無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO感想(4)

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO
■2015/08/15@石狩湾新港

https://instagram.com/p/6ZcIAhLF-n/
これから蝋人形にされるとは思えない空。 #RSR15

 ceroの素晴らしいライブの余韻もそこそこにアーステントへと向かう。とてつもない数の人がアーステントの外まで溢れている。通路がふさがれてしまうのでロープで線を引いて整理するほどだった。5年前の再結成の時はサンステージだったし、悪魔復活への期待度の高さからするとアーステントはやや狭かったかもしれない。人波をかき分け、なんとか中ほどの位置を確保した。
 時間になり、メンバー登場。悪魔ミサ曲「創世記」が演奏される。その中、下僕たちに引かれた棺桶の中からデーモン閣下が登場。「聖飢魔II、復活!」と高らかに宣言する。そして「FIRE AFTER FIRE」に突入。今回の復活でもエース清水は不参加で、ジェイル大橋が参加している。続いての「蝋人形の館」で一気に盛り上がりはピーク。惜しげもなく代表曲を繰り出すあたり、フェスでの選曲というものがよくわかっている。続いて、ステージ上にリンゴが登場。ということは、そう、青森県でリンゴを何と呼ぶか。このイニシエーションの時間。老若男女構わず、人間界での日本において非常に恥ずかしい単語を連呼させられるのだ。彼らのミサではおなじみのこのやり取り。なんという恐ろしき悪魔の所業だろうか。そこから「アダムの林檎」になだれ込む。閣下はじめメンバーがかじったリンゴが次々と観客に投げ込まれる。拾った客も一口かじり、また後ろへと投げ回す。次々と悪魔の洗礼を受けていく観客。聖飢魔II完全復活を確信させる、見事なステージングである。この後のMCでは閣下以外のメンバーが事故により札幌入りが遅れた話をし、爆笑の渦に巻き込む。改めてデーモン閣下という人の頭の良さとトーク力に脱帽する。爆笑MCと完璧な演奏力、そして30年を生き抜いた楽曲群。様式美と言ってしまえばそれまでだが、ベテランらしい計算されつくしたエンターテインメントがここにはある。僕のようなリアルタイマーから一見さんまでが同居するフェスにおいても等しく全員を満足させる圧巻のステージだった。

聖飢魔II
1.創世記
2.FIRE AFTER FIRE
3.蝋人形の館
4.アダムの林檎
5.1999 SECRET OBJECT
6.BRAND NEW SONG
7.EL・DO・RA・DO
8.JACK THE RIPPER

