無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

2015年・私的ベスト10~映画編~

 2015年はできるだけ劇場に映画を見に行こう、と思ってました。50本を目標にしてましたが、結局45本程度。もう少しでした。DVDやBS・CSも含めれば120本くらい。そこそこがんばれた感じです。今年劇場で見たものの中からベスト10を選んでみます。

■10位:クリード チャンプを継ぐ男
http://wwws.warnerbros.co.jp/creed/index.html

 監督がスタローンに「アポロの息子を主人公にロッキーの続編を作りたい」と直談判して実現したこの映画。脚本も書いた監督はまだ長編を1本しか撮ったことのない若手です。その彼にチャンスを与えたスタローン。それは、最初のロッキーを作るとき、スタローンが彼と同様に無名の若者だったからに他ならないのです。物語は偉大な父の背中を追いかけつつもその名前に立ち向かう勇気を持てない主人公を、父の親友であったロッキーがトレーナーとして支える形で進みます。この主人公とロッキーの疑似親子関係が物語の軸。ロッキーも寄る年波には勝てず、過酷な運命が彼を襲うのです。チャンピオンからのタイトルマッチへの指名に「2人で戦おう」と彼らは運命に立ち向かうのです。物語の骨子自体は最初の「ロッキー」とほぼ同じ。しかしそれがわかっていたとしてもやはり感動的です。クライマックスであの音楽が流れるタイミングも完璧。ラストは号泣でした。スタローンの演技はキャリア最高と言えるもので、もしかしたらアカデミー助演男優賞ノミネートもあるかもしれません。「ロッキー」地上波放送での荻昌弘氏の名解説は、この映画にも当てはまります。「これは、人生するか・しないかの分かれ道で「する」を選んだ勇気ある人々の物語なのです」

荻昌弘・映画解説 「ロッキー」


■9位:バクマン
映画『バクマン。』公式サイト

 原作実写映画化作品としては、自分の中で『ピンポン』を超えたかもしれません。漫画を描くという作業を視覚的に盛り上げるアクションシーンとして昇華したのも良かったです。個人的に、原作ではサイコーの漫画へのモチベーションや行動原理が小豆との恋愛でしかないのが非常に気に入らなく、それに比べれば純粋に漫画への情熱で描いている新妻エイジの方がよほど主人公らしいと思っていました。この映画版では最初の動機は原作通りですが、バッサリとその後の展開で切ってしまった要素があるのです。それにより主人公が主人公として輝きだしている。クライマックスの展開もいかにもジャンプ的な友情・努力・勝利に結びついていました。サイコーの家族要素も叔父の漫画家・川口たろうのみで、父母や祖父などは出てこない。この辺の割り切り方、改変は映画としてタイトになり話が煩雑にならず正解だったと思います。 何より全編漫画への愛とリスペクトが溢れていたのが素晴らしい。エンドクレジットは思わず涙が出ましたよ。間違いなく、今年見た中ではベスト・エンドクレジット賞です。


■8位:ミッション:インポッシブル/ローグネイション
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』公式サイト


 トム・クルーズ主演シリーズの5作目。前作で顕著だったチーム感は継続し、敵か味方かわからない女スパイの存在がいいアクセントになって物語を推進します。予告編でも流れまくってた、飛行機にしがみつく壮絶なシーン(あれ、アバンタイトルなんですよね)をはじめとするスリリングなアクションはジェットコースター的に押し寄せてきてこれでもかと盛り上げる。ラストの大逆転劇はシリーズ最高と言ってもいい快感で、これぞ「スパイ大作戦」というカタルシスを与えてくれます。トム・クルーズが堂々たる主役なのは間違いないですが、メンバーそれぞれが持ち味を発揮して敵を追い詰める、というチームプレイが醍醐味です。単純に見て楽しめる娯楽作として、非常に正しい映画だと思います。前作、今作と来て、いよいよこのシリーズこれ以上の作品は難しいんじゃないか、というレベルに達した気がします。今年は『キングスマン』も面白かったし、スパイものが盛り上がってましたね。


■7位:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

 かつてヒーロー映画で一世を風靡するも世間から忘れられた俳優がブロードウェイの舞台で復活しようとする。その男をティム・バートン版「バットマン」で主役を演じたマイケル・キートンが演じるというところにメタ・ドキュメンタリー感があります。若い時は自分が天才で何でもできると勘違いする時期が多かれ少なかれ誰にでもあるでしょう。そうではないと気がついてなお、老いてから再び羽ばたけるのか。この映画はそうした世の中年全員に対する応援映画だと思います。マイケル・キートンが劇中で使う超能力は一見物語に不要にも思えるが、若かりし頃に抱いていた無敵感や自信のメタファーではないでしょうか。全編ワンカットで撮影されたかのような映像と編集は圧巻の一語。撮影監督は『ゼロ・グラビティ』でもアカデミー受賞したエマニュエル・ルベツキ。この映画も一見地味ですがどうやって撮られたのかわからないほどよくできていると思います。


