無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO感想(3)~それは天気のせいさ

■2018/08/11@石狩湾新港特設野外ステージ

昨日の夜ほどではないにしろ、まだ断続的に雨は降り続いていました。車で石狩に向かう途中も止んだと思ったらまた降ってくるの繰り返し。天気の変わりやすい会場周辺ではもっと落ち着かない天気になるのだろうと覚悟して臨みました。この日は朝から長靴で完全武装です。

ひとつ苦言を呈したいのが、会場内駐車場のオペレーションについて。僕のように一度帰宅して休み、翌日戻ってくる人はそれなりにいたと思います。それ以外にも買い出しや何かで一度車で会場を離れる人はいるでしょう。そういう人が会場に戻ってくると、この日初めて会場に来る組も一緒くたで長蛇の列に並ばなければならなかったのです。少なくとも、すでに駐車券と通行証を引き換え終わっている人は別口で入場できるようにしてほしかったと思います。前日よりも長い列に並び、再入場できた時はすでに12時を回っていました。
https://www.instagram.com/p/BmU3pRKBqmg/
PROVOのフルーツコーン、安定の美味さ。甘さ。生がオススメ。ナマが一番いい。 #rsr18

ということでやや予定が狂い、この日の最初はボヘミアンサーカスで関取花ボヘミアンサーカスはボヘミアン側のゲート付近にある小さなステージです。弾き語りやアコースティックのライブ用という感じですね。関取花はテレビやラジオでは見ていてもライブは初めて。このRSRの後に札幌のワンマンも見ましたが、その前にこのアコースティックライブを見ました。まあ、とにかく小さくてかわいかったです。声はいいし、歌も上手いし、トークも上手い。男性女性関係なく、またあんまりいやらしい意味でもなく、人としていいなと思えるアーティストですね。いい飲み友達になれそうな。ワンマンでもやってましたが、ここでも昔北海道で流れていた融雪機のCM「モンスター」の歌で盛り上がってました。

関取花
1.私の葬式
2.あの子はいいな
3.親知らず
(雪溶かし機の歌)
4.黄金の海で逢えたなら
5.もしも僕に

ここからデフに移動。少し雨が落ちてきました。でもテントなので関係なし。フラカンはメンバー全員が48歳を迎えてまたインディーレーベルを立ち上げるなど、いまだ自分たちのやりたいことを素直に追及している印象があります。逆にそうせざるを得ない状況があるのかもしれませんが、居心地のいい場所に安寧せずにもがき続ける様はフラカンらしいと思うし、ほぼ同世代として胸を打たれます。いきなり「深夜高速」から始まるセットも彼らのキャリアと自信の表れ。先が見えない中でそれでも「最後にゃなんとかなるだろう」と歌う彼らは背伸びしない、等身大のバンドなのだと思います。無理せず、もがく。辛かったらちょっと逃げる。それでいいんじゃないかな、なんて見ていて思いました。

フラワーカンパニーズ
1.深夜高速
2.はぐれ者讃歌
3.ピースフル
4.吐きたくなるほど愛されたい
5.ハイエース
6.最後にゃなんとかなるだろう
7.真冬の盆踊り

https://www.instagram.com/p/BmU30qchcF9/
藤原さくら聞きながらのモヒート。ボヘミアン好き。 #rsr18

ボヘミアンに移動してサニーデイ・サービス。このライジングサンの1ヶ月前に、公式サイトにてドラマーの丸山晴茂の訃報が伝えられた。かねてから体調不良でライブやレコーディングには参加できていなかったものの、ファンにとっては衝撃だった。しかも実際に亡くなったのは5月で、2ヶ月間公表を控えていたという。純粋に追悼の気持ちで今のサニーデイを見たいと思いつつ、曽我部恵一がこの件について何を言うのだろう、と思う自分もいた。でも何も言わなくていいとも思っていた。

