無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

不安がよぎるほどの名作。

深緑

深緑

 参った。素晴らしいクォリティを誇る名作だと思う。名作すぎる。いや、名作で何が悪いわけではないのだけど、どうしても比較してしまうのだ。シャーベッツと。AJICOでは主にUAが詞を書いているからというのもあるのだけど、抽象的な言葉が少ない。すごくカラフルというか、頭の中にイメージが湧きやすい。そして、やはり「あなた」と「私」という対象がしっかり見えるので、ストレートに通じる。コミュニケーションミュージックという意味で、AJICOの方がシャーベッツに比べてしなやかだし、すごく伝わりやすいと思う。それに、メジャーで出てるのだからどうしたってAJICOのほうが多くの人の耳に触れる。で、それが悪いわけじゃ全然なくて、最初に言ったように素晴らしいアルバムなのだけど、ベンジーはじゃあ、シャーベッツをどうしようとしているのだろうかと思ってしまうのだ。正直言って僕はこのアルバムの中でベンジーリードボーカルを取る曲はいらなかったんじゃないかとまで思う。もっと言えば、 AJICOになくてシャーベッツにあるものって…何?と思ってしまうのだ。彼の中でこの2つのユニットがどういう位置付けで、どう切り分けられているのかがよく分からない。もちろん、バックで演奏しているミュージシャンは違うけれども、好き嫌いでいっても僕はAJICOリズムセクションの方がいい。大きな才能が2つ合わされば単純に2倍素晴らしいものができるわけではないのは当たり前なのだけど、そういう意味でもこのアルバムはかなり奇跡的に素晴らしいと思う。だからこそ、ちょっと複雑なのだ。このアルバムは、かなり素晴らしすぎる。不安になってしまうほどに。