無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

赤と白のブルース。

Elephant

Elephant

 ギターとドラムのみという変則な編成でありながら、というかであるからこそと言うべきか、とにかくやっぱりこの人たちは反則なまでにカッコいい。僕は特にロックンロール・ルネッサンスだのガレージ・リバイバルとかいう言葉には何も感じない。カッコいいロックはカッコいいだろうという当たり前な感覚で聞いているだけだ。ストロークスも、リバティーンズも、ホワイト・ストライプスもカッコいいから好きなのだ。
 僕はブルースという音楽をきちんと聞いたことはない。つまり、ロバート・ジョンソンとかのことだけれども、そういうオリジナルなものではなく、あくまでそれをその時代時代の感覚で解釈し、取り入れたロックンロールを聞いてきたに過ぎない。しかし、そんな僕の耳でも「ボール・アンド・ビスケット」や「ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン」は震えるほど沁みる。カッコいい。ジャック・ホワイトという人は形式的にブルースを選んでいるのではなく、スピリチュアルな共感を伴った必然としてブルースを鳴らすしかできない人なのだろう。現代的な解釈でブルースを解体し、再構築するということにも興味はないのだろう。その辺がベックやジョン・スペンサーと違うところだ。しかし、ブルース、引いてはロックンロールはそうした別のベクトルを持つアプローチを何の問題もなく許容する音楽だ。ホワイト・ストライプスはその自由の中、自分たちの作ったルールを守るという制限を設けることで逆にブルースの自由さを際立たせて見せる。すごく知的なやり方だと思う。肉体性と知性、両方を持っているあたりがなんとなくNYのバンドかなあ、なんて思うのだけど、的外れですかね。