無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO感想(5)~太陽のブルース

■2017/8/12@石狩湾新港特設ステージ

 コーネリアスの後、そのままレッドスターに待機。suchmosを待っている間にレッドスターにどんどん人が集まってくる。最終的には通路側まであふれるくらいになっていたと思う。今年のsuchmosの勢いを考えれば当然だろう。「STAY TUNE」での盛り上がりは別格に近いものがあったにしても、全体としてはどこか淡々と演奏していたような印象だった。でもその姿が逆に圧倒的な自信と余裕を感じさせるものでもあった。流行り物、まがい物的な見方を真正面から覆した『THE KIDS』でsuchmosは確実に一段上のステージに上がったし、この日はもちろん、今年の彼らのステージはどのフェスでもツアーでも、勝利宣言に近い光を放っていたんじゃないかと思う。ラストに演奏した最新EPからの「OVERSTAND」は勝利の凱歌というにはややセンチメンタルな歌詞だが、自身のレーベルも設立して新たなスタートを切ったバンドの現状として、今までと同じではいられない事、あるいは人に対しての決別なのかもしれない。壮大な雰囲気でステージは終わった。かくいう僕もどっかチャラいバンドなんじゃないかと思っていたフシはあるのだけど、ライブを見ると思った以上に一本芯の通ったバンドで、自信と覚悟が見える堂々たるステージだったと思う。でも、サウンドのルーツとしてジャミロクワイだったりアシッドハウスが透けて見えたり、YONCEのステージ上での不遜な佇まいはリアム・ギャラガーそのままだったり、そういう影響を隠さないところはちょっと可愛げがあるところかもしれない。次来るときはもうサンステージなんだろうな。

suchmos
1.YMM
2.alright
3.BODY
4.FACE
5.TOBACCO
6.SNOOZE
7.STAY TUNE
8.GAGA
9.OVERSTAND

FIRST CHOICE LAST STANCE

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 このあたりが体力的にもきつくなってくる時間帯。一度テントに戻って休もうかどうしようか迷う。サンステージでのRIZEにはCharと金子マリがゲスト出演することが事前にアナウンスされていて、そっちの父兄参観ライブも興味あったのだけど移動がきついのであきらめてレインボーに移動。石野卓球オーガナイズのオールナイトパーティーもLOOPA NIGHTからTONE PARK、そして今年からSONIXTATIONとリニューアル。ただ、基本的なコンセプトは変わっていない。ちょうど時間的に大沢伸一のプレイを見ることができた。前半はアゲアゲの硬質なビート主体だったのが、後半でMONDO GROSSOの新作『何度でも新しく生まれる』からの曲もプレイしてくれた。「ラビリンス」はホントいい曲だよねえ。体を揺らしつつちょっと休んだので再びレッドスターに移動。銀杏BOYZをちょっとだけ見てテントで少し休もうかと考える。今NHK朝ドラの「ひよっこ」見てて峯田が宗男おじさんってすごいいい役やってるし、ちょっと応援しようと思って端っこの方で見る。最初峯田が一人で出てきて弾き語りで「光」を歌い始める。このまま弾き語りと打ち込みリズムだと辛いなと思っていたらバンドが登場。ギターは歪みまくって相当ガレージパンクっぽいドシャメシャな音なんだけど、その中で峯田の声とメロディーがくっきり浮かび上がってくる。名曲、代表曲、そして新曲とどれもいいのですよ。ちょっとうざくて熱いMCもこの言葉とメロディーがあればこそというか。峯田和伸という人の不器用さと真摯さが生で伝わるライブは音源の5000倍くらい心に刺さる。後半、「銀河鉄道」でちょっと泣いてしまいました。

銀杏BOYZ
1.光
2.若者たち
3.駆け抜けて性春
4.恋は永遠
5.骨
6.夢で逢えたら
7.エンジェルベイビー
8.新訳 銀河鉄道の夜
9.BABY BABY
10.ぽあだむ

恋は永遠(初回生産盤)

