無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014感想(2)~まっくら森の奥で

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO
■2014/08/15-16@石狩湾新港

 今年のライジングサンは本当に気温差が激しかった。あまりに冷えるのでラーメンをいただく。20時半過ぎにサンステージ前に行くとまだそれほど人は多くない。ほぼ最前エリアをゲットして電気を待つ。電気グルーヴは今年デビュー25周年ということで久々のツアーも行うし、活発な活動を期待してる。というか、20周年記念アルバム『20』からもう5年もたってるのか、と驚きを禁じえない。ついこないだのような気がする。通常彼らのライヴではステージ後方のスクリーンにVJの映像を映し出すが、今回はサンステージ横のスクリーンを使う。何だかんだで彼らがサンステージでやるのは久々じゃないだろうか。あまり記憶にない。サンステージにDJ機材で、サポートDJと彼らの3人しかいない。普通ならさびしくなる。しかし、瀧の存在感とサウンドの貫禄がそれを感じさせない。瀧は白いシルクハットをかぶり、のしのしとステージを歩き回り、客を煽る。卓球はやや大きめのシャツを着てるなと思ったら瀧の私服を着ていたらしい(笑)。おなじみの曲も微妙にアレンジやミックスを変えて、25周年仕様に仕立てている。セットとしてはこの前にやったフジロックのものに少しプラスしたものだったようだ。ツアーになればまた勝手は違うだろうけど、フェスならこれ以上は望めないくらい贅沢なセットだった。瀧はステージを降り、前方の客とハイタッチして盛り上げていた。僕も手を出したら、瀧の大きな若干汗ばんだ手に触れることができた。電気のライヴは基本瀧が前方で客を煽りボーカルを取るが、電気のライヴが電気であるのは卓球がDJ卓から降りてマイクを持ち前方に来る瞬間があればこそだ。卓球と瀧が並んでマイクを持つ姿が最高にテンション上がる。僕はこの瞬間こそが電気のライヴの本質だと思っている。「Shangri-la」から「富士山」までは至福の時間。富士山ではTシャツのデザインにもなっている、青と白に塗られた工事用コーンが登場。25周年ツアーにも大きく期待を抱かせる、おじさんたちの悪ふざけを満喫できた。

電気グルーヴ SET LIST
1.ハローミスターモンキーマジックオーケストラ
2.SHAME
3.SHAMEFUL
4.ズーディザイア
5.モノノケダンス
6.UPSIDE DOWN
7.スマイルレススマイル
8.Nothing’s Gonna Change
9.ガリガリ君
10.Flashback Disco
11.Shangri-la
12.あすなろサンシャイン
13.N.O.
14.富士山

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パンをカレーにつけるやつ。何これ美味しい。

 ここからはキャンパーズの時間。やはり寒いので、レッドスターのレストランエリアで評判だったcoronのカレーつけパンをいただく。グリーンとレッドがあったが、僕が食べたのはグリーン。これが、絶品だった。カレーはかなりスパイシーで辛さが後から来るが、パンにカレーをしみこませて食べることで辛さも和らぐし、パンそのものももちもちして風味があって美味しい。パンをつけて食べるという行為がその昔小学校の給食で同じことをやっていたと思い出したりして。今年食べたメニューの中でも1,2を争う美味さでした。
 レインボーシャングリラでブンブンサテライツを待つ。川島の病気と復帰以降、ライヴを見るのは初。「Easy Action」「The Moment I Count」「Helter Skelter」とキラーアンセム連発で一気にテントを沸騰させる。低音はビリビリと下半身を揺らし、切れのあるギターとタイトなドラムが全身を貫く。外の寒さとはうって変わってテント内が暑い。新曲の「Only Blood」はサビの柔らかなメロディが印象的。後半は「Dive For You」で再びテントを揺らした後、「FOGBOUND」のプログレッシブな音像でトリップさせてくれた。まさに合法ドラッグな音。ラストの「KICK IT OUT」で完全に持って行ったが、アンコールの拍手が鳴り止まない。再び登場し「DRESS LIKE AN ANGEL」をかまして終了。ソリッドでカッコいいことはもう間違いないのだけど、今のブンブンは以前のような攻撃的な刺々しさだけではなくどこか聞き手を包み込むような雰囲気も感じたりする。川島は時折笑顔を見せ、何度もありがとうと言っていた。子供ができ、自身の病気も経験した彼が命というものについて重く考えていることは想像に難くない。そうした変化が、音にも現れているのではないだろうか。テントを後にする人たちの中には彼らのライヴを初めて見た人もいたようだけど、口々に「すごい」と言っていた。個人的にも、初日のベストアクトだったと思う。

BOOM BOOM SATELLITES SET LIST
1.EASY ACTION
2.THE MOMENT I COUNT
3.HELTER SKELTER
4.ONLY BLOOD
5.DIVE FOR YOU
6.100SUNS(?)
7.FOGBOUND
8.KICK IT OUT
<アンコール>
9.DRESS LIKE AN ANGEL

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奥地。

 時間的に、そろそろ一時帰宅しようかという頃合い。ここ数年はテントを遠方から参加の友人に使ってもらい、僕は札幌市内の自宅に帰って寝ることにしている。シャワーも浴びれるしゆっくりベッドで眠れるし携帯は充電できるしでいいこと尽くめ。まさにWin-Winの関係。テントの中で夜な夜な何が行われているのかは、詮索しないことにします。
 今年は会場外駐車場なのでボヘミアン側のゲートから帰ることになる。ちょうど、深夜1時からタイラクルーエリアで成山内のライヴがあると言うことで、最後にこれを見てから帰ることにした。テントに戻り、荷物をまとめ、テントにいた友人たちに挨拶をしてタイラクルーへ。ここはCANDLE JUNEプロデュースによる、数々のろうそくとオーガニックな調度品で飾られた神秘的な空間。他のステージの音も少し漏れてくるが、森の奥にひっそりと佇む浮世離れした空間は夜のひんやりした空気と相まってとても幻想的だった。木で組み立てられたいい雰囲気のステージの周りには横になって寝ている人も多い。成山内はsleepy.abの成山と山内によるアコースティックユニット。この雰囲気にどんぴしゃのアクトと言えるだろう。sleepy.abの曲から幻想的で浮遊感のあるメロディと声を純粋抽出したサウンドは、完全にこのステージの雰囲気を味方につけていた。「今日の最後と言うことなんで、寝かせにきました。」「寝てていいんですよ?」と成山は言っていたが、本当に聞いていて気持ちよすぎて夢の世界へ誘われるようだった。森に溶け、星空に消えて行くような美しいメロディと歌声。優しいアコースティックギター。MCも穏やかで、あたたかく、ほっこりする。バンドの人柄も現れるような、やさしい時間。そして改めて、sleepy.abは名曲が多いなあと思いただただその美しさに酔いしれていた。「ねむろ」ではとうとう涙腺も決壊し、自宅で待つ大切な人のことを思って聞いていた。一緒にここでこの音を聞けたらどんなに幸せだっただろう。アンコールでは谷山浩子の「まっくら森の歌」のカバーも交え、全8曲。実はこの初日の裏ベストアクトだったんじゃないか、と思うくらい素晴らしい時間だった。一日の最後にこの音に触れられて本当に良かった。

■成山内 SET LIST
1.メロディ
2.ランプ
3.さかなになって
4.メリーゴーランド
5.賛歌
6.ねむろ
<アンコール>
7.まっくら森の歌
8.ドレミ

(続く)
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平狂う。