無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

まだ成長の途上。

TRUNK

TRUNK

 沖縄発のミクスチャーなどという枠を飛び越えて至極真っ当なポップスとして100万枚のセールスを記録してしまった前作『Street Story』に続く新作。相変わらずインディーのままだし、自分たちは自分たちであると言う認識のもと、素直に成長を反映させたようなアルバムになっている。ラップをフィーチャーしたイケイケ系の曲は減り、全体として更にメロディアスになった印象。やっぱりこの人たちはイヤなことも汚いものもきちんと目をそらさずに向かい合った上で光と希望を結論として出す(出せる)ところがいいと思う。「ささくれ」なんかは実は非常にヘヴィーな内容だし、「そこにあるべきではないもの」も、汚れていく故郷に対する思いが書かせた曲だ。
 前作がメガセールスを記録した影響かどうかは分からないが、誤解されることを拒否するかのように歌詞がよりストレートに、分かりやすくなっている。個人的にはちょっと説明的過ぎるのではないかと思うくらいだ(彼らが自分たちの音楽と聞き手のことを真摯に考えている証拠とも言えるのだが)。前述のように全体にメロディアスではあるのだけど、歌詞を優先し言葉数が多くなることでそのメロディーが時に窮屈になっている印象も受ける。これは単にソングライティングの技術的な問題だとも思うのだけど、ポップスと言うのはそもそも誤解を受けることを前提としているものでもある。彼らがそこを受け入れ、乗り越えた時に本当の黄金律と言える有機的に結びついた言葉とメロディーが生まれるのじゃないかと思う。そしてそれはどれだけ言葉を尽くすよりももっと分かりやすく、ストレートになっているはずだと思うのだ。
 このアルバムはファンには受け入れられるだろうし、彼らと同世代の共感を呼び、彼らより下の世代の目印にもなるだろう。でも、そこまでだ。彼らが目指すべき場所はもっと先だと思うんだな。