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 銀杏が良すぎて結局最後までガッツリ見てしまい予定変更。休憩なしで大トリのくるりへ移動することに。このあたりだともうほとんど雨は降っていなかった。長靴歩きによる負担もあって体力的には限界に近い。しかしあの雨の中ここまで乗り切ったという充足感ともうすぐ今年もライジングサンが終わってしまうという寂しさが相まって妙なテンションになっていた。それが眠気を遠ざけていたのだと思う。
 くるりもしばらくライブから遠ざかっていた気がする。たぶんここ数年はフェスでも見ていない。ゆるーい感じでメンバーが登場し、ゆるーく始まった。くるりがトリということでガンガンに盛り上がってフェスを打ち上げるようなライブにはならないことはわかっていたけれど、想像以上にまったりと音を味わうようなステージになった。それでも「虹」や「ワールズエンドスーパーノヴァ」のような代表曲のイントロが響くと大歓声が上がる。サポートメンバーも結構入れ替わるバンドだけれど、今回はドラムがクリフ・アーモンドだった。そのせいもあってか、中盤は『アンテナ』『Nikki』の曲が多かった。この辺はくるりのキャリアの中でも最も無邪気にUS、UKのロックを標榜していた時期だと思う。両方とも今でも結構好きなアルバムだ。しかし初っ端が「鹿児島おはら節」で始まったことを思うと幅の広いバンドである。それがくるりの面白さであり、わかりにくさでもあると思うのだけど。そろそろ空が明るくなってきた。しかし重い雲に阻まれていてとても朝日が顔をのぞかせる状況ではない。それでも岸田は「どうしてもこの曲やりたい」と言い、「太陽のブルース」を歌いだした。来し方を振り返ることをネガティブに感じるのではなく、それでも前を向くことに背を押し、優しく包み込むように歌われるこの曲は年を重ねるごとに味わいを増していく。そこにあるはずの太陽に向けて、というだけでこの曲が選ばれたのではないと思う。この日のくるりのステージには、フェスが終わりみんな日常に帰っていくためのレールを敷いていくような雰囲気があった。「太陽のブルース」はその一つの象徴だったと思う。完全に夜が明けた後半は比較的新しい曲を中心に演奏。最近のくるりの無国籍感、ごった煮感は嫌いではない。パンク感の薄いソウル・フラワー・ユニオンみたいな感じがする。
大トリということで、自然とアンコールが沸き起こる。本編には入っていなかったけれど、僕はどうしても聞きたい曲があった。中盤『アンテナ』の曲をやっていたあたりからずっとうずうずしていた。この曲を聴くことで、何も思い残すことなく日常へと帰って行ける気がした。「ロックンロール」のイントロで涙が出てきて、気がついたら大声で歌っていた。ありがとうございました。

くるり
1.鹿児島おはら節
2.虹
3.ワールズエンドスーパーノヴァ
4.ばらの花
5.モーニングペーパー
6.Hometown
7.黒い扉
8.Long Tall Sally
9.Superstar
10.太陽のブルース
11.琥珀色の街、上海蟹の朝
12.ロックンロール・ハネムー
13.everybody feels the same
14.Liberty & Gravity
(アンコール)
15.ロックンロール

https://www.instagram.com/p/BXtQtCNhvTK/
朝日は心の目で見る。 #rsr17

 夜が明けたとはいえ気温は低い。営業終了している店も多い中、まだやっている屋台でラーメンをすすり、テントに戻る。2時間ほど仮眠して、友人たちと感想を言い合ったりしつつ撤収作業。今年は雨と寒さで疲労もきつかったけど、充実感もあった。でもやっぱり、この荷物持っての帰り道は終わってしまった寂しさが一番強い。パーティーの後はいつも寂しい。祭りは終わってしまった。日常が始まる。もちろん日常にも楽しいことはいくらでもあるのだけれど、また来年この場所で楽しむためにいろいろなことを乗り越えて耐えていくのだ。
あと、今年はチケットが売り切れという事態になったわけだけど、会場内の人の行き来や屋台の行列、トイレの混雑などで人の多さを感じることはあまりなかった。悪天候のせいもあるのかもしれないけど、感覚的には特に昨年と大きな違いはなかったと思う。若干レイアウトの調整はあったかもしれないが、会場の広さやトイレの数などにそこまで違いがあったとも思わない。もしかしたら転売屋が捌き切れなくて残った分が相当数あったのかもしれない。だとすると、行きたくてもチケットが手に入らなかった人がいるのはやっぱり不健全だし、許せませんね。フェスに限らず転売厨対策は必要だし、我々参加する側もそういう輩にかかわらないよう留意すべきだと思います。それではまた来年。お疲れ様でした。
(了)
https://www.instagram.com/p/BXtOxuJhqC-/
さあ、皆さん今から来年の準備を。