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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

All That They Can't Leave Behind.

サカナクション SAKANAQUARIUM 2013“sakanaction”
■2013/04/06-07@Zepp Sapporo
 内省のアルバム『sakanaction』を引っさげてのツアー。自分たちが音楽に向かう動機を静かに見つめ直した新作をどのようにステージから届けるのか。結論から言ってしまうと、今まで以上に濃密な観客とのコミュニケーションを実現することになるのだった。
 「INORI」のSEに乗ってステージ上に5人が登場。のっけから5台のMacがステージ前方一列に並ぶクラフトワーク・フォーメーションでのスタート。「ミュージック」。実は、最初シングルで聞いた時にはあまり強く印象に残らなかった曲だった。いい曲だとは思ったが、地味かなと。しかし、このライヴでの一発目からその印象が完全に覆った。特に、後半のクライマックス、バンドフォーメーションになりコーラスでの大サビが来るところで僕は泣きそうになってしまった。こんなに感情を揺さぶる曲だったのか、と。実は個人的にはライヴの中でのエモーショナルなピークはこの「ミュージック」の時だった。今回のツアーで何をどういう風にやりたいのか、という要素はこの1曲の中に凝縮されていたと思う。そこから先は、それらを丁寧に紐解いていく時間だったと言っていいくらいだ。
 新作からの「M」を挟み、序盤で一気に「アイデンティティ」「ルーキー」と繋ぐ、出し惜しみ全くなしの先制攻撃。最新型の「陽」を存分に放出した後は、「陰」の世界にじっくりと引き込んでいく。おなじみのオイルアートをスクリーンに映し出しながらのスロウ・パート。特に「multiple exposure」から「mellow」の流れは白眉。序盤の盛り上がりよりも、むしろこちらの方が表なのではと思うような(というか実際そうだが)、山口一郎という人の深淵を覗き込む時間。「ホーリーダンス」では前回のツアーでも登場した、天井から降りてくる光の玉が音楽にシンクロしたダンスを見せる。先のオイルアートにしろ、光の玉にしろ、この後登場するすさまじいレーザーにしろ、ステージ上のメンバーの演奏のみならず、サカナクションのライヴでは会場を存分に使った演出効果が非常に重要な位置を占める。それらを担当するスタッフも含め、チームサカナクションとしてのライヴだという意識が行き届いているのだと思う。それが本当に素晴らしい。
 初日「僕と花」の出だしをトチったのもご愛嬌。「バッハ」では再びメンバー一列隊形になってのバッキバキのクラブミュージックが会場を響かせる。正直、Zeppでこれだけいい音を聞いたのは初めてじゃないかと思うくらいの気持ち良さ。そんな中、床から天井、四方の壁を全て覆い尽くすようなレーザー光線の嵐。これはアガる。頭のネジが飛ぶようなトリップ体験。中盤のダークサイドからこの最先端クラブミュージックへの振り幅。距離感。これを同時に体験できるのは今はサカナクションのライヴだけじゃなかろうか。その興奮を持ったまま「ネイティブダンサー」へ。フロアに白い淡雪が降り注ぐ感動の演出。そして「アドベンチャー」「Aoi」と続く終盤のクライマックスへと続く。「アルクアラウンド」の位置が2日間で違ったが、個人的には2日目の流れの方が好きだった。
 アンコール、「ストラクチャー」では会場一体になってのコーラス。演奏がストップした後の観客の歌声は、新作感想で僕が言及したコーラスの重要性をまさに体現したような瞬間ではなかったか。このライヴにおけるバンドの観客のコミュニケーションの濃密さが最も直接的に出ていたと思う。真面目でシリアスなMCの後、ライヴを締めくくる「朝の歌」。実質のラストはこの曲だろう、やはり。内省の夜を潜り抜けて、朝が来る。ライヴはおひらき。みんなも家へ帰ろう。その後の1曲はおまけ。彼らからの粋なプレゼント。穿った見方をすれば、この時期の曲を札幌でやることにどうしても意味を見出したくなってしまう。ここでスタートした時の気持ちをきちんと今も持っているよ、と。サカナクションは変わり続ける。変わり続けている。始めて彼らをペニーレーンで見た時の初々しさからすれば全く違うスケールのバンドだ。しかし、その中で失わなかったもの。それがあるからこそ、ここまで大きなバンドになったのだと思っている。

■SET LIST(4/6)
1.INORI
2.ミュージック
3.M
4.アイデンティティ
5.ルーキー
6.Multiple exposure

7.mellow
8.ボイル
9.アルデバラン
10.なんてったって春
11.ホーリーダンス
12.僕と花
13.バッハの旋律を夜に聴いたせいです(mix)
14.ネイティブダンサー
15.アドベンチャー
16.Aoi
17.アルクアラウンド
18.夜の踊り子
<アンコール>
19.ストラクチャー
20.朝の歌
21.三日月サンセット
■SET LIST(4/7)
1〜14.前日と同じ
15.アルクアラウンド
16.アドベンチャー
17.Aoi
18.夜の踊り子
<アンコール>
19.ストラクチャー
20.朝の歌
21.白波トップウォーター