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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

年間ベスト的なもの~音楽編。

 2014年も今日で終わりなので、今年聞いた音楽でこれというものを書き記しておこうと思います。アルバムとしてのセレクトになります。単純に聞いた順なので、特に順位とかはありません。

■『HIGH HOPES』 / BRUCE SPRINGSTEEN

 前作『レッキング・ボール』から2年という、ボスとしては短めのスパンで届けられた新作。Eストリート・バンドとのツアーを経てのアルバムということもあって、サウンドとしてはバンドの統一感が強い。ここ10年くらいの未発表曲(ライブでは演奏している)もののベストトラック集的な意味合いもある作品だが、どの曲も「アメリカとは何か」「アメリカで生きるとはどういうことか」という問いに真摯に向き合っている。「アメリカン・スキン」は出色の出来。ここにある曲を「日本」に置き換えても自分たちの曲になってしまうということに気付くと、背筋が寒くなる。ボスが一貫して歌っているのは、常に庶民の歌だ。


■『RAY』 / BUMP OF CHICKEN

 ここ10年のバンプのアルバムでは一番聞きこんだと思うし、ライブも本当によかった。アリーナで大掛かりになったことで薄まった感は全くなく、バンプバンプとして行くべき方向に進んでいるのがわかった。このアルバムも、そういうものになってると思います。詳しくは下記で書いた感想を。

You Can Change. - 無事なる男


■『飛ばしていくよ』 / 矢野顕子

飛ばしていくよ

飛ばしていくよ

 ここ最近はライブ盤や弾き語りカバーアルバム、清志郎のカバーアルバムなどが続いていたので、ソロとしてオリジナルの作品は『akiko』(2008)以来となるのかな。ボカロPとして有名なsasakure.UKやAZUMA HITOMI、松本淳一(MATOKKU)、砂原良徳ブンブンサテライツらとのコラボレーションにより製作されている。曲ごとの色合いも違い非常にハイテンションでカラフルなアルバムなのだけど、振り回されている感は全くない。きちんと中心に矢野顕子のピアノと声があり、彼らを従えている感すらある。その中で唯一彼女自身のプロデュースによるオフコースのカバー「YES-YES-YES」が耳を引く。この曲はyanokami時代にもやろうとしたことがあるらしいが、レイ・ハラカミにNGを出されていたのだそう。「このアレンジなら、文句ないでしょ?」と、矢野顕子はこの曲を作ったのだそう。泣ける。


■『レシキ』 / レキシ

レシキ

レシキ

 今年2番目に多く聞いたアルバムだと思います。最高にアホだけど、最高に素晴らしいポップアルバム。音楽で冗談をやるなら、まじめにクオリティの高いものを作らなくてはいけないというのはクレイジーキャッツの時代からの真理ですが、それを21世紀に受け継いでいるのがレキシと言えるのではないでしょうか。

レキシ - 年貢 for you feat. 旗本ひろし、足軽先生 - YouTube


■『小数点花手鑑』 / 小林大吾

小数点花手鑑

小数点花手鑑

 「ヒップホップ以降の吟遊詩人」と謳われる小林大吾の4年ぶり4枚目。作詞・作曲・アレンジ・プロデュース・ジャケットデザインまですべてを自身でやる究極のDIYアーティスト。R&B・ソウル・ジャズを基調とした人間臭いバックトラックに乗せ、自由自在なポエトリーリーディングが躍る。そこで語られるのはブラックユーモアに満ちた現代の寓話。お洒落で、時に鼻持ちならないほどのセンスに満ちた音楽。今回のリリックはこれまでよりもきちんと韻を踏んでヒップホップ的な定型に近づいていて、だからこそ彼の独自性が光る。

宇多丸のタマフル 2014年07月12日 ディスコ954「小林大吾スタジオライブ」ライムスター ...


■『Ghost Stories』 / Coldplay

Ghost Stories

Ghost Stories

 今までのコールドプレイのアルバムに比べると地味な印象はある。たぶん、クリス・マーティンとグウィネス・パルトロウの別離が大きな影を落としていることも理由の一つだろう(アルバムジャケットはハートが割れたようにも見える)。それを内省的なラブソングに落とし込むのではなく、EDMのエレクトロサウンドに乗せて「ア・スカイ・フル・オブ・フォールズ」という今年イチのアンセムに昇華してしまうのがクリス・マーティンという人の業なのでしょう。こういう生き方はしたくないけど、美しい音楽を作る人というのはその分苦しまないといけないのかもしれません。

Coldplay - A Sky Full Of Stars (Official video) - YouTube


■『Songs of Innocence』 / U2

ソングス・オブ・イノセンス-デラックス・エディション

ソングス・オブ・イノセンス-デラックス・エディション

 新しいiPhone発売時に自動的にダウンロードされる、という発売方法が賛否を呼び、その騒動でアルバムの本質がぼやけてしまった感はあるが、そのまま通り過ぎてしまうのはこのアルバムにとっても聞き手にとっても不幸なことだと思う。少なくとも僕にとっては『How to dismantle an atomic bomb?』(2004)以来の傑作であり、21世紀以降のU2を語る上でも屈指のアルバムだと思っている。タイトル通り、彼らの少年時代、音楽を始める初期衝動に思いを馳せ、無垢な時代を思い返すようなアルバムになっている。曲がとにかくいいし、サウンドも若々しさに満ちたものになり、ボノのボーカルもいつになくはじけている感じがする。

U2 - The Miracle (Of Joey Ramone) - YouTube


■『THE PIER』 / くるり

THE PIER (通常盤)

THE PIER (通常盤)

