無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

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 自由なアルバム。とっ散らかったアルバム。カッコいいアルバム。いろいろ考えても、このくらいしか言葉が出てこない。かなり聞きこんだけど、今までのイエモンのアルバムの中で一番飽きの来ないアルバムだ。
 言うまでもなくイエモンはロック・バンドなわけなんだけど、彼らのロックってのはどことなく息苦しさをともなうものだった、ような気がする。このアルバムを聞いてしまうとそう思う。このアルバムはこういうコンセプトなんだ。主人公がいるんだ。とにかくゴリゴリにロックなんだ。ポップじゃなきゃだめなんだ。なにか、作品ごとに無意識のうちに枷というか、枠のようなものをはめ込んでしまっていたのかもしれないとすら思う。バラバラな曲調。バラバラなアレンジ。乱暴ともいえるこのアルバムは結果、イエモン史上最もポップで聞きやすいものになったと思う。なんでもアリなのだ。カッコよけりゃそれでいいんだ。いや、悪くたっていいんだ。そんな開き直りともいえる覚醒がこの猥雑で美しいアルバムを産んだのじゃないだろうか。「ジュディ」「GIRLIE」「メロメ」…シングル以外の、純粋な新曲群の目を見張るような美しさはどうだ。くらくらする。吉井和哉がこんなにバラエティ豊かなソングライターだったとは、とまさにメカラウロコだ。
 ロックってのは自由なものだ。少なくとも、自由を追い求める強い意思がそこにあるものだ。と思う。イエモンはこのアルバムで名実共にロック・バンドになったんだな、と思う。茨城で、初対面を。