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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014感想(5)~感謝(驚)

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO
■2014/08/15-16@石狩湾新港

 山下達郎が終了した途端、一斉に民族大移動の始まり。山下達郎のステージが予定以上に伸びたので、次のサカナクションには確実に間に合わない。しかし、裏技を駆使しヘブンズゲートから再入場してサンステージへ行くと、まだ最初のセッションが始まってさほど経っていないところだったようだ。ものすごい人だったのでPAテントの横くらいに落ち着く。メンバー5人がラップトップを前にクラフトワーク体制でセッションを行う、サカナクションのライヴではおなじみの光景。しかし、今回はそのセッションが長い。曲の導入、とかそういうレベルではなく、このセッションで鳴っている音こそがメインだと言わんばかりに縦横無尽に展開していく。この音にまかせて踊っているだけで楽しい。レーザー光線はステージ全体を走り、夜空へ突き刺さる。野外、ダンス・テクノ、レーザー、とくればRSR常連が思い出すのはそう、かつてのムーンサーカスだ。僕はムーンサーカスで、LOOPA NIGHT(現在のTONE PARK)で踊りまくるのが大好きだった。あの開放的な野外ディスコ空間はまさにRSRにしかない音楽体験だと思っていた。それが、今、サカナクションの手によって蘇っている。ムーンサーカスの何十倍の規模になって。そう思ったのだ。「ミュージック」を挟んで、再びセッションが始まる。今度はメンバーがそれぞれバンド隊形のままだ。打ち込みのビートだけでなく、ドラム、ギター、キーボードなど、生楽器の音が前半と違った形でセッションを展開させていく。素人にはステージ上で何がどう行われているのかわからないのだけど、これ、すごいことやってない?少なくともこんなサカナクションは見たことない、というものだったことは確か。一郎君も一緒に踊ろう!と煽ったり、ものすごく楽しそうだった。前日に彼らが出演したサマソニ前夜のソニックマニアでも同様のセッションが延々繰り広げられていたらしい。セッションの中、「サンプル」のコーラスが織り込まれていき、「バッハ」もその流れでリアレンジされていた。どこからどこまでが1曲なのかもわからない感じだったが、「サンプル」のフレーズが聞こえたまでで30分くらい経過していたと思う。そう考えると、このステージの特殊性が理解できるだろうか。「サカナクションサカナクションの曲を演奏するコンサート」ではなく、「サカナクションが自分たちの曲を材料にダンスフロアを演出する」という時間だった。後半はさすがにヒット曲を通常の流れで演奏して盛り上げたが、前半の試みとそこに生み出された興奮、そして驚きはそれを凌駕していたと思う。簡単に言うと、最高だった。絶賛したい。
 曲少ない、もっと曲やれと今回の彼らのステージを批判する向きもあるようだけど、でも「アイデンティティ」も「ルーキー」もやってるしね。少なくともサカナクションはポップな曲を書くヒットメイカーというバンドではない。山口一郎はデビュー以来一貫して、「アンダーグラウンドなダンスミュージックとポップミュージックをつなぐ存在でありたい」と語ってきた。今回のステージはサカナクションがいよいよその野望を実現するために本気を出してきたのではないか?という気がする。

サカナクション SET LIST
1.(セッション)
2.ミュージック
3.サンプルRemix
4.バッハの旋律を夜に聞いたせいですRemix
5.三ケ月サンセット
6.アイデンティティ
7.ルーキー