ステージ前には多くのファンが集まり、神妙な面持ちでバンドの登場を待っていた。みんな同じ気持ちだったと思う。1曲目は「bay blue」。静かな弾き語りから始まり、最初にドラムが鳴る時の音が非常に鮮烈に聞こえてくる曲。晴茂君のドラムはドタバタしていたけど、いい音だったなあと思いながら聞く。様々な想いを振り切るように、あるいは見ないようにしているかのように、淡々とライブは進む。今日の天気を見て「これはやろうと思って急遽セットリストに入れた」という「雨の土曜日」。そして「苺畑でつかまえて」に続いて、現在のサニーデイの中でも最も激しい曲の一つ、「セツナ」へと飛び込んでいく。崩壊しそうなほどのバンドアンサンブルの中、曽我部恵一は叫び続ける。そして後半のギターソロも曽我部は何かがとり憑いたかのように弾き狂っていた。このギターソロの時、空を見上げながら曽我部は何を思っていたのか。この時点で僕は泣いていた。雨で濡れていたし、それを拭うことはしなかった。「白い恋人」の後、曽我部は思い出したかのように晴茂君のことを話し始めた。

「晴茂君がいなくなって…、あ、休んでた時ね、一人で曲を作りながら「晴茂君だったらどう言うだろう」と思ってたのね。死んじゃってからはその声も聞こえないね…」周りからはすすり泣く声。当たり前だ。そんな様子を見て曽我部はこう言った。「みんな泣いちゃダメ。次にやる曲はそういう曲じゃないから。」始まったのは「愛と笑いの夜」。ずるいよ、曽我部。泣くに決まってるじゃないかこんなの。

ラストは夏フェスならこれを聞かなければ終われないと個人的には思う名曲「サマーソルジャー」。1999年、第1回目のライジングサンでサニーデイ・サービスがトリを務めた時にも当然演奏された曲。その時の印象は本当に強く残っていて、僕にとってあの最初のライジングサンの記憶はブランキーでもミッシェルでもなく、「サマーソルジャー」と共にあった。今回で20回目となるライジングサンでまたこの曲が聞けたのも偶然じゃないと思う。ありがとうサニーデイ・サービス。2018年のベストアクトでした。

サニーデイ・サービス
1.baby blue
2.スロウライダー
3.今日を生きよう
4.雨の土曜日
5.苺畑でつかまえて
6.セツナ
7.白い恋人
8.愛と笑いの夜
9.青春狂走曲
10.サマーソルジャー

そのままボヘミアンに残って待機。今年個人的に一番と言っていい目玉、JOY-POPS。かつてTHE STREET SLIDERS(以下スライダーズ)として日本のロックをけん引していたHARRY(村越弘明)と蘭丸(土屋公平)によるユニット名だ。スライダーズの4人のうち、JAMESとZUZUがHARRYのライブに客演で出たことはあったけど、この2人が同じステージでプレイするのはほとんど無かった(皆無?)と思う。リズムセクションはなく、ギター2本のみのステージ。それでもワクワクは止まらない。ソロになってからのHARRYのライブは何度か見たが、この2人が揃うステージを見るのは僕にとって1996年以来、実に22年ぶりのことだ。

HARRYは元気そうで、笑顔も見える。1曲目は「カメレオン」。HARRYのざっくりとしたストロークに、蘭丸のキレのあるカットが絡む。このギター2本の絡みだけでそこはスライダーズの世界になる。何かをかみしめるようにギターを弾き、歌うHARRY。堅実なプレイでHARRYを支える蘭丸。並んでプレイしている2人を見てるだけで泣きそうだった。「2人でまた何かやろうと思って、新しい曲も作った」というHARRY。そして各々がボーカルを取る新曲2曲を披露。HARRYらしいメロディーの、それでいて少しメッセージ性も入った曲と、蘭丸らしいブルースな曲。今後はツアーも行う予定があるらしい。スライダーズの名曲は否が応にも盛り上がる。集まっていたのは当時を知るオールドファンがほとんどだったと思うけど、全員とハイタッチしたいくらいだった。演奏が終わった後、2人で手を繋いで一礼。その姿を見てまた涙が。ありがたいものを見ました。長生きはするもんです。

■JOY-POPS
1.カメレオン
2.すれちがい
3.かえりみちのblue
4.新しい風(新曲)
5.デルタのスー(新曲)
6.風が強い日
7.Special Women
8.No more trouble
9.Back to Back

(続く)