無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ピーズを聞いてギアつなげ。

アンチグライダー

アンチグライダー

 ピーズ約1年ぶりの新作。アビさんが職を持っているがためにライブもなかなかコンスタントにできない状況の中、よくぞ短いスパンで新作を出してくれたものだと思う。素晴らしい。というわけで、もうこの新作には「奇跡の」とか「復活」という文字は必要ない。そしてこれがどれだけ嬉しいことか。
 前作のラストナンバー、感動的に復活を祝福するかのような「グライダー」に対して、今作は「アンチグライダー」である。「風まかせじゃなくて、今度はエンジンをつけるんだ」とインタビューではるは言っていた。なんと力強い言葉だろう。そのはるの言葉を裏付けるように、このアルバムには不恰好に転がっていく、まさにどでかいエンジンのようなロックンロールが詰まっている。油なんか差してないからギシギシと軋みながら、それでもガンガン動いていく。ぱっと見ポジティブに進んでいくような言葉も、もう後ろ見たって何にもねーだろというやけっぱちの覚悟と決意に満ち満ちている。ザマアミロ。なんて爽快なアルバムなんだ。
 30過ぎるとなかなか転職とか考えても実行に移せなかったり、結婚を焦ったり、どうしても安定を求めてしまう。けれども、ピーズの曲を聴いていると関係なく道を踏み外してもいいやという気になってしまう。危ない。スマートじゃない。演奏だって相変わらずドカドカのガキガキのヨレヨレだ。でもやっぱりこんなバンド他にはいねえよ。もう一体何年ぶりなんだ、という札幌ライヴはもうすぐそこだ。