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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

You Can Change.

 前作『COSMONAUT』から約3年ぶりの新作。アルバムの間隔は相変わらずだが、この間、彼らにしてはこれまでにないペースでシングルを量産し続けてきた。結果、このアルバムには純粋な新曲は少なくなってしまっているが、この創作ペースの加速こそが今作に大きな意味を与えているのではないかと思う。
 それは何だろうということを自分なりに考えてみると、それは「変わること」ではないかと思う。このアルバムでは繰り返し「変わる」あるいはそれに類する意味のことが歌われている。変化を恐れず前に進むこと。これが今のバンプを動かすテーマの一つなのではないか。変化には、内からにしろ外からにしろ、動機が必要だ。自分から変化を欲することもあれば、変わらざるを得ないこともある。それは過去の自分の否定かというと、そうではない。
 藤原基央は変化し前に進むことと同時に、変わる前の自分への想いと変わることへの葛藤をもきちんと描き出す。重要なのは変化した結果ではなく、なぜ、どうやって変わったかというその道程だ。ブックレットに描かれたサイドストーリーでも「記憶」というのが一つのキーワードになっている。変わっても、かつての自分たちの記憶は残っている。それを踏まえたうえで、前に進む。結果としてそれが「ray(光)=希望」として描かれていることが、僕はとてもいいと思う。
 創作ペースもそうだが、バンプというバンドは昔とは違う。かつては絶対に出さないといっていたベスト盤も出したし、初音ミクとのコラボに驚いた人は多かっただろう。彼らの言葉を借りれば、それらは「どうやってもっと自分たちの音楽を届けられるか」を考えた結果だという。自分の書いた曲がどう届くかということは、前作でも「angel fall」や「イノセント」で歌われたテーマだ。本作にも、「white note」で同様のテーマが歌われている。そういう部分に真摯に向き合った結果、彼らは変わったのだ。「昔はよかった」「やっぱ『LIVING DEAD』でしょ」なんていうのは簡単だ。しかし、そうしたオールドファンの言葉は、山下達郎が言うところの「自分史の反映としての芸事の評価」に他ならない。
 バンプの4人も気づけば30代半ば。この年齢になると、いやでも自分の人生やこれからの人生、残り時間について考えることが多くなる。彼らの変化は真摯に音楽とファンに向き合った結果であり、彼らの人間的成長の結果でもあると思う。丁寧に言葉と音を紡いでいる半面、前作以降どんどんロックバンドとしての快感を覚えるようなスピード感のあるリフ主体の曲が少なくなっている。スタジアム向けというか、きれいな音に終始している印象。不満があるのはその部分。ただ、これもまたオールドファンの戯言と聞き流していただければ、と思う。