだらないことをバンバンかぶせてきて、話が脱線していき、二人で笑っている。それを見て観客(3人)も笑っている。話が面白すぎてなかなか次の曲が始まらないのだけど、「なんで次の曲やらないんだって思ってるでしょ?休んでんだよ」(笑)。何なのだろう、この二人の仲の良さは。仲良すぎて気持ち悪さすら感じる。気持ち悪いと言えば、ライヴ前半にステージ左右に置かれた二人の顔をポリゴン的に再現したでかいオブジェ。ここにプロジェクション・マッピング的に様々な映像が映し出されるのだけど、それがまあ気持ち悪かった(褒め言葉)。つまり最高。
 後半は後方スクリーンへの通常のVJと共に進行。「Hi-Score」「モンキーに警告」などの懐かしい曲もあったし、「DISCO UNION」や「B.B.E.」が現在の音で再現された時のカッコよさったらない。「ACID HOUSE ALL NIGHT LONG」から「N.O.」への展開はアドレナリン全開だったし、「あすなろサンシャイン」は荘厳さすら感じた。しかし何度も言うけど、二人がマイクを持って並んでいる姿が最高なのだ。「キチガイおじさんたちのカラオケ大会」とはよく言ったものだ。「君たちさ、普通に暮らしててウチに帰った後「あ〜、もっと狂えたな〜」って反省することある?オレあるよ?」(卓球)その言葉を実証するかのようなクレイジーな歌唱が爆発する「P」は、実は今回の隠れたクライマックスではないだろうか。
 「札幌の若者の全てがここに集まっています」(3人だけど)のサンプリングボイスが繰り返される中、本編終了。アンコールラストの「カフェ・ド・鬼」まで途切れることのない、二人の狂いっぷり。フェスでも電気のライヴはもちろん楽しいのだけど、くだらないMCやフェスセットからもれる曲をたっぷり堪能できるワンマンはやはり濃密すぎる時間。Twitter上での客3人とか瀧死亡とかのネタも、言ってしまえば単なる悪ふざけ。ただ、ちょっとしたことで揚げ足を取られヘタすれば炎上してしまう今の世の中でここまで堂々と悪ふざけできる彼らのような存在がどれだけ有難いか。ファンもそれをわかった上で面白がって乗っかっている。この共犯関係を楽しめるかどうかが、電気を好きになるかどうかのひとつの分岐点だと思う。僕はこのキチガイおじさんたちに一生ついて行きます。カッコいい年の取り方をしている人たちだと思う。

■SET LIST
1.The Big Shirts
2.Missing Beatz
3.SHAME
4.SHAMEFUL
5.ズーディザイア
6.モノノケダンス
7.Slow Motion
8.アルペジ夫とオシ礼太
9.DISCO UNION
10.Hi-Score
11.モンキーに警告
12.B.B.E.
13.P
14.キラーポマト
15.Prof. Radio
16.Oyster
17.Upside Down
18.WORDS
19.Flashback Disco
20.Shangri-La
21.少年ヤング
22.ACID HOUSE ALL NIGHT LONG〜N.O.
23.あすなろサンシャイン
24.レアクティオーン
<アンコール>
25.(電気グルーヴの)Steppin' Stone
26.カフェ・ド・鬼(鬼と科学ver.)