スガシカオ、充実の残り香。
- アーティスト: スガシカオ
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2004/11/17
- メディア: CD
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しかし、同じことを繰り返すというのはポップの世界では自殺行為である。リスナーは常に前よりも強い刺激を求めるものなので同じ位置にとどまるということは停滞どころか後退とみなされてもおかしくはない。じゃあ、このアルバムがそうかというとそんなことはない。楽曲の完成度が高い。前作も素晴らしいと思ったけど、このアルバムを繰り返し聞いていくうちにここに納められた10曲の飽きなさ加減はなかなかすごいと思うようになった。既視感を伴うフレーズもあるが、微妙にメロディーの広がりやコード進行がそこからズレて新鮮な感覚とともに伝わってくる。本能的なものか意図的なものかはわからないが、このアルバムを単なる続編から逸脱させているのはスガシカオのソングライターとしての進化だと思う。アッパーとダウナー、メジャーとマイナーといったバランスもよい。シングルが3曲納められているが、特にそれが突出しているということもなく、トータルで味わうべきアルバムだと思う(スガシカオは全部そうだといえばそうなのだが)。
失恋がテーマの歌で相手を家畜に例えてしまうなど、イキきっている歌詞もすごい。かつてエレファントカシマシの宮本は女性のことを「ペットのようなら飼ってもいい」と歌ったことがあったがそれに匹敵するものだろう。ただ、当時世捨て人のようであった宮本に対してスガシカオはライブでは黄色い声援を受けるようなポジションの人である。そういう人がポップスの王道とも言えるラブソングの中で恋愛に対する究極のニヒリズムを具現化してしまうのは、本当に気持ちいい。