http://instagram.com/p/rxJ_16LFwu/
エビ、スタンバイ完了。

 デフガレージへ移動。すでにテント村の仲間も待機していたので合流する。友人に教えてもらって興味津々だった「溺れたエビの検死報告書」というバンド待ち。「全員がエビの被り物をしている」という以外全く前情報がない。この前情報だけで、テント村の一人はまだライヴ見たことがないのにエビの被り物を自作して持ってきたくらいだ。テント内を見渡すと、他にも1名、自作のエビがいた。サウンドチェックはメンバー自らが行っているようだったが、この時はマスクのみでエビは被っていない。ステージが始まると、総勢11名のエビがステージ狭しと登場する。総帥らしきエビが指示を出し、演奏が始まる。ドラム、ギター2名、ベース、パーカッション・木琴、キーボード、ホーン3名、マニピュレーター、という構成だったと思う。総帥は時折アップライトベースを弾きながら、基本はエビの頭がついた杖を振り回しメンバーを指示し客を煽る。ステージの途中、観客の女性を一人ステージに連れてきて十字架にくくりつけたりする。かと思うと、小さいかっぱえびせんの袋をフロアにどんどん投げ込んだりする。ヤバい宗教の儀式に紛れ込んだような妖しい空間だ。音楽的には全編インストルメンタルで、ジャズ・ファンクを中心としたダンスミュージックが基本。時にコミカルな味付けがあったり、ステージ全体の演劇的な要素もあって映画音楽的な展開があったりする。個人的にはちょっと渋さ知らズに近いかもと思った。インパクトでは確実に今年No.1だった。こういうバンドとの出会いがあるからフェスは面白い。大阪を拠点にライヴを行っているらしいので、神戸にいるうちに見に行ってみたい。
http://instagram.com/p/rxQgj4rF-g/
石狩エビ戦争。

 今年のRSRのラストはサカナ→エビ→フィッシュの海鮮3連発。エビがアンコールまでやってくれたので、フィッシュマンズのステージはすでに始まっていた。途中聞こえてきた「Weather Report」が2曲目だったらしい。ボーカルは原田郁子UAが登場し、「Walking in the Rhythm」、「頼りない天使」と続く。二人それぞれボーカルの色は違えど、とても良かった。フィッシュマンズの音になじんでいる。勝井祐二氏のこのツイートが最も雄弁にそれを物語っていると思う。

http://instagram.com/p/rxXgI4LF9Q/
新しい人。新しい朝。 #rsr14

 夜の東側が白んでくる。この時間にフィッシュマンズを聞く幸せと贅沢さを、僕は全身に感じていた。泣きながら「いかれたBaby」を歌い、「新しい人」を聞いてまた涙する。欣ちゃんのボーカルもまるで佐藤伸治が乗り移ったようで、時々聞いていてドキッとした。「1999年に1回目のRSRがあった年に、その年の3月に佐藤君がああいうことになってしまって・・・フィッシュマンズは出ることができなかったんですけど、その後にいろんな人の助けを借りて何度かフェスに出させてもらって、今年こうして最後に佐藤君の曲を演奏できることをうれしく思います」。よく覚えてないけど、欣ちゃんはこんなことを言っていたと思う。この日、間違いなく佐藤伸治はこの場所に来ていたんだと思う。15年間で最も美しかったかもしれないあの朝日は、フィッシュマンズの音楽が呼んだからなのかもしれない、と、そんな風に思ってしまうほどだった。アンコールでデビューアルバム収録の「チャンス」を軽やかに演奏し、今年のライジングサンロックフェスティバルは全てのステージを終えた。

FISHMANS SET LIST
1.ナイトクルージング
2.Weather Report
3.Walking in the Rhythm
4.頼りない天使
5.感謝(驚)
6.いかれたBaby
7.SEASON
8.新しい人
<アンコール>
9.チャンス

http://instagram.com/p/rxYbEErF_J/
RISING SUN!

 U2の「With or Without You」が流れる中テントに戻り、まだ営業している屋台で朝飯を買い、友人たちを話しながらまったりと時を過ごす。夜露で濡れたテントが乾くまで1時間ほど仮眠をした後、撤収作業に入る。今年も終わってしまった、という寂しさとみんなと別れたくない、という切なさが去来する。と同時に、2日間乗り切った、という清々しさもある。見たアクトはどれも良かった。食べ物もおいしかった。好天に恵まれ、最高の朝日が見れた。今年のRSRも最高に楽しかった。2日間、あの場所にいた全ての人に驚きと感謝込めて。ありがとうございました。また来年、会いましょう。
(了)