 さて。ある意味、今年のライジングで最も注目していたアクト、安全地帯である。「はたして玉置浩二は現れるのか?」「青田典子は当然セットで来るよな」など、ワイドショー的な揶揄を冗談半分で言っていたものの、やはり80年代、自分の中高生時代には重要なバンドだったことは事実。当時の代表曲を網羅するようなセットリストであれば、伝説的なステージになるだろうと期待もしていた。スタンディングエリアほぼ最前、頭上をカメラクレーンが通るくらいの位置で待っていた僕は、ステージに違和感を持っていた。中央付近に、DJ卓のようなものがあるのだ。もちろん、僕の知っている安全地帯にDJメンバーはいない。もしかして彼らも今時のバンドのように同期を使っているのかもしれない。そのマニュピレーター用の卓かな、と不安を掻き消そうとしていた。定刻のSEが鳴り、期待に溢れた観衆が歓声と拍手を送る。バンドの登場を今か今かと待ちわびる。しかし。ステージ上に登場したのは一人のDJであった。当然、見たことの無い人物だ。繰り返すが、僕の知っている安全地帯にDJはいない。大観衆の皆が一つの言葉を思い浮かべただろう。「誰だ」そのDJは、観衆の心情を具現化したような不穏なサウンドとビートを鳴らし始める。そのビートの中に、安全地帯の曲が断片的に姿を現し始める。「ワインレッドの心」「碧い瞳のエリス」「プルシアンブルーの肖像」…昨夜のレベッカのEDMミックスを少し思い出したりもしたが、ここまでは新しい趣向としてこういう盛り上げもまあ、あるのかなくらいに思っていた。いや、思いたかった。
 DJは回し続ける。5分、10分…時間が過ぎるにつれ、観客に不安がよぎる。そして単純に飽きてきた。いつまで続くんだ。もしかしてこのまま終わるんじゃないだろうな…?スタンディングエリアがざわつき始める。ステージ上に変化が現れた。2人の女性ダンサーが登場したのだ。「リズムネイション」の頃のジャネット・ジャクソンのような出で立ちで、2人は踊り始める。ざわつきは止まらない。「もしかしてどちらかが青田典子なんじゃないのか」そんな疑問を持ちながら改めてDJを見ると、彼の着るTシャツには「C.C.Girls」と書かれている。もう、嫌な予感しかなかった。いつしか、時間は15分を過ぎようとしていた。ようやくバンドが登場。ざわついていた観衆も、少し安心して歓声を上げる。生のドラムが響き、ギターのカッティングが鳴る。だいぶ長い演奏の後、ついに玉置浩二が登場。大歓声が沸き起こる。しかし、長い白髪を後ろで結んだその姿は中国映画に出てくる仙人老師か、スターウォーズのオビ・ワンのようだった。まあそれはいい。とにかくやっとライブが始まる。演奏されたのは「じれったい」。皆が思っただろう。「こっちの台詞だよ」と。続いて「悲しみにさよなら」が演奏される。玉置浩二はちゃんと歌っている。いいじゃないか。このまま代表曲を連発してくれよ、と思った。しかし、アウトロで玉置浩二はメンバー紹介をし始めた。演奏は大団円の雰囲気を醸し出している。ドラム、ギター、ベースに続いてダンサーが紹介される「今日復活しました、C.C.ガールズ青田典子藤原理恵!」やっぱりそうだったのか。いやそれよりもちょっと待て。まだ2曲だ。曲が終わる。メンバーは楽器を置く。マジか。ステージ上の彼らはやり切ったような満足そうな表情で互いの健闘を湛えあう。ステージ中央で円陣を組み、手を振って、退場した。呆気にとられる大観衆。35分、2曲。何が何だかわからないうちに終わってしまった。
 とりあえず拍手をしていると、玉置浩二が単独で再登場。ステージを降り、スタンディングエリア前方に設置されたミニステージに立つ。ここぞとばかりに盛り上がる観衆。アコギを手にした玉置浩二はアカペラで歌いだす。「田園」だ。圧倒的な歌唱力。歌い終わると、大歓声。多分、玉置浩二はこの時点で帰ろうとしていたと思う。が、歓声がそれを許さない。彼は「夏の終わりのハーモニー」を歌い始めた。ワンコーラス歌い終わり、大歓声の中、彼は「後は頼んだよ!」と言いステージを降りた。最初にDJが登場してから40分、持ち時間には10分足りていない。これが、僕の見た2015年夏・安全地帯事件の全てだ。ある意味、確かに伝説と言えるステージだったのかもしれない。少なくとも第1回目からライジングサンに参加して、最大の「事件」だったのは間違いない。当初冗談半分で言っていた予想を超えていた。僕はもう笑うしかなかった。

■安全地帯
DJプレイ
1.じれったい
2.悲しみにさよなら
en1.田園(弾き語り)
en2.夏の終わりのハーモニー(アカペラ)

https://instagram.com/p/6ZwBxnLF8U/
ナングリーンカレーとタンドリーチキン。

 安全地帯のショックは大きかった。この後、友人たちと落ち合って夕食をとったのだけど、安全地帯の話しかしていなかった。それほどのインパクトだったのは確かだ。しかし、冷静に考えればとんでもない話だ。バンドは実質2曲しか演奏していないのだから。WESSはどういうオファーをして、バンド側はどう応えたのだろう。そしてDJワンツーって誰だ。謎しかない。「後は頼んだ」と言われてもどうすればいいんだ、という空気ではあったが、長めのインターバルと花火によってサンステージの空気がリセットされたのは救いだった。
 こんなに気を取り直したことはないというくらい気を取り直してPerfume。ライジングサンには2012年以来3年ぶりとなる。ステージ上には楽器もDJ卓も(笑)なく、3人のみ。しかし、何と堂々たるステージか。最新曲から懐かしい曲まで、縦横無尽に踊りまくる。PTAコーナーではPA裏まで埋め尽くした大観衆を相手に見事なやり取りを見せる。特にこの日のステージではあ~ちゃんの奮闘(と暴走)が目立った。10年選手の風格すら感じさせる見事なステージだった。彼女らにすれば普通のことかもしれないけど、前のステージがアレだっただけに余計に全うで素晴らしいものに見えた。個人的に「エレクトロ・ワールド」を聞くと条件反射的に涙が出てくるので、フェスで聞けたのはとても嬉しかった。

Perfume
1.Pick Me Up
2.Magic of Love
3.Spending All My Time
4.ナチュラルに恋して
5.パーフェクトスター・パーフェクトスタイル
6.マカロニ
7.FAKE IT
8.エレクトロ・ワールド
9.チョコレートディスコ

花火。 #RSR15
(続く)