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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

人生の定点観測~『6才のボクが、大人になるまで。』感想。

■6才のボクが、大人になるまで。 BOYHOOD
■監督:リチャード・リンクレイター 出演:エラー・コルトレーン、パトリシア・アークレット、イーサン・ホーク

 リチャード・リンクレイター監督が12年かけて、子役の子が6歳から18歳になるまでを実際に撮影し続けた異例の映画。こんな突飛な企画が無事に作品として完成したことが驚きだし、賞賛したい。実際に12年かけて撮影を続けたと言ってもドキュメンタリーではなく、きちんと脚本のある劇映画。1年に1回、子供の夏休み期間中に撮影をしたという。その脚本はキャストとディスカッションする中、各々1年間にあった出来事を反映する形で練られていったようだ。監督の「ビフォア三部作」でも同様のやり方が取られていたが、そちらに主演しているイーサン・ホークが本作に父親役で出演している。父親のキャラクターや離婚についてなどは彼自身の経験が反映されている部分もあると思う。
 主人公メイソン君を演じたエラー・コルトレーンが段々声変わりし、背も高くなり顔も精悍になっていく様は、劇映画でありながらやはりドキュメンタリーとしての側面を見るものに感じさせる。彼が言うには撮影が開始された頃の記憶はおぼろげなのだそうだ。子役に限らず、メインキャストが(死亡あるいは引退などで)離脱せずに12年間撮影ができたことも奇跡と言っていいだろう。(主人公の姉役で出演した監督の実娘は途中で興味を失ったこともあるらしいが)
 母親役のパトリシア・アークエットはアカデミー助演女優賞も納得の演技はもとより、30代半ばから40代後半という、女性にとってはある意味厳しい12年間を残酷なまでに見続けられる仕事だったと言える。受賞はその女優魂に対するご褒美と言えるかも。同じようなことは「ビフォア三部作」のジュリー・デルピーにも言える。彼女は20代前半のピチピチした美少女から40代前半までを演じているが、隠しきれない年齢の残酷さはどうしても感じてしまう。ただ、ジュリー・デルピーは別の作品なのに対し、パトリシア・アークエットは本作一本の中で12年間の変化を見られてしまう。やはり勇気のいる仕事だったのでは、と思う。
 母親の離婚や再婚など、それなりに事件は起こるが、殺人事件に巻き込まれるとかそういう意味でドラマチックなことは何も起こらない。でも、3時間を感じさせない時間の積み重ね方は見事。ラストでメイソン君が言うように、「人生とは瞬間の積み重ね」なのだ。ある少年が青年になるまでを定点観測したこの映画は、どんな人にも同じような時間が流れていたのだということを強く再認識させる。平凡な人生、万歳。

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