無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

最強のポップス。

ディスカバリー

ディスカバリー

 「ワン・モア・タイム」がひどく凡庸なナンバーに思えてしまうほどに、凄まじいアルバム。テクノ、ダンス、あるいはロック。そんなものはどうでもいい。このアルバムに収められているのは誰にでも受け入れられるべき開かれた音楽という意味での「ポップス」に他ならない。単純に、そういうもんじゃないかと思う。このアルバムの時代性がどうとか理屈こねる以前に、ここにあるメロディは歌えるだろ?ここにあるビートは気持ちいいだろ?この音楽はひどく美しくて、切なくて、ポケットに入れていつもいっしょに歩きたくなるし、夜寝る時にそばにおいて置きたくなるものだろ?ってことだ。で、いつの時代もでも世の中をひっくり返すべく投下される爆弾、毒物てのは甘く切ないポップスの形をして現れてたんじゃないか、という気がするのだ。
 サウンドの雰囲気がモロ80年代なもので、僕なんか聞いていて思わず頬が緩んでしまう。この、あまりにもモロだろ、と言いたくなる無邪気な引用が彼らの武器だとも言えるが、全くあざとさとか計算のようなものが感じられないので、聞いていてそのまんま盛り上がってしまう。松本零士をフィーチャーしたビジュアル戦略も含めて、どこまで確信的にやってるのかわからないけれども、この世界、先にやってしまったのもんの勝ちなんだからしょうがない。
 この先生まれるポップスは全てこのアルバムが一つの基準になってしまうだろう。勝負する前からもう決定盤が目の前に出てきてしまったのだ。後から来る人間に対して容赦ない破壊力を見せつけている。この爆弾は。聞いている僕たちはそんなこと関係ない。ここにある甘美な調べにまかせて体を動かしていればいい。そうしているうちにきっと2001年は終わってしまうだろう。