■6位:セッション
映画『セッション』公式サイト

 ジャズを題材に音楽大学を舞台としているけど、その点でリアルを描き出そうという作劇では全くなかったと思います。あくまでも舞台装置、ツールであって、実際はこんな鬼教官はいないとか、授業内容がおかしいとか、それを理由に評価しようとするのがそもそもおかしいという気がします。ラストの演奏シーンのカタルシスは確かに凄まじいものがありました。ただ、個人的には満点評価とはいかず。それは途中の細かい描写で説明不足や回収されないシーンなど、脚本上の瑕疵が散見されたことによります。ただ、それを加味してもパワフルで圧倒されるエネルギー溢れた映画でした。あと、僕は大学のジャズ教育については知りませんが、少なくともアマチュアの音楽指導の場においては多かれ少なかれ「恐怖」で統率しようとする指導者はいると思います。この映画におけるフレッチャー教官のような極端な例は少ないでしょうが、映画として誇張して描いたという意味では全然アリなレベルだと思います。なので、その点では荒唐無稽とは全く思いませんでした。ジャンルは違えど、アマチュアで音楽やってる人は一度は見ることをオススメします。


■5位:シェフ 三ツ星フードトラック始めました
#映画シェフ 三ツ星フードトラック始めました | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

 一人の男と彼の人生、親子関係、夫婦関係、それらの再生の物語です。『アイアンマン』『アベンジャーズ』で監督や製作を努めたジョン・ファブローが監督・製作・脚本・主演でイチから作ったインディー映画。一流レストランのシェフが諸々あってフードトラックの屋台から再出発、というのは超大作映画からインディーへ、というジョン・ファブロー自身の道程にも重なります。全てを捨てて裸一貫での再出発。劇中のキャラに役者自身が投影されています。あと何よりも、料理シーンとその数々の料理の美味そうなこと。いつ、誰が、どこで、どんなシチュエーションで食事をするか。フード理論的にも非常にオイシい作品ではないでしょうか。ラテン系で陽気な音楽も映画のいいスパイスになっている。スカーレット・ヨハンソンやロバート・ダウニーJr.の出演も含めて、監督の人柄が現れる心温まる一品でした。見ていてすごくポジティブな気持ちになれます。大好きです。


■4位:インサイド・ヘッド
インサイド・ヘッド|映画/ブルーレイ・デジタル配信|ディズニー|Disney.jp |

 ピクサー恐るべし。傑作でした。ディズニーでは『ベイマックス』もアクションとしてよくできていましたが、これは娯楽作な上に、内容が深い。これは子供よりも大人、特に年頃の子どもを持つ親が見るべき映画だと思います。良かったのは、哀しい思い出も美しいものだって事、記憶や思い出は楽しいとか哀しいとか単純に分類されるのではなくそれぞれがグラデーションなんだという事、大人になるにつれて失うものもあるけど、失うこと自体はマイナスではない事、がキチンと描かれてた所。それをいちいち台詞じゃなくビジュアルでわかるように見せるんですよね。ヨロコビがカナシミの存在意義を知ることで人は大人になるという。自分、そうだ、こんな経験あった!と思い返すことも見ていて多々ありました。向こうのアニメは生身の役者が演じてないだけで、演出やカメラワークも普通の映画と同じように撮るので、本当にキャラクターに命が吹き込まれているように見えます。頭の中の感情をキャラクター化するという突飛なアイディアがこれほど感動的な娯楽映画になるとは、驚きです。唯一残念だったのは上映最初にドリカムの日本版主題歌?がフルコーラスで流れた事です。いらねえよ。


