無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

愛と笑いの夜

サニーデイサービス TOUR 2020
■2021/03/27@札幌cube garden

オンラインライブではなく、ライブハウスで生のライブを見るのは実に1年2か月ぶり。久々すぎて、会場に入る列に並ぶのが少し違和感というか、妙に緊張してしまった。

結論から言うと、久々のライブがサニーデイサービスでよかったな、と思った。

通常の約半分くらいの定員で、椅子に着席し、ライブ中もマスク着用・声は出さないというルール。

声は出せない変わりに拍手は大きく。そんな感じで、大きな拍手で迎えられた3人。

そして1曲目「baby blue」イントロのギターが鳴った瞬間、思わず泣きそうになってしまった。というか泣いた。

ギターってこんなにいい音で鳴る楽器だったっけ?というか、目の前で人がギターを弾き、目の前で人が歌うという、これまでなら当たり前の光景がこんなに愛しくありがたいものなのだ、と改めて感じた瞬間だった。

大工原幹雄が正式に加入してからは初めてのサニーデイサービス。前回見たのは丸山晴茂が亡くなった年のライジングサンだったけど、その時はサポートメンバーだったので。

彼らにとっても久しぶりのツアーということを差し引いても、3人だけで音を出すことを心から楽しんでいるように見えた。

3人だけで音を出しているので、曲によってはオリジナルに比べたら音が足りなくてスカスカになってしまうケースもある。「夜のメロディ」や「桜 super love」なんかは特にそう。しかし彼らには全く関係ないし、気にしていない。

「これが今のサニーデイサービスです。」と自信をもってスカスカの演奏を差し出しているし、曲に込められたエモーションがそれによって損なわれているとは全く思えなかった。むしろ、切実さや真摯さが増しているとすら思った。

2020年にリリースした新作『いいね!』がまさにそうで、勢いと熱量がそのまま真空パックされたようなアルバムだった。

それでも焦点がボケずにまとまっているのがさすがだし、今まで彼らが積み重ねた経験というものなんだろうと思う。

曾我部恵一は僕と同い年なのだけど、49歳にしてここまで純粋に音楽を楽しんで演奏していることにうらやましいと感じるし、本当にリスペクトする。

それと同時に、「セツナ」や「桜 super love」ではやはり丸山君のことも思い出したりして、また涙が出てきた。

ただただ演奏を見ている・聞いているだけではなくていろいろなことを考えた。以前ライブを見ていた時はどうだったろう。もっと素直に音楽だけを浴びていたような気もする。

様々な感情や考えが頭の中をめぐってくるのだけど、それらは全て素晴らしいメロディーと穴だらけの演奏の中に溶け込んでいくのだった。

改めて、久しぶりに見るライブがサニーデイサービスでよかった。

自分の中で大事なものがギリギリで繋ぎとめられた、そんな気がする夜だった。

■SET LIST
1.baby blue
2.恋におちたら
3.スロウライダー
4.心に雲を持つ少年
5.OH!ブルーベリー
6.ぼくらが光っていられない夜に
7.エントロピー・ラブ
8.夜のメロディ
9.苺畑でつかまえて
10.春の風
11.コンビニのコーヒー
12.セツナ
13.日傘をさして
14.桜 super love
15.NOW
16.白い恋人
17.時間が止まって音楽が始まる
18.若者たち
<アンコール>
19.旅の手帖
20.青春狂走曲
21.シルバー・スター
22.センチメンタル