2020年・私的ベスト10~音楽編(1)~
2020年にリリースされたアルバムから個人的な10枚をセレクトしました。単純によく聞いたものというだけでなく、時代的な背景も含めて選んだつもりです。順位はつけてなく、順不同です。まずは前半5枚を。
20200101/香取慎吾
本作については以前ブログに詳しく書いたのでそちらをご覧ください。
magro.hatenablog.com
所謂J-POPの枠をはみ出してグローバルな視点とセンスでコラボするアーティストを吟味しているのですが、2020年を振り返ってみるとこういうやり方がすでにJ-POPのスタンダードになりつつあるのかなという気がします。そういう意味でもエポックなアルバムだったという気がします。
ROMANCE/宮本浩次
最初はファーストソロアルバムである『宮本、独歩』にしようと思ってたのですがこのカバーアルバムが素晴らしすぎたのでこちらにしました。
宮本ソロは椎名林檎やスカパラとのコラボをはじめ、ボーカリストとしての宮本浩次の魅力を再認識させるものだったと思っています。その意味でこのカバーアルバムはドンピシャだったと思います。エレカシでカバーした荒井由実の「翳りゆく部屋」以来、この路線でのカバーを多く聞きたいと思っていたのですが、その期待に120%で応えてくれるものでした。ベストトラックは中島みゆきのカバー「化粧」。女性の情念をここまで色気のあるボーカルで表現できる男性ボーカルはそうはいないんじゃないかと思いますね。
Passport&Garcon/Moment Joon
韓国出身・大阪在住のラッパーMoment Joonのフルアルバム。
在日二世、三世などの出自のミュージシャンやラッパーはいても、彼のように大学から来日し日本語で曲を作っているラッパーは希少でしょう。留学生、そして移民という立場上、ビザ取得の面でも自由に日本に滞在することは容易ではなく、また直接的な差別被害も受けていると思われる。
オープニングナンバーの「KIX」は関西国際空港の空港ナンバーを意味していて、入国審査での生々しいやり取りがそのまま使われていたりする。BLMで人種差別への運動が激化した2020年、日本には差別がないなどという人はこのアルバムを聞いてもそんなことが言えるのだろうか。
対岸の火事などではない、今リアルに日本にある差別の一端が当事者の言葉で生々しく切り取られていると思います。必聴。
RTJ4/Run The Jewels
キラー・マイクとエルPからなるヒップホップユニット、ラン・ザ・ジュエルズの最新作。
ジョージ・フロイド事件を発端に過熱化したBLM運動の勢いを受け、本来の予定よりも前倒しで、しかも無料ダウンロードという形リリースされました。
作成時期からして当然今回のBLMに反応したものではないのだけど、ここに描かれているのは怒りであり問題提起であり、このままでいいわけはないというフラストレーションの爆発です。直接的にはトランプ政権に対するものでしょう。それが確実に2020年のBLMと連動しているのが今のアメリカの現実だったのだと思います。フィーチャリングとはいえザック・デ・ラ・ロッチャの久々の新曲音源が聞けたのも大きなポイントでした。
The Slow Rush/Tame Impala
ケヴィン・パーカーによるソロプロジェクトであるテーム・インパラ。クラブミュージック的側面もある彼の音楽は、本質的にはロックだと思ってます。
本作では父親との関係など、ケヴィン・パーカーの個人的な物語を基盤にした曲も多く、基本的にはシンガーソングライターの音楽なのだと思うのですね。
コーチェラでヘッドライナーを務めたことでもわかるように、個人の内省をダイナミックに増幅しアリーナクラスのライブを展開する彼らの音楽はまさに現代ロックの一つの雛型なのだと思います。
後半5枚に続きます。