無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ザッツ・エンターテインメント。

BUMP OF CHICKEN TOUR「WILLPOLIS 2014」
■2014/05/31@北海道総合体育センターきたえーる
 ザイロバンドというリストバンドが入場時に渡された。これはライブ時に信号を受信することで様々なパターンで光が点灯・点滅するというもの。ソチ五輪の開閉会式で客席が光っていたのと同じ仕掛けによるものだろう。バンドは何色かあったのだけど、僕に渡されたのはピンクだった。後ろの女の子が白と交換してくれというので交換してあげた。
 ザイロバンドの説明やライブの注意事項などのアナウンスの後ろで、ずっとラヴェルボレロがSEとして流れている。単調なリズムの中、だんだんと気持ちが高揚してくるのがわかる。いよいよ開演時間という中で徐々にSEの音量が増していき、会場のボルテージも上がってくる。音量MAXとなりいよいよ!というところでアルバム『RAY』の1曲目「WILL」と共にスクリーンにフルCGのアニメーションが流れる。アルバム『RAY』のブックレットにも描かれていた物語だ。最近の彼らのライブでは何度かあるパターンだけど、映像のクオリティがいちいち高い。結構お金かかっているんじゃないだろうか。そして、4人がステージに登場。大歓声の中、升のドラムから演奏が始まる。「Stage of the Ground」。実質の1曲目で、演奏だけでも十分に盛り上がる曲なのだけど、これでもかとアリーナ的な演出を繰り出してくる。ここから「firefly」、「虹を待つ人」と続く序盤は今のバンプ・オブ・チキンのライブがどういうことになっているのか、いやでも伝わるほどの過剰さだった。一斉に光りだすザイロバンド、天井から舞い落ちる金銀のテープ、おそらくはザイロバンドと同じ仕組みで光る巨大な風船、アリーナを埋め尽くすほどの紙吹雪。10年前には考えられなかったようなど派手な演出のオンパレードだ。それが単なる賑やかしの演出なのではなく、音楽の力を増幅させる効果的なものになっていたと思う。満員のアリーナを前に笑顔で演奏する4人を見て、名実ともにアリーナバンドになったのだなあと実感。演奏が不安定でこわばった表情をしていた10数年前を思うと、目が細くなる。
 サブステージでの親密なロックンロールパフォーマンスもアリーナライブではもはや定番。ドラムなんかはPAじゃなく、直で音が聞こえたりするので楽しい。この距離で彼らの演奏が楽しめるのはアリーナバンドとなった今の彼らでは貴重な機会。「ray」からスタートの後半は再び、キラキラとした音の粒が会場に降り注ぐような陽性の時間。「white note」での音ゲー的なスクリーン演出も楽しい。
 バンプ・オブ・チキンは多くの人に自分たちの音楽を届けるために、リリースの仕方やライブのシステムを変えていった。それまでは頑なに拒んでいたベスト盤もリリースした。ソフト(楽曲)やハード(バンド)を変えることなく、インフラを変えた、という感じだろうか。逆のアプローチをして失敗するケースが多いと思うのだけど、彼らは賢明だと思う。バンドが変わってしまっていてはこのツアーのように音楽がキラキラと鳴ることはなかっただろう。今の彼らを昔と変わってしまったと嘆く声もあるのかもしれない。それでも、本編ラストに演奏された「ガラスのブルース」は、今の彼らがきちんと10代の頃から地続きであることを示していたと思う。今30代以上の人は考えてみてほしい。10代の頃の自分と今の自分を比べて、考えが変わったこととか、あるでしょう。全く無いのだとしたらそれは成長していないということだ。そういうミュージシャンのライブを見て感動できるとは僕は思えない。
 バンプの曲は、一人の部屋で籠って聞くだけにとどまらず、今は解放された空間で鳴るからこそ意味があるものにもなった。きちんとそれをエンターテインメントとして完成させた今のライヴは、単純に楽しかったし、とても開かれていて感動的なものだった。

■SET LIST
1.WILL(SE)
2.Stage of the Ground
3.firefly
4.虹を待つ人
5.サザンクロス
6.ラストワン
7.花の名
8.smile
9.R.I.P
10.銀河鉄道
11.歩く幽霊
12.ray
13.トーチ
14.white note
15.天体観測
16.ガラスのブルース
<アンコール1>
17.リトルブレイバー
18.メーデー
<アンコール2>
19.真っ赤な空を見ただろうか