■3位:スター・ウォーズ/フォースの覚醒
スター・ウォーズ/フォースの覚醒|映画|スター・ウォーズ|STAR WARS|

 今年最大の話題作なのは間違いないし、事前の期待値も相当だった割に、批判は少ないと思います。実際、実行不可能とすら思える仕事をよくぞJ.J.エイブラムスはやり遂げたと思います。J.J.エイブラムスは相当ep4を意識して撮ったと思われます。展開も、絵の構図もかなり近い。カンティーナ酒場的なシーンもあったし。ここからまた三部作が始まる、というリブート感はかなり強くあったのではないでしょうか。ep4オマージュというか、同シリーズじゃなきゃただのパクリみたいなシーンや台詞も多々ありますが、その辺はJ.J.の映画オタク性がなせる部分だったのかもなあ、と。個人的にはハン・ソロのあの台詞が聞けたのでよかったです。BB-8は超かわいかった。あのかわいさは異常です。R2-D2と並んだ時の「弟よ」「兄ちゃん!」感がたまらんのですよ。そして、レイ役のデイジー・リドリーも良かった。健康的で、アップに耐えるいい面構え。強さとしなやかさを兼ね備えたヒロインになりそうな予感がします。僕は公開初日に見に行きましたが、明日からはもう「エピソード7を皆知ってしまった世界」な訳で、その分岐点という最高のお祭りと興奮を体験できたのは映画好き冥利に尽きます。予告編なしでルーカスフィルムのロゴから一気にあの画面、あの音楽。キターーー!感ハンパなし。開演、終演時に自然と拍手が沸き起こるなんて、なかなか映画館で体験できません。次のep8はここまでのお祭りにはならないでしょうし、この体験も含めて、最高だったのです。


■2位:6才のボクが、大人になるまで。
6才のボクが、大人になるまで。 - Wikipedia

 純粋には昨年公開の映画なのですが、劇場で見たのが今年だったので。素晴らしかったです。ブログにも記事書きました。
magro.hatenablog.com

 12年かけて、子役の子が6歳から18歳になるまでを実際に撮影し続けた異例の映画ですが、こんな突飛な企画が無事に作品として完成したことが驚きだし、賞賛したいです。母親役のパトリシア・アークエットはアカデミー助演女優賞も納得の演技はもとより、30代半ばから40代後半という、女性にとってはある意味厳しい12年間を残酷なまでに見続けられる仕事だったと言えます。受賞はその女優魂に対するご褒美と言えるかも。同じようなことは「ビフォア三部作」のジュリー・デルピーにも言えます。彼女は20代前半のピチピチした美少女から40代前半までを演じているが、隠しきれない年齢の残酷さはどうしても感じてしまう。ただ、ジュリー・デルピーは別の作品なのに対し、パトリシア・アークエットは本作一本の中で12年間の変化を見られてしまうわけで。やはり勇気のいる仕事だったのでは、と思います。母親の離婚や再婚など、それなりに事件は起こりますが、殺人事件に巻き込まれるとかそういう意味でドラマチックなことは何も起こらない。でも、3時間を感じさせない時間の積み重ね方は見事としか言いようがありません。ラストでメイソン君が言うように、「人生とは瞬間の積み重ね」なのだ。ある少年が青年になるまでを定点観測したこの映画は、どんな人にも同じような時間が流れていたのだということを強く再認識させます。この映画は多くの人が過ごすであろう、平凡な人生への賛歌なのです。


■1位:マッド・マックス/怒りのデス・ロード

10.21 ブルーレイ&DVD発売 レンタル同時開始 9.23[先行]デジタル セル配信 映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式サイト

 アクションの見せ方、1シーン1シーンの完成度、演出のキレ、どれをとっても五億点です。歴史的意義とかはおいといても、単純に作品としてみれば『2』は超えたんじゃないかと思います。冒頭30分で作品の世界観がきっちり提示されて、余計なセリフがほとんどないのに映像でそれがきちんと伝わる。この手際の良さ。ジョージ・ミラー御年70歳、キレてます。恐れ入りました。物語はシンプル極まりなく、「行って、帰ってくるだけ」の映画。その中に登場人物それぞれの人生や物語が透けて見える。それも台詞で説明するのではなく、表情や、映像や、仕草によってです。劇中で最もそうした個人のドラマが薄いのが実は主人公のマックスという。それがこの映画におけるマックスの神話性というものを強めている気がします。このやり方が成立するなら、今後も「マッドマックス」シリーズを作れるというフォーマットが完成したと言えるかもしれません。アクションは壮絶の一言。ほぼCGなしでこのカーアクションの連続は、今の時代あり得ないほどのレベルです。2015年の今こんな映画ができてしまったら、今後のアクション映画の作り方が変わってしまうのではという気すらします。だって、この凄まじい映画が基準になってしまうのですから。文句なく今年の1位だし、後から振り返っても2015年は怒りのデス・ロードだったと記憶される作品だと思います。新たなカルト映画の金字塔。ありがとうございました。