 今年個人的に最も「事件」だったのはこのアルバムかもしれない。獰猛で、理解不能で、聞くたびに違う音と意味が耳と頭に入ってくるような感覚。中毒性があり、それでいて(というか、だからこそ)最高にポップ。正直、ここ数年のメンバーが入れ替わりするようになって以降のくるりは何がやりたいのかわからなかった。正直今でもわからないのだけど、わからないままこんな傑作を作ってしまったという感じ。聞くものに驚きを与え、意識と視点を広げてくれると音楽いうのは、今の時代、僕のような年齢になってからはなかなか簡単に得られない。そういう意味で今年を象徴する重要なアルバムだと思います。

くるり-Liberty&Gravity / Quruli-Liberty&Gravity - YouTube


■『Syro』 / Aphex Twin

 まさか2014年になってエイフェックス・ツインの新作が聞けるとは思わなかったけど、これが実に気持ち良く自分の生活の一部になってしまったことに二重の驚きを覚えたものです。BPMは速すぎず、音の要素もカラフルでどこかユーモアがあり、小難しくノイジーであるわけでもなく、気持ちよく耳になじむ。今年秋、ジョギング時のBGMとして非常に重宝しました。聞きながら走っていると、トランス感覚というか羽が生えたような気になってくる。危ない意味じゃなくて。


■『日出処』 / 椎名林檎

 ライブも素晴らしかったし、何よりもこのアルバムが今の椎名林檎の持つ多様性と勢いを如実に表現していると思う。これを聞くと東京事変では表現しきれなかった音楽が確実に彼女の中にあったことがわかる。歌詞としては30代半ばで子を持つ母としての視点がより強くなり、自分の人生、来し方行く末に思いはせるものが増えている気がする。それが詞的にも音楽的にも質の高いものになっているし、最終的に非常にポップで開かれた音楽になっている。昭和歌謡からR&B、ジャズ、ビッグバンドやボードヴィルまで、多種多様な音楽をまとめ上げる個性は圧巻の一言。

椎名林檎 - 『ありきたりな女』 - YouTube

以上、オリジナル作品の部。以下は、コンピレーションとして今年最も聞いた2品を。

■Guardians of the Galaxy Original Soundtrack

Guardians of the Galaxy

Guardians of the Galaxy

 文句なく、今年見た映画の中でNo.1だった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のサウンドトラック。幼少時に地球から連れ去られた主人公が、唯一持っていたのが母親の作ってくれたこのヒット曲コンピレーション。大人になった今も彼は初代ウォークマン(弁当箱みたいなでかいやつ)でこのテープを聞きながら宇宙の賞金稼ぎをやっている。という設定にまずしびれるし、選曲も誰もが知っている大ヒット曲じゃない(むしろ一発屋的な)ところがにくい。正直、半分以上は初めて聞いた曲ばかり。タランティーノがかつてやっていたような「オレ、こんな曲知ってるぜ。こういう場面でこんな曲かけるの、クールだろ?」という感じではなく、きちんと物語として意味がある場面で意味のある曲を使っているところが真の意味で「サウンドトラック」的であり、聞いていて映画のシーンが思い浮かぶのだ。終盤でかかる「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」は感動的。

12. Marvin Gaye & Tammi Terrell - Ain't No ...


宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-

 13組のアーティストが宇多田ヒカルの楽曲をカバーするトリビュート盤。タイトルにあるように、それぞれの「解釈」が非常に楽しめる。興味深いのは、その解釈を通じて「宇多田ヒカル」というアーティストが、その楽曲が彼らにとってどういう存在であったのか、それ以上に、彼らがどういうスタンスで音楽に向かっているのか、ということが透けて見えるということだった。単に宇多田ヒカルのカバーをやりますということではなく、彼らにとっては自分の顔を鏡で見ながらレコーディングするような作業だったのではないだろうか。逆に言えば、そのくらい圧倒的に優れた楽曲だということなのだと思う。そんな中、自分たちの世界に宇多田ヒカルの曲を引きずり込むようなクオリティを見せた冒頭3組がすごい。

 最後に、今年のベストトラック(楽曲)を。

■愛はおしゃれじゃない / 岡村靖幸w小出祐介

愛はおしゃれじゃない

愛はおしゃれじゃない

 岡村ちゃんと、BaseBallBear小出祐介によるシングル。表題曲は歌詞を小出祐介が書き、作曲・アレンジが岡村ちゃん。この歌詞がとにかく素晴らしく、誰もが想像する「岡村ちゃん」的な世界観を見事に再現している。小出祐介は世代的にはリアルタイマーではなく、後追いで岡村ちゃんを聞いた年齢だと思うのだけど、ここまでリアルに再現できるのはすごいと思う。マキタスポーツの「誰々っぽい作曲」テクニックのように、「誰々っぽい作詩」みたいなのがあるとしたら、まさにそれだろう。岡村ちゃんが寡作になりああいうことになってしまったのは、音楽ではなく歌詞に行き詰ったのが大きいのだと思っている。復帰後も、今作に限らずNona Reeves西寺郷太氏と詞を共作したりしている。その意味でも小出祐介の歌詞はベストサポートだったと思う。岡村ちゃん大ファンを公言する久保ミツロウによるジャケットワークも含め、岡村ちゃん愛にあふれたシングルであり、楽曲も見事にその愛に応える名曲となっている。


岡村靖幸 w 小出祐介「愛はおしゃれじゃない」 - YouTube

 以上、私的ベスト音楽編でした。2015年もいい音楽にたくさん出会えますよう。それでは皆様良いお年を。相変わらず更新頻度は低いと思いますが、やめはしないと思うので。ヒマな時に思い出していただければ幸いです。